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〜新人冒険者の日々〜その5

 ひたすらに雑用をこなし続ける日々が続いていく、あらかじめ鍛冶屋に頼んでおいた装備も揃い、見た目も冒険者らしくなってきた。

 朝起きて、ギルドに向かい、依頼を受けて、仕事をして、戻ってきたら夕食までは、ギルドの訓練場を使わせてもらって、訓練を行う。


 慣れるまではなかなか大変なルーティーンだったが、今では特に無理もなく回せるようになっていた。

 訓練場には他のパーティの人達も居る事があった、そんな時は一緒に訓練をしたり、模擬戦をしてみたりと、色々な訓練方法を試してみた。


 村に居た頃の4人パーティと違い、6人まで増えたパーティだと、やはりどうしても指示を出すのが難しくなってしまう。

 そこで、アイザック、ミネ、アイラの3人を一組として、アイザックに指揮を取ってもらう事にした。

 今の所は模擬戦でしか試して居ないが、実戦になっても大丈夫だろうという手応えは感じた。


 今日もまた、依頼を終わらせた後、みんなで集まって訓練の最中だ、アイザックとアイラが、別パーティの人達と模擬戦をしている。


 「あの二人、随分と連携が上手くなってきたな」


 「もともと相性が良かったんだろうね、二人ともどちらかと言えば、攻めるタイプの戦い方をする方だからさ」


 ミネと二人で休憩がてら試合を観察する、カーズはユチェに魔力の操作を教わっている最中だ、何を思ったのか、魔法が使えるようになりたいらしい。


 「こっちと違って、あっちは苦戦してるみたいだね」


 「カーズも魔法のセンスはあると思うんだけどなぁ、魔力操作自体は出来るみたいだけど、詠唱から先がめちゃくちゃだ」


 何度教えても上手くいかないカーズに対して、ユチェが文句を言いながらも再び最初から、魔法の発動のさせかたを教えている。


 「ヒロ君は魔法得意だよね? 初めから得意だったのかな?」


 「いや、何度も何度も村の教会にいたシスターや、神父様に教えてもらったんだ、使える様になるまでは随分時間がかかったよ」


 一度使える様になってからの上達は、自分で言うのもなんだが早かったように思う。

 元世界での人生経験が、なんらかの形で役に立っていたのかもしれない。


 あまり休憩ばかりしているわけにもいかないので、アイザック達と交代して、ミネと二人で模擬戦の相手をする事にした。

 相手パーティのメンバーに挨拶をして、模擬戦を始める。


 十分な訓練時間を取れたので、そろそろ切り上げて夕食を食べに宿屋に戻る。

 いつもの様に夕食の注文をして、テーブルを囲み座る、隣のテーブルでは、ビッツ達が同じ様にテーブルを囲んでいた、今日はモリスさん達も一緒らしい。


 「ようヒロ、相変わらず熱心な事だな、今日も訓練だろ?」


 「ビッツ達も混ざってくれて良かったんだぞ」


 「昨日は一緒に訓練しただろ? 今日はクラン全員揃って、今後の方針を決める会議なんだよ」


 そうは言うが、会議をただの名目として使っているだけなのは見て取れる。

 何より、クラン主であるモリスさんが、既に酔い潰れてテーブルに付している。


 「飲みたいだけだろ、ビッツは、リリィだって呆れてるぞ」


 隣に座るリリィは、もう慣れましたと言わんばかりの呆れ顔だ。

 マルクスは相変わらず、静かに酒を飲みつづけている。

 

 「そういやヒロ、お前ももうすぐ冒険者階級が上がるんじゃねぇのか?」


 ヤーセンさんが酒を飲みながら、冒険者階級の話を振ってきた。

 先に冒険者になった先輩方の話によると、新人から銅級に階級が上がるのは、真面目にやっていれば2ヶ月程度かかると言う事らしい。

 既に一月以上は、休みを取らずに依頼を続けて来たので、もしかするとそろそろギルドの職員さんから、お声掛け頂けるかもしれない。


 「多分そろそろだと思う、銅級になれば、ビッツ達に追いつくな」


 「そこまではすぐなんだよ、そっからが遠いんだっての」


 「まぁ、そうなんだよなぁ、俺だって未だに銅級だ」


 ヤーセンさんがため息を吐きながら、ビッツに同意する。銅級から先に進むには、相当な実力をギルドに示さなくてはならない。

 そうなる前に、殆どの冒険者は軍や職人、商人などに引き抜かれたり、引退して村に戻ったりしているらしい。


 実力を示すためには、難易度の高い討伐依頼を引き受けるのが手っ取り早いが、無謀な挑戦で帰らぬ人となる場合もまた多い。

 そんな理由から、銀級以上の冒険者は、あまり人数がいなかったりする。それは何処の町でも似た様なものなのだと、モリスさんに教わった。


 「とにかく、銅級に上がったら声をかけろよ、どうせうちのクランに入るんだろ?」


 「他に選択肢もないからな、ヤーセンさんの勧誘は受けさせてもらうつもりではいるよ」


 「そうこなくっちゃな」


 仕事をこなしながら、クランの事も色々と調べてみた。

 この町では特別優秀なギルドと言うものはないらしく、はっきり言ってしまえば、何処も似たり寄ったりの規模をしている。

 その中ならば、モリスさんのギルドはまだ良い方だ、所属しておくのも悪くはないだろう。

 結局の所、ビッツ達やヤーセンさんも居るので、他のクランに比べてもやり易い。


 運ばれてきた料理を食べながら、今日1日を振り返る、お互いに仕事の事を報告して、今後の事について相談するのだ、これはもう日課の様なものになっていた。

 そうする事で、何か問題があった時に、早めに対処ができる様にしておく為だ。


 「それじゃ、今日も特に問題無しってことか」


 「問題ねぇのは良いんだけどよ、なんか思ってた冒険者生活とはちょっと違うよな? 実際俺達がやってるのって雑用とかばっかじゃねぇか」


 「銅級まで上がれば、また変わってくるんじゃないかな? カーズは早く冒険者っぽい事したいみたいだけどね」


 「そりゃそうだろ、今のままじゃ報酬も少なすぎて、仕送りも碌に出来ねぇよ」


 まぁ、実際、今受けることが出来る依頼の報酬なんて、たいした額にはならない、生活費を引いて、武具の修理費を出せば、残る資金は雀の涙程だ。

 実はカードゲームで稼がせて貰っているヘソクリが、多少溜まってはいるが、これは何かの時の為の保険だ、おいそれと使う訳にもいかない。

 贅沢をするのはもう少し先の話になりそうだ、もし資金に余裕ができたら、劇場なんかにも足を運びたい。

 出来るだけ早くそんな日が来るように、明日も変わらず、ギルドに足を運ぶ事になるのだ。

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