〜新人冒険者の日常〜その8
今日もギルドの前には多くの冒険者達が、ギルドが開くのを待っている。
事前にクランメンバー全員で打ち合わせた結果、依頼は昨日の夜に話した2枚に絞ることにした。
あらかじめ依頼の内容を知っている自分とユチェが、依頼用紙を取りに行く。
自分たちで清書したものなので、すぐに見つけられるはずだ。
「じゃあ、準備いいなユチェ」
「もちろん、マークも色も覚えてるし、完璧だよ」
心強い返事を返したユチェは、自信満々の表情だ。
時間になり、ギルドの扉が開かれる。
走り込んだりはしないが、早足で掲示板の前に向かい、依頼を探す。
「見つけた」
張り出されている依頼用紙の一枚を剥がし、もう一枚の依頼用紙を探す。
「あった」
ユチェの方が早く見つけたらしい、指差された先には、確かに目的の依頼用紙があった。
ユチェが立ってる位置よりこちらの方が近い、素早く依頼用紙を掲示板から剥がし、クランのメンバーと合流する。
「ご苦労さん、そいつが言ってた依頼か?」
「すまないな、本来は俺がやるべき仕事なんだが、助かるよ」
ヤーセンさんとモリスさんに依頼用紙を渡す、2人は依頼の内容を確認して、顔を合わせて頷いた。
「よし、それじゃメンバーを分けよう。北に向かうメンバーは、ヤーセンとビッツ達の3人、ジュンイツ、クオニ、俺達はヒロ達と一緒に森の調査だ」
森の調査には、冒険者が10人必要だ、モリスさん達3人、こっちのパーティメンバーが6人、足りない1人に関しては、モリスさんが探してきてくれるらしい。
「それじゃ俺達はメンバーも足りてるからな、先に依頼を受けに行ってくる、行くぞビッツ、作戦会議だ」
「わかったヤーセンさん、それじゃあなヒロ、気を付けろよ」
「そっちこそな」
ビッツ達が受付に行くのを見送り、モリスさんが残りのメンバーを見つけてくるまで、暫くの間テーブルに着いて待っておくことにする。
「いよいよ冒険者らしい仕事が出来るな、今日までずっと雑用ばっかだったからなぁ」
「依頼を簡単に説明してくれないかヒロ君、僕達は簡単にしか聞かされてないからね」
そう言われてみれば、モリスさんやアイザックには既に話していたが、他のみんなには話していなかったように思う。
「依頼は簡単だ、ここから南に向かった先に、デカい森があるだろう?エルファナ大森林だったか」
「うむ、森の入り口と言われる場所には、エルファナ村があるな」
アイラが捕捉説明を入れてくれた、エルファナ村はエルファナ大森林に隣接する、かなり大きな村だ、エルファナ大森林で取れる植物や動物を生計にしていて、それに加えて林業も盛んらしい。
「そのエルファナ村からの依頼が、森の様子が少しおかしいから調査をして欲しいって物だったんだ」
「うん?依頼はギルドからって話だろ?それじゃエルファナ村からの依頼になるじゃねぇか」
「まぁ聞けよ、その依頼で調査に向かった冒険者達が、依頼の期間を過ぎても戻ってこないらしい、その冒険者の調査、捜索と、エルファナ大森林の調査が今回の依頼だよ」
エルファナ村からの依頼で、森の調査に向かった冒険者は全員で4人、未だに1人も帰ってきて居ないらしい。
何かあったであろう事は間違い無いので、ギルドからの追加調査依頼が出たと言うのが、今回の経緯だ。
「ヒロ、その冒険者達はどうなったと思う?」
「わからないが、楽観視は出来ないだろうな、森で何か問題が発生してて、それの対処にあたってるって可能性はあるだろうけど、一番可能性としてたかいのは」
「森で魔物でも発生して、それにやられたって所かな?」
アイザックの予想は当たってる可能性が高い、自分もそう思う、魔物か魔獣かはわからないが、何かが森で起きているのだろう。
「ねぇ、それって危なくない?大丈夫なの?」
「だから調査人数を増やしたんだろ、危険だって分かってれば、調査の仕方も変わってくる、ちょっと全員で見に行って、やばそうなら逃げる、それで良いんだよ」
だからと言って、安全だと言い切る事は出来ない、それでも討伐依頼に比べれば、比較的安全な依頼には違いない。
「なんか出てくりゃ、倒しちまえば良いんだよ、その為に散々訓練してきたんじゃねぇか」
「出てこないに越したことはないけどね」
アイザックとカーズのやりとりに耳を傾けていると、モリスさんがローブを着た男を連れて戻ってきた。
紹介を聞くと、銅級の冒険者で、魔法が得意だと言う事らしい、簡単に自己紹介と挨拶を済ませる。
「よし、それじゃ依頼を受けて、作戦会議といこう」
モリスさんは全員分の冒険者証を集めて、受付の方へ向かっていった。
依頼の期間は2週間、銅級に上がって初めての依頼としては期間が長いだろうか、難易度として考えても、難しくはないが、優しいとは言えない。
それでも、このメンバーならば大丈夫だろうと言う確信があった。
「何笑ってるんだいヒロ?」
「いや、冒険者してるなって思ってね」
受付から戻ってきたモリスさんと、今回の依頼について作戦会議を始める、まずは必要な物の準備だ、日数分の食材や、野営の為のテント、使うであろう道具、色々と用意しなければならない。
今回の依頼はギルドからの依頼なので、この辺りの費用はギルドが負担してくれる。
もちろん費用には限度があるので、下手な買い物をしたりは出来ない。
全員で用意するものを分担して集める事になった、それが済めば、ギルドが用意してくれた馬車に乗って、エルファナ村に向かう。
そこから先は現地に着いてから、状況を見て考えていかなければならないだろう。
「アイザック、準備を任せても良いか?」
「任せておいてよ、でも、ヒロは何か別の用事かい?」
「事前調査だよ、ちょっと調べ物をして、軽く情報を集めてみる」
もう既に調査依頼は始まっている、今回の依頼を無事に終わらせる為に、出来る事はなんだってやっておかなくてはならない。
仲間達に手を振り、まずは情報収集をする為に受付に向かう事にした。




