〜エルファナ大森林〜その2
長い旅路を経て、ようやくエルファナ村に到着した。
ピクニック気分で旅をしてきたが、いざ終わってみるとかなり疲労を感じる。
エルファナ村の第一印象は、圧巻される程にファンタジー感が強いと言ったものだった。
元世界ではお目にかかれないであろう巨木が立ち並び、その木をくり抜いて中に部屋を作っていた。
巨木の周りには足場が作られていて、それぞれの木を行き来出来るみたいだ。
エルフという種族が居るなら、こういう場所に住んでいるのだろうと思わせるような、特徴的な村の構造をしていた。
「今日はひとまず宿屋に向かい休憩をしよう」
モリスさんの言葉に反対するものはいない、まずは全員で宿屋に向かう事にした。
宿屋は、宿屋というよりは、大きめの屋敷といった感じの建物だった。
木の上に建っているのではと予想をしたが、ごく普通に地上に作られていた。
村長に申請を出して、許可が貰えれば誰でもご自由に宿泊して下さいという事らしい。
今回はギルドから事前に許可を貰っているので、勝手に中に入らせてもらう。
「さて、それじゃあ俺は先に村長に挨拶をしてくる事にする」
「俺も着いて行きますよ」
モリスさんが村長に挨拶にいく様なので、同行させてもらう事にした。
ミネは先に実家に挨拶にいくらしい、アイザックとユチェも興味があるのか、着いていくようだ。
「カーズとアイラはどうする?」
「先に休憩させてもらおう、荷解きの作業もしておかなくてはならないしな」
「俺も荷解きを手伝うかなぁ」
宿屋には2人の他に、ジュンイツさんが残るようだ、ある程度バラけて行動する事になったが、村の中でいきなり襲われる様なこともないだろう。
村の情景を見渡しながら、村長の家に向かう。
見れば見るほど、凄いと言う感想しか出てこない、昔やったゲームに出てきたエルフの村は、こんな感じだった様な気がする。
改めて見ると、木の中をくり抜いて部屋を作ったりして大丈夫なのかと不安にもなる。
強度の問題とかないのだろうか、直ぐに割れてしまいそうなものだが。
「ギルドからお仕事の依頼を受けて来ました、モリスです」
「おお、ようこそエルファナ村へ、村長のクアマテと申します、まずは中へお入り下さい」
エルファナ村の村長は、優しい雰囲気の老婆だった。
招かれるままに家の中へ入る、木をくり抜いて作っているだけあって、流石に部屋は少し狭さを感じた。
部屋の奥には階段があり、上下にも部屋が続いている様だった。
入ってすぐの部屋には、テーブルと椅子が並べられていた、ダイニングルームとして使っているのだろう。
「早速ですが、まずは前任者について聞きたいのですが」
「はい、わかりましたお話ししましょう」
村長は、エルファナ村が出した依頼を受けに、エルファナ村へ来ていた冒険者達について教えてくれた。
森の入り口から、少し奥の方まで、何日も繰り返し少しずつ調査を進めていたらしい。
特に変わった様子もなく、調査を進めては報告をしに戻ってきてくれていたと、村長が教えてくれた。
ある日、いつもなら戻ってくる時間になっても、冒険者達は森から帰って来なかった。
調査をしていた方面は、森の中でも比較的安全な地域で、魔獣に襲われたと言うのは考えにくいらしい。
村長は、前もって準備していたエルファナ村周辺の地図を広げ、前任の冒険者達が調べた場所、最後に向かった場所に、印をつけてくれた。
「ありがとうございました、まずはその辺りから調査を進めてみます」
モリスさんは村長にお礼を言うと、ひとまず宿屋に戻って、作戦会議をしようと提案した。
一緒に来ていたメンバーと共に同意をして、再び宿屋に戻る。
「どう思った?」
帰っている途中でモリスさんはそう聞いてきた、村長の話の事を言っているのだろう。
「特におかしな点はなかったと思いますね、まずは全員で、最後に向かった場所とやらを調査してみるべきでしょうね」
村長の話を聞く限りは、特に怪しそうな部分はなかったように感じる。
宿屋に戻ってから、ミネに村の詳しい話を聞いてみても良いかもしれない。
宿屋には、既に荷解きを済ませたカーズとアイラ、それにジュンイツさんが待っていた。
クアマテ村長から聞いた話を説明しながら、ミネ達が帰ってくるのを待つ事にした。
「村長さんの家に行っている間に、何か変わったことはなかったか?」
念のために、カーズとアイラに尋ねた。
2人共首を横に振り、特に何もなかったと答える。
もしかすると、邪教徒が様子を見に来ている可能性もあったが、ひとまずは何もなかったようだ。
「ただいま、申し訳ないね、家族と少しはなしこんじゃってさ」
ミネ達が帰ってきた、ミネは家から持ってきた本を手渡してきたあと、椅子に座った。
ユチェも何冊か本を持っている、ミネの妹に借りて来たのだろう。
これで今回の調査に参加しているメンバーが全員揃った。
テーブルを囲み、今後の方針を話し合う事にした。
「それじゃ、みんあこれを見てくれないか」
モリスさんがクアマテ村長に借りた地図を、テーブルの上に広げた。
「前任の冒険者達は、最後の調査にここへ向かったらしい、まずは俺達も此処へ向かってみようと思う」
モリスさんは地図に記された印の1つを指差しながら言った。
他に当てもないので、その意見には賛成だ。
「調査を始めるのは明日からでいいな? 今日は旅の疲れもある、ゆっくり休む事にしよう」
「もう片方の調査はどうしますか?」
宿屋の近くに人の気配がない事を確認して、小声で尋ねる。
「村の中にいる限りは、目立つような動きはしてこないだろう、だが、森に入ってしまえば話は別だ。魔獣だけではなく、そちらの警戒もすべきだろうな」
あらかじめ全員で、それぞれ警戒する方向を決めておく、近い場所だけではなく、遠くからこちらを見ている人間がいないかなど、普段とは違った事にも気を使うべきだろう。
今日は既に日も傾いて、夕食時になっていた。
モリスさん達は宿屋で自炊をするらしいが、ミネは自宅が近いので、そちらで食事を取るらしい。
食事に来ないかと誘われたので、アイラとユチェを同行させる事にした。
「ヒロ君達は一緒に来ないのかい?」
「俺とアイザック、それにカーズは、村の酒場にでも行って飯を食う事にするよ」
酒場でそれとなく邪教徒の事について探るつもりだ。
ミネもその意図に気付いたのか、ユチェとアイラは任せてよと言いながら、2人を連れて宿屋を出て行った。
「ヒロ、分かっているとは思うが、あまり目立たない様にな」
アイザック達を宿屋を出るときに、モリスさんに釘を刺された。
了解と返事を返しながら、宿屋を後にした。




