〜エルファナ大森林〜その7
二度目の調査では、森の広い範囲を調べる事が出来た。
と言うのも、巨大蜘蛛や蜂がいくらかは襲って来たものの、特に問題もなく調査を進めることが出来たからだ。
かなり広範囲を調べてはみたが、これといった収穫は無かった。
陽も傾き始めたので、調査はこの位にして森の入り口に戻ろうかと言う話になった。
「収穫は無しかぁ、あっちはどうだろ、アイザックは何か見つけたかな?」
ユチェが残念そうに呟いた、何か見つけてくれていれば嬉しいが、余り期待出来ないような気はする。
魔獣を仕掛けた所で、こっちのメンバーに対しては、さほど意味がないと言う事は、朝の一件でわかっている筈だ。
「どうだろうな、でも、期待しない方が良いんじゃないか? 何か別の方法で調査を進める必要があるだろうな」
「なんか思いつくのか?」
「いや、大々的に邪教徒の調査をして、相手の出方を見る位しか思いつかないけどな」
「ちょっと危険すぎはしないか? 相手もかなりの規模なのだろう?」
アイラの言う通りだ、正確な規模こそわからないものの、小さくはないだろうと言うのは聞かされている。
だとすれば、探り合いの時点で先手を打ちたい。
「村に時々来るって話の冒険者を、なんとか見つける事が出来ればな」
「それも難しそうだけどね、迂闊に村に出て来たりはしないんじゃないかな」
相談しながら来た道を戻っていく、残念ながら相談のかいは無く、森の入り口に戻って来るまでに、これといった作戦は思い浮かばなかった。
「ミネ、出来るだけ目立たないように、冒険者を泊めたって言う話の家を探ってみてくれないか?」
「了解、カーズ君とアイラさんを貸してもらうよ、村の中でいきなり襲われたりはしないと思うけど、用心に越した事はないからね」
「おう、護衛だな? 任せとけ」
「承知した」
森の入り口で暫く待っていると、同じように調査を終わらせたモリスさん達が戻ってきた。
あちらの方も森の調査は捗ったようだが、これといった収穫はなかったようだ。
無事に全員戻って来た様なので、今日の調査はここまでにして宿屋に戻って報告と作戦会議をする事になった。
「報告と言っても、今日はお互いに収穫もなかった様だな」
「そうですね、森の方は異常なしだとしか言いようがありませんでした」
夕食はジュンイツさんやクオニさんが準備してくれているらしい。
捜査を頼んだミネ達は、既に宿屋を出ている、夕食が終わればアイザック、ユチェと一緒に、村を見回ってみる予定だ。
「それでヒロ、俺達は何を調べるんだい?」
「特にあてが無いんだよな、ちょっと危険かもしれないが、見た感じ素人の冒険者が3人でウロウロしていたら、何か仕掛けて来ないかと思ってな」
「囮調査ってこと? ちょっと危なすぎない? 先手は取りたいって言ってたよね?」
ユチェの心配ももっともだと思うが、このまま森の調査を進めていくだけでは、成果は特に得られないように思う。
焦る必要はないが、何も進展の無いまま町に帰らなければならなくなるのは避けたいものだ。
せめて、邪教徒のある程度正確な規模や、拠点の場所は調べておきたい。
「村の中でいきなり襲われる様なことは無いと思う、そんな事をすれば、国から大規模な討伐隊が送られかねないからな。邪教徒側だってその位はわかってるはずだ」
「1人で動いて無い限りは、だね」
そう言うアイザックに同意しながら、運ばれてきた食事に手をつける。
冒険者らしい、濃いめの味付けがされた、燻製干し肉と干した野菜の入ったスープ、硬くなった餅パンを焼き直したもの。
定番だが、なんだかんだ言って好みの味がする、もう随分と食べ慣れた味だ。
「ヒロ、我々も食事の後に村の調査に出ようかと思う、ひとまずは酒場でも当たってみる予定だ」
「了解しました、こっちは村の様子を見ながらブラついてみます」
「そうか、警戒を怠るな」
食事も終わり、宿屋を出る準備を済ませる、念の為に照明弾を持って出る事にした。
アイザックやユチェと話しながら、村の中を歩いていく。
森の匂いが漂う村の中は、柔らかな灯りに照らされて、実に幻想的だ。
巨木に架けられた橋や、設置されている足場が多少不安定な事を省けば、実に良い雰囲氣の村だと言える。
こういう足場も慣れれば、地面の上にいるより居心地が良かったりするんだろうか。
「アイザックとユチェはフアミ村とエルファナ村、どっちが好みだ?」
「そりゃあフアミ村だね、住み慣れた故郷だしね」
「私もフアミ村かな、エルファナ村の雰囲気も好きだけどね、ヒロは?」
「フアミ村だな、やっぱり俺は地面の上が良い」
他愛の無い話しをしながら村を歩いていく、途中ですれ違った村人に、軽く話しを聞いたり、家の前で何かの作業をしていた人に、作業を見学させてもらったりもした。
そうして暫くのあいだ村を歩いていると、村の教会にたどり着いた。
事前に聞いていた通り、エルファナ村でのステラ信仰は強いようだ、教会の大きさがそれを物語っている。
「そう言えば、挨拶するのを忘れてたな」
「挨拶しておいた方が良いかもね、もしかしたら、何か情報が手に入るかもしれない」
教会の扉をノックすると、中から神官であろう女性が姿を現せた。
「はい、冒険者の方ですか? 教会へは何の御用でしょうか?」
「ステラ教徒の神官、ヒロ・ラルフレンです、ロザットのダーディル神父から、森の調査に派遣されて来ました、神父様にお話しを伺いたいのですが、いらっしゃいますか?」
「これはようこそエルファナ村へ、神官を務めさせて頂いてます、レスと申します、どうぞ中へ、今神父様をお呼びしてきますね」
そう言うとレスは扉を開けて、教会の奥へ歩いて行った。
教会の中に入って辺りを見渡す、ロザットの教会に比べても、劣らないであろう大きさの教会には、やはり神官もロザットの教会と同じくらいの人数がいる。
内装は各村で余り差がない、地域色が出るかと思っていたが、ちゃんと決められていたりするのかもしれない。
「ようこそ、エルファナ村へ、神父のパーショトです」
「初めまして、ヒロ・ラルフレンです」
レスに連れられて出てきた神父は、フロイド神父やダディ神父に比べると随分若く見える。
何か有益な情報を知っている事を期待しながら、神父と話をすることにした。




