4,5 ゲームについて
あの後、ゲオグラムに追い出された私は、女子寮へとやって来た。貴族院では寮生活が義務付けられているのだ。
私の部屋は一階の角部屋だった。ちょっと嬉しい。部屋も思っていたより広いし、綺麗に片付いている。私はベットに座り、だらしなくベットに身を預けた。
「はぁー、かわいかったなぁ…」
私は先程会ったシュヴァルツとゲオグラムのことを思い出す。二人ともイケメンだったけど、まだ子どもらしいあどけなさがあった。ゲームで見た時よりも幼い印象だ。
「ベグウィグも居たわね」
シュヴァルツの傍らに居たフクロウみたいな鳥、ベグウィグはゲームの通りにヒロインである私の帽子を奪って行った。ベグウィグを追いかけたらシュヴァルツ達も居たし、今のところゲームで見た通りに世界が進んでいると言ってよさそうだ。だとすると、私の持ってるゲームの情報はかなり重要になる。このままシュヴァルツルートを攻略して、二人の王子の和解イベントまで進めないと。
私はゲーム『闇夜に輝く兄弟月』の情報を思い出そうと努力する。もう14年も前の事なので、記憶もおぼろげだけどね。
『闇夜に輝く兄弟月』は身分差のある恋愛を描いた乙女ゲームだ。攻略対象はいずれも王族や高位貴族で、ヒロインちゃんは吹けば飛ぶような木っ端貴族の娘である。中世ヨーロッパ風の世界観で、貴族院と言う貴族の子弟が通う学園を舞台に恋愛模様が繰り広げられる。
ストーリーは主に身分の差に引き裂かれ、苦しみ、それでも諦めない二人の純愛が描かれていた。また裏のストーリーとして、分断の進む王国と二人の王子の和解が描かれている。
たしかエンディングは8つあったはずだ。四人の攻略キャラそれぞれのヒロインちゃんと攻略対象の二人が結ばれるハッピーエンドが1ずつ。その中の第一王子と第二王子であるシュヴァルツには、恋愛までは発展するけど、途中でヒロインちゃんが挫けてしまって二人が結ばれることがないノーマルエンドがあるのでそれが2つ。逆ハーレムルートが1つ、攻略キャラの誰とも関わりを持たない一般貴族エンドが1つの全部で8つだ。
この中で私が目指すのは、シュヴァルツのノーマルエンドである。このルートなら二人の王子の和解イベントまで物語が進むし、私も無理にシュヴァルツと恋愛する必要もない。シュヴァルツって俺様キャラだし、見てる分には良いだろうけど、実際付き合うのは大変そうなのよね。
問題はシュヴァルツ達に近づくと、シュヴァルツルートにおける悪役令嬢であるシュヴァルツの婚約者が私への“いじめ”を開始することだ。このいじめに心を折られてシュヴァルツ達に会いに行くのを止めると、シュヴァルツノーマルエンドにいけるんだけど……。私はシュヴァルツを狙って近づいているわけじゃないし、見逃してくれないかな?無理かな?
「はぁ……」
いじめられると分かっていても、家族の命が懸かっているかもしれないのだ。行くしかないよねー…。どうして男の子に近づいたというだけでいじめられないといけないのか。私は別にシュヴァルツの事好きなわけじゃないのに…。理不尽だと思うけど、シュヴァルツの婚約者さんからすれば、婚約者がいる異性にコソコソ会いに来ているとか非常識なのは私の方なのよね…。
「ままならないわねー…」
でも、国の為にも家族の為にも私の為にも二人の王子には和解してもらわないと困る。現状では、二人を和解させられるのは私しかいないのだ。
「うだうだ言ってても仕方ないわね。がんばれ!私!」
私の声が虚しく新居に響いた。
投稿はお休みすると言っていたのに、次の日も投稿するという…(´・ω・`)すまぜん
今後もこういった補足回を割り込み投稿するかもしれません。
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