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少女

ジョウイ「何してんだ?お前」


ジョウイが呆れたように声をかける。


リオウ「さあ、、、分からない。」


六人目のガタイの良い男を動けなくしたところでやっと、リオウは自分の行動に疑問を持った。


リオウ(、、何してるんだ?俺は)


それはジョウイに指摘されるまでも無く、自分でも不可解な行動。

この街では不道徳とされる行い。


この街において、何の利益も関係ない人間がトラブルに介入するなど、あってはならない事だし、そんな事してもデメリットにしかならない。


ジョウイ「まあ、大した問題にはならんだろうが」


言葉とは裏腹にジョウイのリオウを見る目はまるで奇妙なモノを見るかの様。


しかしリオウはその視線を受け流す。


少女に目を移す


、、、少女は、気を失って倒れている


リオウは黙ってその少女を抱きかかえる。


ジョウイ「え?は?何?連れて帰るのか?」


お前正気か?というニュアンスを込めてリオウに問いかける


リオウ「、、、ああ。」


ジョウイ「、、、お前ってそういうのが好みだったのか?」


リオウ「、、、、そう、らしいな。」


否定するのも面倒だったので適当に相槌を打つ。

少女は整った顔立ちをしていたが、それが理由で助けた訳ではないのは確かだった。

だがしかし、何故助けたのか?と問いかけられても答えられない。


(何をしているんだ、、、本当に俺は、、、)


酒の約束はまた今度、と、ジョウイに陳謝して、リオウは自宅へ連れて行くことにした。


ジョウイ「世の中珍しい事があるものだな、、、」


一人残されたジョウイは少女を大切そうに抱えるリオウを見て、1人呟く。


ジョウイ「あの残忍な男が、、、ね。」


ジョウイ「ま、いいか。さて、代わりに誰を誘うかなあ。あー、急な誘いは嫌がられるんだよなあ」


ぶつぶつ独り言を言いながらジョウイは酒場へ歩いて行った。



--------------------------------------------------------


コポコポコポ


コーヒーをカップに注いで右手で持つ。


左手でテーブルのそばにある椅子をベッドの脇に置き、そこに座る。


「、、、、、、、、、、、」


ベッドで少女が眠っている、、、、。


コーヒーを一口、口に含む。



「、、、、、、、、、、、」


少女から目が離せない。

彼女を見ているとどうにも落ち着かなくなる。


(何故なんだ、、、、)


女を自室へ連れてくるなど、、、


俺は何をしているんだ、、、、


と、一人考え事をしていると、


少女「ん、、、、、」


、、、少女が、目を覚ました。



--------------------------------------------------------


リオウ「お前、この街がどういう所か知らず入ってきたのか?」


少女が目を覚ますと同時に叱りつける。


リオウ「お前みたいな女、五分で目を付けられて当然なんだぞ」


少女は俺の話を聞いているのかいないのか、とにかくボーーーーっとしている。


、、、寝起きだから頭が回っていなくて当然と言えば当然なのだが。


、、、何故か、感情が抑えられなかった。


リオウ「おいっ、聞いてるのか?!」


声が荒げる。


その荒々しい声に対して


少女「、、、あ、貴方が助けてくれたんですか?」


なんて、気の抜けた事を聞いてきた。


リオウ(、、、自分の身に何が起ころうとしていたのか分かっているのか?俺が通り掛からなかったらお前はあの男達に、、、)


何故か少女の危機感の無さにイライラしてくる。


自分でも何故だか分からないが、、、くそ。、、、大人の対応をしなくて。


リオウ「ああ、そうだ。つい助けちまったが次は無いぜ。分かったらさっさとこの街から出て行きな。」


少女「それはそれはご親切にありがとうございます〜」


思わずズッコケそうになった。


礼などはいらないんだ、このバカ女。


大切なのは"早くこの街からでてゆけ"なんだ。この女頭が腐ってるんじゃないのか?


イライライライラ


何故かイライラが止まらない。


イライライライラ


何故、自分は助けてしまったのだろう、こんな無駄な、意味のない、バカな、、、、、繰り返し自分の中で押し問答をする。


でも、


しかし。


、、、正直に、自分の心に耳を傾ければ、、、、、、


ただ、何となく、助けるのが、、、いや、彼女を守るのが自分の役目なのだと、何故か、そう思ってしまった。


、、守らなくては。


そう、思ってしまったんだ、、、、。


だから


リオウ「、、、飯、食うか?」


なんて、すっとんきょうな事を少女に尋ねていた。


きっと、俺の恥ずかしさの余り、顔が真っ赤になっていた事だろう。


少女「はい〜」


リオウ「、、、、、、」


少女の笑顔。


、、、、、その笑顔を見ただけでイライラが消し飛んでしまった。


嬉しかった、、、。


、、何故?


分からない事だらけだった。


自分の行動も、感情も。


ただ、少女が笑顔だと自分も嬉しい。


そんな風に思っている自分が確かにいた。

-------------------------------------------------------


かちゃっ、かちゃっ、かちゃっ、


食器が音をだす。


、、、俺の方の食器だけ。


少女の方の食器からは音が出ていない。


俺の同じ物を同じ様に食べているはずなのに、俺と少女では食事風景が全く違っていた。


少女のそれは上流階級のテーブルマナーを思わせた。


「、、、、、、、、、、、」


まあ、この女がどこの誰だろうと関係ない。飯を食ったら外に出してさよならだ。


、、、の筈なのだが、ふと思った疑問を口にしてしまった。


リオウ「なんで、この街に来たんだ?」


少女は一言


少女「ある人を、探す為、です。」


と、簡潔に述べた。


その言葉には何か強い意志を感じた。


リオウ「、、、悪い事は言わない。誰を探しているか分からないがアンタのような女が来ていい場所じゃない。

入り口まで送ってやるから、さっさと帰れ」


少女がこの街で人探しなど出来る訳がない。なのに。


少女「、、、それは、出来ません。」


少女の言葉は簡潔だ。要点だけ喋っている。

、、、頭の良さを感じる。


リオウ「忠告はしたからな。これ以上は助ける義理はねえ。飯食ったらさっさと出て行きな」


何故かまたイライラが復活してぶっきらぼうに少女を突き放してしまった。


義理で言えば最初から今までも無かったのだが、、、、


少女「はい。分かりました。」



少女は誰かに頼るという選択肢は元より持ち合わせていないのか、凛としてそう答えた。



そして、食事が終わると深々と頭を下げ、ご馳走様でした、ありがとうございましたと礼を言い、そして


本当に外へ出ていってしまった。



(、、、ふん、せいせいした。どうとでもなれ、バカ女が)


余計な荷物を振り払って気分が良くなったー、となったのはコンマ1秒で


次の瞬間、体全体を悪寒が襲った。


後悔。


スラム街という犯罪の温床の街に少女を外へ追いやる、なんて、俺はとんでも無い事を、、、、


、、心の中で何が俺に叫んでいた


守れ!


何に換えても守れ!


守れ!!!


、、、と。



俺は走り出していた。


そう遠くへは行っていない、、、!


俺はただ、少女の身に何もない事だけを祈っていた、、、、

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