〜新人冒険者の日々〜その4
町の城門まで帰ってくると、ちょうどアイザックが兵士と一緒に門を警備している最中だった。
「ご苦労さんアイザック、どんな感じだ?」
兵士の方に外出許可証を提出しながら、アイザックに話しかける、カーズがいない所を見ると、休憩中なのだろうか。
「おかえりヒロ、こっちは特になんの問題も起きてないよ、まだ暫くは仕事が続くね、そっちはもう終わったのかい?」
「十分以上に集まったよ、これから報告を済ませて、今日の仕事はおしまいだな」
アイザックに籠を見せながら言う。
「カーズは?休憩中か?」
「そうだよ、さっきまでカーズが警備をしてたんだ、今は少し休憩を挟んでいるね、すぐ戻ってくるんじゃ無いかな」
兵士から中に入っても良いと許可を貰い、アイザックにまた後でなと別れを告げる、大通りを歩いて、ギルドまで帰ってきた。
受付に籠を提出して、冒険者証を見せる。
「ヒロ・ラルフレンです、依頼を受けた野草の採取が完了しました、確認をお願いします」
ユチェ達も冒険者証を受付に提示して、依頼の完了を確認してもらう。
「はい、それでは野草の確認を致しますので、暫くギルド内でお待ちください」
「俺が代表で残っておくよ、みんなは適当に寛いでいてくれ」
後は報酬を受け取って、今日の仕事はおしまいだ、待っている間に借りた道具を返しにいくが、別に全員揃っている必要はない。
「はーい、この後ってギルドでアイザック達を待つんだよね? それじゃ本を借りて読んでても良いかな?」
「良いんじゃないか? 相変わらず勉強熱心だな」
「図鑑って読んでて楽しくない? 知ってれば、得するような知識も多いでしょ」
ユチェはミネとアイラを連れて、受付に本を借りに向かった、二人ともユチェの姿勢に賛同したのか、同じように本を借りて読むつもりのようだ。
こちらはその間に道具を返却して、そのまま受付の前で依頼完了の確認が終わるのを待つ事にした。
「お待たせしました、ヒロ・ラルフレンさん、依頼の確認が完了しました、こちらが人数分の報酬になります」
全員分の冒険者証と報酬を受け取り、みんなが待っているテーブルに向かう。
ユチェは植物図鑑の続きを、アイラと一緒に読んでいるようだ、ミネが読んでいるのは、この前に借りて読ませてもらった動物図鑑の様だった。
「お待たせ、それじゃ報酬をわけるぞ」
決して多くはない報酬を、頭割りにして配っていく、多くはないが、食べるのに困ると言う程少なくはない、新人である事を考えれば、妥当な所だろう。
「うむ、確かに、感謝するぞヒロ」
「ありがとうヒロ君、このままアイザック君達が帰ってくるのを待つんだよね?」
「そうだな、他に特にする事もない、しかし、このまま2ヶ月程度雑用をこなすとなると、ちょっと問題かもしれないな」
椅子に座り、ユチェに自分の分の報酬を渡しながら言う。
「どうして? 初仕事にしては順調に終わったでしょ?」
お金を財布に入れながら、ユチェが返してきた。依頼の方は問題ではない、この程度の難易度ならば、そうそう失敗する事もないし、危ない目に遭う事もないだろう。
「アイザック達の方も、特に問題なく平和だって言ってただろ? 当然それはそれで良いんだけど、このまま同じように依頼を受け続けるとなると、どうしても体が鈍ってしまうんじゃないかと思ってさ。 魔法だって長い間使ってないと、腕が鈍っていくんじゃないか?」
知識も大事だが、出来るだけ戦闘経験も積んでおきたい、少なくとも鈍らない程度には、訓練をしておくべきだろう。
この新人期間が終われば、討伐依頼なんかも受けていく事になる、その時に備えておきたい、あわよくば、もう少し強くなっておきたい。
「悪くないアイデアだと思うよ、ギルドの中庭にあった訓練場、申請すれば使用許可が出るらしいけど、あそこを使って訓練すれば良いんじゃないかな?」
ミネが本を読みながら答えた。訓練場の話は知らなかった、そう言う事なら利用させてもらう事にしよう。
「うむ、私も剣の腕を磨いておかねばならんからな、訓練をすると言うのであれば賛成だ」
「今日はそれほど時間もないから、次の機会だな、アイザック達とも相談してみよう」
その後はアイザック達を待ちながら、4人で図鑑を読む事にした、ミネとアイラが、図鑑を指差しながら見たことのある動植物の説明をしてくれた。
時間が経つにつれて、冒険者達がギルドに帰ってき始めた、その中には、いくらか知っている顔もいる、そろそろアイザック達も帰ってくる頃だろう。
「よう、初依頼ご苦労さん、どうだった?」
仕事が終わり、帰って来たヤーセンさんに声をかけられた、今日はモリスさんは居ない様だが、モリスさんと一緒にいた狩人であろう男と一緒だ。
「お疲れ様ヤーセンさん、こっちは簡単な依頼だったよ、そっちは?」
「こっちも簡単な雑用だよ、まぁ、明日からはちょっと遠出しないといけないがな」
モリスさんのクランは、明日から暫くの間町を離れるらしい、今日の間に受けておいた依頼で、魔獣の討伐に向かうのだそうだ。
「ビッツ達は行商人の護衛に行ったんじゃ?」
「おうよ、今回は別行動だな、まぁ、無事を祈っててくれや」
そう言ってヤーセンさんは離れて行った、言われた通り、無事を祈っておく事にしよう。
「お待たせ、こっちも無事に終わったよ」
「殆ど立ってただけだけどな」
アイザックとカーズも帰ってきたようだ、アイザックが報酬をユチェに渡しながら、椅子に座った。
「お疲れさん、それじゃ宿屋に帰って夕食にするか」
ユチェ達がほんを返しに行っている間に、アイザック達に訓練場の話を伝える、アイザックの方も、暫くは戦闘経験を積めない事を懸念していたようだ。
訓練をするのであれば、大いに賛成だと首を縦に振った。
本の返却が終わったユチェ達を迎えて、宿屋に戻る事にする、正直地味な生活ではあるが、いまはコツコツと積み上げていくしかない。
ファンタジー溢れる世界でも、元の世界でも、そう言うところは似たようなものだな、と思いながら、席を立った。




