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〜新人冒険者の日々〜その9

 まずは手当たり次第にエルファナ大森林の事を聞いて回る、そこで確認されている魔獣の話や、住んでいる人々の生活まで、兎に角情報を集める。

 受付では、エルファナ大森林に生息している魔獣と獣の話を聞かせてもらった。

 鹿みたいな獣や、森狼、森熊、それに事前に聞いていた巨大蜘蛛に、蜂みたいなものも生息しているらしい。


 図鑑を借りてそれらの生物を調べておく、森狼や森熊はともかく、巨大蜘蛛と蜂の方は、今まで実物を見たことがない。

 その2匹はどちらも魔獣に分類されていた、どちらも毒を持っており、危険度が高そうな記述がされている。


 ギルドの中では、まだ何人か冒険者達が残っている、近くに寄って、それとなくエルファナ大森林の事を聞いてみると、運よくエルファナ村出身の冒険者がいた。

 その冒険者には、普段はどうやってエルファナ大森林の魔獣達に対応しているのか聞いておいた。


 森の奥まで入る場合には、注意して木々を確認しながら、森の奥へ進んでいくらしい。

 巨大蜘蛛と蜂の縄張りは、それぞれに特徴がある、その特徴を探しながら、少しずつ討伐していくのだそうだ。


 話を聞かせてくれた冒険者にお礼を言って、ギルドを出る。

 集合時間にはまだ少し時間があるだろうか、ダディ神父にも話を聞きに行ってもいいかもしれない。

 そのまま教会に向かい、中に入っていく。ダディ神父はいつも通り、教壇の前に立って、町人と話をしているようだった。

 話が終わるのを待って、ダディ神父に話しかける。


 「おはようございますダディ神父様、少しお時間よろしいでしょうか?」


 「ヒロか、うむ、どうかしたのか?」


 ダディ神父に、エルファナ大森林の調査に行く事を伝え、もし何か知っていることがあれば教えて欲しいと頼んだ。


 「ほう、エルファナ大森林にな。あの森は実に広大であってな、教会でも研究者達が何度も調査を行っておるが、未だ解明されていない事も多い。森の奥には邪神の封印された遺跡があるだとか、大精霊が住んでいるだとか、様々な噂が出ておるな」


 「ダディ神父はその噂についてどう思いますか?」


 「眉唾物じゃろう、だが、まだ調査の進んでいない部分が多いのは間違いない。その中でひとつ気になる噂がある」


 ダディ神父は顎髭を撫でながら、少しだけ顔を歪め、近くに来いと手招きをした。

 ダディ神父に従い近くにいくと、今度は小声で話し始めた。


 「エルファナ大森林の側、具体的にはエルファナ村周辺のことじゃがな、邪教の信者の姿が度々確認されておる、もしかしなくても、あの辺りに拠点のひとつがあるのは確実じゃろう」


 「エルファナ村の村人達に紛れ込んでいる可能性もあると?」


 「いや、それは考えにくい、エルファナ村にはステラ教の熱心な信者が多く見られる、わざわざそんな所を拠点にしたりはしないだろう、おそらくは村の外、大森林の浅い位置に拠点があるのではないかと睨んでおる」


 ダディ神父が神官の1人に声を掛けて、エルファナ村周辺の地図を持ってこさせた。

 その地図を広げながら、周辺状況を細かく説明してくれた。


 「エルファナ大森林は危険も多いが、森の恵みによって大いに潤っておるのも事実じゃ、邪教徒とは言え人は人、飢えれば死ぬし、活動を広げるためには資金も必要になってくる」


 「それでエルファナ大森林の恵みに目をつけたわけですか」


 「うむ、国と教会でも調査を行ってはいるが、何分エルファナ大森林は実に広大でな、拠点を見つけるまでには至っておらん。ここ、ここ、この辺りは既に調査済みじゃ」


 ダディ神父は地図に印を書き込みながら、既に調査が終わった場所を教えてくれた。


 「この地図を持っていくが良い、よいかヒロ、もし邪教徒の拠点を見つけたとしても、安易に手を出してはならん、調査依頼で大事なのは、情報を持ち帰る事じゃ、何よりも危険すぎる」


 「ありがとうございますダディ神父様、大森林の中だけではなく、そちらの方も警戒しながら調査をしてきます」


 ダディ神父は再び神官に声をかけて、教会の奥から箱を持ってこさせた、箱の中身には水薬がいくらか入っていた。


 「この地図と、水薬を持っていくが良い、この水薬は、エルファナ大森林に生息している、魔獣の毒を中和してくれる」


 「よろしいんですか?」


 「うむ、邪教徒の調査を頼んでいる様なものじゃなからな、くれぐれも注意して行くんじゃぞ、お主にもしもの事があると、ワシがフロイドの奴に顔向け出来なくなる」


 「ありがとうございます、有効活用させてもらいます」


 そう言って地図と薬を受け取って、教会を後にした。

 そろそろ集合場所に向かっても良い頃だろう、馬車を待たせている町の門へ向かう。

 そこでは既にアイザックとアイラが馬車に荷物を積み終え、他のメンバーを持っていた。


 「そっちは準備出来たみたいだな」


 「揃える物が少なかったからね、何か変わった情報でも見つけてきたのかい?」


 「中々面白い話が聞けたと思うぞ」


 アイザックとアイラに地図を見せながら、教会で聞いた話を説明する。

 2人が地図を見ながら話を聞いている間に、馬車に薬を積み込み、2人の前に立つ。


 「ふむ、邪教徒か、気に留めておかねばならんだろうな、もしかすると、森の魔獣達より厄介かもしれぬ」


 アイラが顎に手を当てながら呟いた。


 「俺もそう思う、だが、露骨に調査はするな」


 「何故だ?」


 「相手も人だからだよ、調査はする、だがそれを相手に気取られると、先手を取られてしまうかもしれない、だから、俺達はあくまでもエルファナ大森林の魔獣の調査に来てるって体を保っておく」


 自分たちの調査に来ているのでは、なんて事が相手側にバレると、それこそ森の調査中に襲われかねない。


 「邪教徒の方は、それとなく捜査をする形にするんだね?」


 「その方が危険が少ないと思う、特にアイラやユチェ、カーズ辺りは顔に出る、迂闊な事は言うんじゃないぞ」


 「ぐぬっ! よかろう、ではそちらは任せておく」


 アイラも自身が調査向きではない性格をしていると、自分で理解しているらしい。

 少し不満げではあるが、こちらの意見に賛同してくれたようだ。


 「大丈夫だよ、アイラにはアイラの良さがあるんだし、気にする事ないさ」


 「アイザック殿」


 なんだか急にロマンスの匂いが漂ってきた、そう言われてみれば、この2人は良く一緒に居る気がする。


 「知ってたかアイザック、うちのパーティはパーティ内恋愛禁止なんだ」


 「貴様っ!」


 アイラが顔を赤くして叫びつけてきた


 「良いのかいヒロ、来年カノンちゃんが来た時に困るんじゃないかな?」


 「来年までの期間は恋愛禁止なんだよ」


 「カノン?なんだヒロ、てっきりお前はユチェとそういう関係なのかと思っていたぞ」


 「二股なんだ、酷い男だよね」


 「クズだな、腹を切れ、介錯してやろう」


 軽い冗談を言い合いながら他のメンバーを待っていると、大量に荷物を持ったカーズとミネがこちらに歩いてきているのが見えた、ユチェも一緒だ。

 あとはモリスさん達を待つだけだ、エルファナ大森林へ向かう準備は、着々と進んでいった。

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