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シゴト

スラム街で生きるには汚れる事を受け入れなくてはいけなかった。


一度そこに住み着いてしまえば普通の人と同じ生活は二度と出来ない。


リオウもまた、一生そこで生きていくのだと、それを受け入れていた。



しかしあの少女と出会ったとき、何かが変わってしまった気がした。


明るい、輝かく、温かいものに触れてしまった。


それは麻薬の様にリオウの体を蝕んでいた。



もう一度あの光に触れたい。



それは消しても消しても消えないシミの様に、心の奥を侵食していた。



夜、、、、



「はあっはあっはあっ」



ふと気がつくと汗びっしょりで、どうやらうなされていたようだ。


ベッドから起き上がり、息を整える。


テーブルの上には石ころが一つ転がっていた。



それを手に取り、手の平に転がす。



、、、、それに触れていると心が落ち着いた。


コンコン


ドアが静かにノックされる


コンコン


、、、仕事だ。



「分かった、今行く」


俺は素早く着替えを済ませ外に出る。


右手には、あの小石が握られていた、、、、


-------------------------------------------------------


スラム街での仕事は大きく分けて二つの仕事があった。


一つは単純に他者から奪う犯罪行為。


もう一つは国から請ける汚れ仕事。


それも厳密に言えばまた犯罪なのだが、法を司る組織からの必要悪と認められた依頼という事で犯罪行為とは少し意味合いが違った。


リオウは後者、国からの汚れ仕事を請けて金を稼いでいた。


汚れ仕事の内容は他国へのスパイだったり、国に都合の悪い要人の暗殺だったり、国に都合の良い情報の流布など様々であったが、リオウは基本的に「要人の暗殺」を専門にしていた。



今回の依頼はいつも通りだった。


ターゲットの名前を聞き、


その日時を聞いて


事故に見せかけて殺害する。




リオウは写真を受け取り


「了解した」


と、短く返答する。


黒服の男はそれを確認したあと、闇の中へ消えていった。



リオウは写真のをじっと見る。


ただ、いつもと違うのは


そのターゲットが知った顔だった、という事だ。


--------------------------------------------------------


ロベルト家は国家において農業、林業、漁業、果ては建設、製造、運輸と様々な産業を取り仕切る一大派閥の一つであった。

ロベルト家は真面目な商売をしていて、その結果業績も伸び続けていた。


しかしながらそれを面白く思わない者もいる。


ロベルト家には脅迫状が届けられる事がしばしばあった。


"この業界から撤退しろ、さもなくば、悪い事故が起きるぞ"


と。


そのほとんどはイタズラだったり、本気では無く、只の脅しに終始するものだったが、中には、本物の脅迫状もあった。



ロベルトは脅迫には屈しない。脅迫状が来るたびに警備を厳重に強化してその行いを阻止していた。


×××「お父様、何事ですの?」


ロベルト「×××、今週は外へは出てはいけないよ。家の中にいなさい。」


ロベルト「家の中なら安全だからね」


--------------------------------------------------------


リオウは少し考えていた。


仕事の依頼の時に渡された写真を見て。


じっと、何かを考えていた。


そして、何かを決心したように外へ出る。


その姿からは「迷い」というもの微塵も感じられなかった



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月明かりの夜。



少女は退屈していた。


部屋にいなさい、そう父親から言われていたからだ。


館のいたる所には兵士がうろついていた。


何か物々しい雰囲気。


確かに部屋の中にいれば安全なのかもしれない。


しかし、それは退屈の極みであった。


少女「あーあ、つまんない。」


何から何まで家の都合で振り回される。

勿論、良い生活が出来ているのは家のおかげだが、外の生活に憧れる夢はというのは日に日に膨らんでいた。


少女「お兄ちゃんがいたら、なんて言うかな」


カタッ


ふと、窓の方で音がした気がした。


少女「?」


なんだろう?と思い窓の方を見ると


バタバタバタ


カーテンが風で部屋の中に広がる


少女「風、、、か。」


鍵かけて無かったかな?と疑問に思いながらも窓を閉めようと立ち上がった瞬間


そこに誰かが立っているのが分かった


少女「お兄、ちゃん?」


そこに立っているのはリオウだった、、、、


--------------------------------------------------------


少女(もーーーー、びっくりさせないでよーーー)


外の兵士に気がつかれぬ様極めて小声でリオウに文句を言う。


リオウ(ご、ごめん)



少女(もーーー、でも、良く入って来れたね、ここ)

リオウ(まあ、、、これくらいなら大した事じゃない)

少女(ふーん、お兄ちゃんって凄いんだ)



この少女の中ではリオウは完全に自分の兄としてインプットされているようだ。


不思議と、リオウもそれに対して言及せず、受け入れているようなフシもあった。


少女(、、、で、何しに来たの?私に会いに来たの?)


目を輝かせて聞く少女


リオウ(ん、仕事で、来た)


と、簡潔に述べる。


少女(へー、仕事って?)


少女はリオウの仕事が何なのか、もう薄々気付いているだろうに、知らないフリをしていた


リオウは少し間を置いて、


少女の目を見ながら


リオウ(君を、殺しに)


と、今回の仕事の内容を伝えた



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