〜新人冒険者の日々〜その3
今日も朝から、広場でギルドが開かれるまで待つ、ビッツ達は行商人との仕事があるので、今日から1週間ほど町を出るらしい。
行き先はフアミ村らしいので、フロイド神父やカノン、ミアに宛の手紙を預かって貰う事にした。
「ようヒロ、今日からいよいよ冒険者生活だな」
ヤーセンさんだ、いつもの様にモリスさん達と一緒にギルドが開くのを待っている。
「まぁ、取り敢えず何でも受けられそうな依頼は受けてみるよ、新人には危険な依頼は受けられないんだろ?」
「おうよ、まぁ、初めは採取か雑用でも受けとくんだな、1、2ヶ月程真面目にやってりゃ、階級はすぐに上がるさ、そうなったら、うちのクランを宜しくな」
成り立ての新人冒険者は、ギルドからの信頼がまだ無いので、討伐依頼などは受けられない、難易度の高い採取や、冒険者の信用が大事な依頼なんかも、受けることが出来ない。
まずは簡単な仕事をきっちりこなして、信用させてみろという事だ。
ギルドが開かれて、冒険者達が中に入っていく、入り口付近で他のメンバーを待たせて、カーズと二人で掲示板に近づいていく。
「これ、これだ、取るぜヒロ」
カーズが先に依頼の紙を掲示板から外した、その紙を確認して、もう一度掲示板を見直す。
「もう一枚欲しいな、おっ、良いのがあった」
さらにもう一枚依頼の書かれている紙を、掲示板から取り外して、みんなの元に戻る。
「ねぇヒロ、ヒロはリーダーだからわかるけど、なんで一緒に依頼を選びに行くのがカーズなの?ってか、みんなで行っちゃ駄目だったの?」
「カーズはこう言う時、良い依頼を見つけるのが早いんだよ、頭の中で割りに合うか合わないか、計算が早いんだ。みんなで行くと、相談に時間を使っちゃうだろ?良い依頼は取られるのも早いだろうし、あんまり時間をかけたくなかったんだよ」
現時点で受けられる依頼なら、危険な事もそうそうないだろう、ならば依頼を決めるのは早い方が良いと判断した。
「それで、どんな依頼を持ってきたんだい?」
アイザックに依頼が書かれている紙を渡す。
「採取と、門の警備だな」
「なぜその二つにしたのだ?」
「採取はカーズが選んだ、一人頭の報酬が悪くないからじゃないかな、警備の方は、人数合わせとアイザックの将来を見越してだな」
採取依頼の受け付け人数が4人だったので、残りの依頼は受け付け人数が2人のものから選ぶ必要があった。
みんな依頼を受けたいだろうし、何より資金の問題もある、警備の依頼だったのは、アイザックにとっては運が良かった。
「ちょっとでも軍関係の仕事にって事だね、なんだか気を使わせちゃって悪いね」
「気にする様な事じゃ無いだろ、それで人数わけだが、アイザックとカーズが警備、残りが採取で良いか?」
「アイザック君はわかるけど、他の人選にも理由があるのかな?」
「まず、ユチェとアイラは女の子同士だから、一緒にいた方がやりやすいかなと思ってな、アイザックもカーズとの方が連携が組みやすいだろ」
それに、ユチェはギルドでずっと植物の図鑑を読んでいた、依頼に必要な植物の事も知っているかもしれない。
「うん、なるほど、確かにヒロ君にリーダーを任せておいて良さそうだね」
「なんだ?お眼鏡にかなったみたいで光栄だよ」
どうやら全員納得してくれたようだ、さっそく受付に依頼を受けに行く事にする。
「そっちは任せて良いなアイザック」
アイザックに依頼が書かれた紙を渡す、アイザックは任されたよと言い、カーズと受付に歩いて行った。
こちらも4人で受付に向かう事にする。
「すいません、この依頼を受けたいのですが」
「はい、少しお待ちください、確認しました、ではギルド証をお願いします」
首から下げているギルド証を外して、受付に置く。
「はい、確かに受理しました、採取道具の貸し出しは、あちらの受付に申請してください」
「ありがとうございます」
ハンコの押された依頼用紙を受け取り、ユチェに渡す。
「ユチェ、この植物はしってるか?」
これで知ってくれていれば、いちいち図鑑を借りる手間も掛からずに済む。
「知ってるよ、図鑑はじっくり読ませて貰ったからね、町のすぐ外に生育地が広がってる、食用の野草だね」
「頼りになるやつだなユチェは」
採取道具を借りてギルドを出る、露店が並んでいる大通りを門まで歩き、門番に町からの外出許可を貰う。
「ユチェ、方角はわかるか?」
「ちょっと待ってね、うーん、大丈夫、あっちだね」
「よし、では行こう、野盗が出ればすぐに知らせてくれ」
アイラが物騒なことを言い出した、こんな町のすぐ側で野盗なんか出てこないだろうとは思うが、やる気は有り余っているようだ。
「野盗は出ないだろうが、狼は出るかもな」
「この辺りに生息してるのかい?」
「村からくる時に何度か見かけたな、俺達の村はあっちの方にあるんだ」
村がある方向を指差す、ミネも自分の村がある方向を指差しながら、僕の村はあっちの方だねと教えてくれた。
しばらくの間歩き続けて、野草が生えていると言う生育地近辺に辿り着いた。
「あった、これだね」
ユチェが地面に生えている葉っぱを指差しながら言う、確かに依頼に書いてあった絵に似ている、見た感じ極々普通の草にしか見えないが、食べられるらしい。
「それじゃ、この辺りで野草狩りとしますか、あぁ、ギルド職員に言われたが、根こそぎ取っちゃ駄目らしいぞ、ちゃんといくらか残しておくように」
「うむ、承知した」
「了解したよ」
「はいはい」
ある程度採取したら場所を変え、またある程度採取したら場所を変えを繰り返して、ギルドで借りた籠の中に野草を貯めていく。
途中で休憩を挟み、昼食を食べ、また採取を繰り返す。
「農民にでもなったような気分だな」
「アイラは農民じゃなかったの?私は実家が農家だったから、こう言うのは慣れっこだよ」
「私は実家が道場なのでな、狩りはしていたが、農業の方は殆どやったことが無いのだ、冒険者らしくはないが、新鮮で良いものだな」
籠の中には既に大量の野草が入っている、この位集める事が出来たのなら、もう十分だろう。
「新人の仕事はやっぱり地味だよね」
「英雄になるには、地味なことの積み重ねも必要なんだよ、多分な」
「それなら頑張らないとね、英雄を目指して、野草を摘もう」
「やる気を出してくれた所悪いんだけどな、多分もう十分な量集まってるぞ」
ミネが籠の中を確認して、そうみたいだねと頷く。
ユチェとアイラにもう十分だと声をかけて、作業を止める事にした。
「後はギルドに戻って、報告するだけだな」
「簡単な依頼だったね、でも、こんなのを1、2ヶ月も続けるのかぁ、カーズじゃ無いけど、ちょっと地味すぎるよね」
「我慢するしかないな、どこでだって新人はこんなもんだよ」
久しく忘れていた、元世界での新人時代を思い出す、元世界の事も今となっては、そんな事もあったな程度にしか思わなくなってきている。
籠を背負い、町に向かって歩き出している、仲間達の背を追いかける事にした。




