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〜エルファナ大森林〜その1

 エルファナ大森林までは馬車で3日程かかる、流石に3日間も馬車の中に乗りっぱなしだと、かなり辛い物がある。

 馬車の乗り心地は悪い、歩き疲れれば馬車に乗り、馬車に乗り疲れれば外を歩く。

 クランメンバー全員で交代しながら乗ったり歩いたりして、エルファナ村まで向かう、外を歩くメンバーは辺りの警戒も兼ねている。


 「何も起きないと、移動中はピクニックみたいなもんだな」


 「何も起きないに越したことはないでしょ、盗賊にでも襲われたいの?」


 馬車の前をユチェ、ミネと共に歩く、暖かい陽気が体を照らし、爽やかな風が吹き抜けていく、実に平和そのものだ。


 「エルファナ村に着いたら、まずは宿屋かな?確かエルファナ村には宿屋があるんだよね?」


 「ギルドからはそう聞いてるな、なんとありがたいことに、ギルドから宿泊費も出るぞ」


 エルファナ村には宿屋がある、と言うのも、大森林に隣接しているこの村には、森の調査の為に頻繁に冒険者や研究者などが訪れる。

 その人達が滞在するのに便利なように、国からの支援金が出て宿屋が建ったという経緯があるそうだ。

 元々エルファナ村は、村の中では最大規模、もう少し人口が増えれば町と認定される程に大きいらしい。

 それだけに行き交う人々も多い、元々宿屋があってもおかしくない様な場所なのだ。


 「ミネはエルファナ村の出身だったよな?」


 「そうだね、僕はエルファナ村の生まれだよ、図らずとも帰省になっちゃったね、みんな元気にしてるかな」


 「自分の故郷だ、心配じゃないのか?」


 「エルファナ村では調査依頼なんて、殆ど日常茶飯事だったからね、冒険者の人達によく話を聞かせてもらっていたよ」


 広大すぎる森は、何度調査を行っても調べ切れる物ではない、それ故に、調査依頼はエルファナ村をはじめとして、国、教会、町、ギルド、様々な場所から、何度でも依頼される。

 銅級に上がって長い冒険者ならば、一度はエルファナ村に行った事があると言う者ばかりだ。


 「ミネが英雄に憧れてるのも、そういう所から来てるのか? 村に来ていた冒険者に話を聞いている内に、みたいな」


 「うーん、あんまり関係ないかな、僕の場合は、子供の頃に読んで聞かされた、本に出てくる英雄に憧れたわけだからね。 エルファナ村に着いたら、家に帰って本を借りてくるよ、ヒロ君もそういう話好きでしょ?」


 「好きだな、その英雄とやらは、実在した人物なのか?」


 「モデルはいるかもしれないけど、物語自体はフィクションだったんじゃないかな」


 「だったら、ミネがその話をノンフィクションにしてやれば良いさ」


 「ミネ英雄譚に題名を変更しないといけないね、頑張ってみるよ」


 ユチェも何か読む本が欲しいとミネに対して要求し始めた、ミネには3人妹が居て、その妹が好きな恋愛物語を貸して貰えると言うことで、話はまとまったようだ。


 エルファナ村まではまだまだ距離がある、日が落ち始めたら野営の準備をして、夜に備える。

 フアミ村から町に出た時に比べると、人数が増えたぶん野営は楽になったように思う。

 あの時と違い、寝る場所は馬車の中を使うことが出来るし、見張りの交代も、人数が多いためローテーションを組みやすい。


 「おっ、サンキュー」


 カーズとアイザックにコーヒーを渡し、近くにあった岩に腰掛ける。


 「旅の夜と言えば、やっぱこいつだよな、フアミ村から町に出のが、まるで昨日の様に思い出せるぜ」


 「実際まだそんなに経って無いけどね」


 「銅級まで思ったより早かったな、この調子でいきたいもんだ」


 時折周りを確認しながら、3人で雑談をして、交代までの時間を潰す。


 「ようやく家にも仕送りが出来るってもんだ、ガシガシ稼いでいこうぜ」


 今回の依頼が終われば、報酬で懐が随分と暖まる、そうなれば、冒険者になって初めての休みでも取ってみよう。

 2ヶ月も町に住んでいたのに、未だに町の全体像も把握できていない、適当にブラブラするのも悪く無いだろう。


 「まずは目の前の依頼に集中しろよ、生きて帰れなきゃ、いくら稼げても一緒だ」


 「怖いこと言うなよ、大丈夫だよな?」


 「大丈夫になるように、みんなで頑張るんだよカーズ。実際の所、今回の依頼について、ヒロはどう思う?」


 アイザックに話題を振られて、少し考える。

 今まで集めた情報を整理しながら、今回の依頼について改めて考え直す事にした。


 「帰ってきていない冒険者の捜査、言っちゃなんだが、おそらくはもう生きては無いと思う、生きてるなら何かしら連絡を出していてもおかしくない。そうなると、何故死んでしまったかだ、森で魔獣か魔物に襲われたのか、それとも邪教徒が関係してるのか、この二択になるだろう」


 「面倒なのは邪教徒の方だね?」


 「その通りだ、魔獣の方は森の奥まで調査に行かない限りは、そこまで危険でも無いと思う、10人も居るんだ、多少の事なら対処出来るだろう」


 アイザックに同意する、魔獣と言っても、生息域のすぐそばで、大きな村が出来上がる程度のものなのだ。

 余程の事でも無い限りは、対処し切れずに全滅なんていう事にはならないだろう。

 他の冒険者達も、そう思ってエルファナ村に赴いて行った筈だ、だが、帰ってこなかった。


 そうなると怪しいのは魔獣の方じゃない、邪教徒の方だ。

 銅級の冒険者を倒してしまえる程度には、規模が大きいのは確実だろう。


 「つまり今回の依頼の本題は、森の調査の方じゃ無い、邪教徒の調査の方になる。相手側に気取られないように、あたかも森の調査に来ましたという体で動いておいた方が良いだろう。それでも、手を出してこないとは限らない、出来るだけ3人以上で行動しておく事にしよう」


 「賛成だ、きっと村の中にも仲間がいるだろうからね」


 「エルファナ村の住人は、ステラ教信仰が強いらしい、まずはこっそりと、他所から来た奴らを当たってみる」


 「調査はヒロがやるのか?モリスさん達にも相談しとくべきじゃねぇの?」


 「既に相談済みだ、村に着くまでには細かく打ち合わせもするだろう」


 エルファナ村にはまだ到着していないと言っても、既に依頼は始まっている。

 ここで下準備を怠ってしまえば、待っているのは黒い掲示板という訳だ。

 依頼の成功率は、殆どその準備段階で決まる様な物だと、何度か一緒に訓練をした先輩冒険者に言われた事がある。

 その忠告を無駄にしない為にも、事前準備は念入りにする必要があるのだ。

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