少女の探し人
「はあ、はあ、はあ」
夕暮れの中、通りを走る。
すると
朝の再現か、通りに男が集まって何か騒いでいる。
、、、やはり、少女はゴロツキに囲まれていた。
それは当然だ。あの無防備で、かつ、あの姿、顔。襲って下さいと言っているようなものだ。
俺はその駆け足のまま男の集団の中に割り込んでいった。
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少女「、、、あの、何故助けてくれるのですか?」
リオウ「、、、さてね。」
これまた朝の同じく六人目の男を動けなくして少女の問いかけにぶっきらぼうに答える。
リオウ「分かったか?女一人でこの街を歩けばどうなるか」
道端には六人の大の男が寝そべっている。俺が来なかったら少女はどうなっていたのか、流石に本人にも分かった事だろう。
泣いてもわめいても、誰も助けてくれずに、男達の慰み者になっていたことだろう。
ふと少女を見やると
じわ、、、、
少女が今にも泣きそうな顔をしていた。
流石に現実が分かったのだろう。自分の浅はかさを自分で責めているようだった。
、、、現実を見て欲しいとは思った。だが、俺はそんな顔を見たいわけではなかった。
リオウ「、、、少しの間なら手伝ってやる。どんな奴を探すんだ?」
俺の言葉に
えっ、という顔をする少女。
きっとその言葉は少女にとって予想外だったのだろう。
少し驚き、、、でも直ぐに、パッと
「手伝ってくれるんですか!?」
と、先程の泣きそうな顔が嘘のように晴れ晴れとした笑顔になった。
笑顔。
、、、その顔が嬉しかった。
、、、でも、何故だか俺は気恥ずかしくなってそっぽを向いてしまった。
リオウ「あ、ああ。2度も言わせるな。少しだけ、な。」
少女「ふふ、ありがとうございます。優しいんですね。」
その時ふと、互いに互いの名前を知らない事に気がついた。
だけれど、気が付かない振りをしようと思った。
だって、用事が済んだらすぐにさよならなんだから。
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リオウ「はああああああああああ?!どんな奴か分からない!!?」
少女の言に思わず叫んでしまった。
少女「耳、、、痛いです、、、、」
大声に対して非難の声を上げる少女。
ちなみに俺が思わず叫んでしまった理由は、先程の質問、どんな奴を探すのか、に対する答えが、え、知らないっす、のような軽い答えだったためだ。
勿論、知らないっす、とは答えていないが、俺にはそう聞こえた。
リオウ「じゃ、じゃあどうやってその探し人を探すつもりだったんだよ?」
少女「え、えと、、あの、隈なく探せば見つかるんじゃないかと、、、」
、、、この子は努力と根性があれば何でも出来ると思っている夢見る少女なのだろうか、、、
突っ込みにも力が入ってしまう。
リオウ「あのなあ、狭い街とはいえ、何人の人間がここに住んでると思ってるんだよ」
思わず「バカ」という単語が出そうだったがそこは何とかギリギリ抑える事ができた。、、、ギリギリ。
じわ、、、、、
、、、しかしながら悪口無くとも正論というものは時として鋭い刃となる。
俺はセーフだと思って紡いだ言葉も、少女を傷つけてしまう言葉になっていたのだろうか?
、、、少女がまた今にも泣きそうな顔になってしまう。
リオウ「あーー、泣くな泣くな。分かったから。」
慌てて取り繕う。
それは話を先に進めるため、、、、ではあるのだが、単純に泣き顔を見たく無かった。
リオウ「、、、で、何かしらのヒントはあるんだろうな?」
とにかく話を進めなくては。
俺の慌て具合が面白かったのか、少女の泣きそうな顔は消えて、ふふっ、と、少し微笑んでくれた。
そして
少女「私の、兄なんです。」
と、探し人の事を語り出してくれた。
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少女「私には仲の良かった兄がいたんです。
でも幼い頃に死に別れてしまった。
、、いえ、そう、聞かされていたんです。
けど、最近、この街で生きているという話をきいて、、、」
リオウ「それで、この街に来たってか。」
少女「はい。」
リオウ「じゃあ、分かるのは名前と年齢くらいか?」
少女「はい。名前はフィリップ。今年で15歳になっているはずです。」
リオウ「15歳、、、この街で15歳というと、あいつと、あいつと、、、、」
頭をフル回転させる
少女「あの、、。」
リオウ「ん?」
少女「失礼ですが、貴方の年齢をお聞きしてもよろしいですか?」
リオウ「ん、俺?俺は今年で18になる」
少女「そう、ですか、、、、」
、、、正直、探し人の年齢を聞くときはドキドキしていた。
もし、その探し人の年齢が18才だったら、どうしよう、と。
しかしながら、違った。
その探し人と、俺の年齢は違う。
俺は、少女の探し人では無い、、、、
リオウ「それに残念ながら俺はフィリップなんて名前じゃない。リオウって言うんだ。」
少女「、、、そうですか、、、。もしかしたら、って思ったのですが、、、そんなに直ぐに見つかるわけ無いですよね、、、」
少女がまた沈んだ顔をしてしまう。
、、、だから、その顔は、見たく無いんだ。
リオウ「とりあえず俺の知り合いで15歳のやつに会ってみるか?」
とにかく前向きに、前向きに。
少女「はい!」
少女はまたカラッとした笑顔を見せてくれる。
良く、表情の変わる子だな、と思った。
、、、そして
自分が少女の探し人で無かった事で、ホッとしたような、残念な様な、複雑な気持ちになっていた、、、、
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2時間後、、、
リオウ「全員違うか、、、」
少女「すいません、、、。」
あの後、俺と少女でいく人かの人を訪ねた。この街で15歳、と年齢を限定するとそう多い人数では無い。
とは言え、ここまで早く15歳の男、全員を回れたのは、彼女が、その人を一目見て"違う"と判断したからだ。
その判断の速さには助かったが、疑問も残った。
リオウ「なあ、顔も何にも分からないのにどうして一目見て違うって分かるんだ?」
、、、そりゃ、一目見て"違う"という人もいるだろう。
だけれど、全員が全員、一瞥しただけで判断を下すなんて、流石に早すぎるのでは無いか?と思った。
もう少し、話をしてみるとか、、、
、、、という、俺の疑問に
少女「それは、なんとなくです。」
彼女は臆すことなく凛として答えた。
リオウ「、、はあ?なんとなくー?」
思わず、すっとんきょうな声を上げてしまう。
リオウ「そ、それじゃ、本当に違うのかそうで無いのか分からないだろ。」
今年一番の戸惑いだった。
少女「、、、、、、、、、」
黙る少女。
、、、当然だ。
なんとなくで判断をしていたのでは探せるものも探せなくなってしまう。
少女「、、、でも」
少女は言いづらい事を打ち明けるように
少女「でも、一人だけ」
恐る恐る
少女「この人かもしれない、、、という人が居ました。」
と、ポツリと呟いた。
、、、、、、、
え?
リオウ「、、、あ、あのなあ。そーゆーのはその時に言ってくれよ。」
ため息と共に、しっかりしてくれよと目で訴える
少女「はい。すいません。、、なかなか言い出せなくて、、、」
リオウ「ん、、、言いづらかったか?それはすまなかったな。、、で、その第一候補は誰なんだい?」
俺の鬼気迫る雰囲気で言い出せなかったのかもしれない。
でも、まあ、時間はかかったがその第一候補の所に今から戻れば良いだけだ。
これで俺の手助けは終わりだ。
そう、終わりだ。
終わり、、、
少女「それは、」
少女は、何か、言いづらい事のように間を開ける
リオウ「それは?」
少女「それは」
少女「、、、、、、、」
少女「、、、、、、、それは、」
少女「貴方、です。リオウさん。」