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〜新人冒険者の日々〜その2

本日三本目です

 「キャスト、チャージ1、オールエレメント、4点だ」


 銀貨を積み上げていく、10枚しか貰わなかった銀貨も、既に30枚を超えた。

 どうやら今日の運勢は上々らしい、思わぬところで冒険者試験通過のご祝儀を頂くことが出来た。


 「なんでぇ、強えじゃねぇか、くそっ、今日はもうやめだ、また勝負を受けてもらうからな」


 そう言い残して男達は宿屋を出ていった、別のテーブルで雑談をしながら、カードゲームをしていた仲間達に、これ見よがしに銀貨を見せてやる。

 ユチェやアイザックは苦笑を浮かべているが、カーズは大喜びだ。

 カードを片付けて、銀貨を集めていると、ゲームが終わったのを確認したボンが、テーブルに近寄ってきた。


 「なんだヒロ、やったことあったのか?そこそこ勝ってるじゃねぇか」


 そう言いながら、手を出してくる。


 「あーなるほど、そう言うことですか」


 「察しが良いじゃねぇかヒロ、そう言う事だよ」


 つまり場所代を払えと言うことなのだろう、わざわざボンがカードゲームの事を教えてくれた理由がわかった。

 こんな風に宿屋や酒場に集まって、さっきのカードゲームで賭けをするのは、こちらの世界では一般的な娯楽の一つなのだろう、宿屋や酒場の店主は、場所を貸す代わりに、場所代を徴収出来ると言う事か。

 だとしたら、ボンがゲーム人口を増やしたい気持ちに納得がいく。


 「いくらです?」


 「特には決まってねぇさ、気持ちだよ気持ち」


 30枚を超えた、端数の4枚を渡しておく、ボンは満足そうにカウンターへ歩いて行った。

 こちらも他のみんなが座っているテーブルに戻る事にする。


 「どうよ?こんなもんだ」


 「あのねヒロ、たまたま勝てただけなんだから、調子に乗っちゃ駄目だからね」


 「わかってるって、負ける事もあるだろうさ、調子には乗らない」


 そう言ってテーブルに銀貨を置く、そろそろ夕方にさしかかってくる頃だろうか、もしかするとビッツ達もそろそろ帰ってくるかもしれない。

 折角ギャンブルで勝った泡銭だ、今日は全員分の夕食を奢ってやる事にしよう。


 「ユチェ、勝った金は使っちゃって良いか?」


 「え?無駄使いしたいの?うーん、まぁ良いんじゃないかな?」


 「それじゃ、今日の夕食は全員分、俺達が出すよ、好きに食べてくれ」


 「それはありがたいな、馳走になる事にしよう」


 「良いのかい?なんだか悪いね」


 ミネとアイラに気にするなと伝え、椅子には座らずにカウンターへ向かう。


 「ボンさん、あのカードゲームって、ルールはあれだけなんですか?」


 「うん?いや、そんな事はないぜ、使うカードは同じもんだが、ルールはかなり沢山あった筈だ、子供の遊びみたいなもんとか、色々あったはずだぜ」


 「へぇ、他にはどんなゲームや娯楽があるんです?村にはそう言ったものがなくて、仕事ばかりしてましてね」


 ボンにこの世界、正確に言えばこの町にある娯楽を説明してもらう事にした、冒険者として日々仕事に精を出すのも悪くはないが、人生を謳歌しようと言うのなら、多少の遊び心も必要だろう。


 「テーブルゲームなら、他には駒を交互に動かせて、相手の陣地を占領するゲームなんかがあるな、まぁ、こっちはあんまり冒険者に好かれてねぇかもな」


 ボードゲームもあるのか、将棋やチェスに近いものだろうか、陣地を占領と言っている所をみると、ちょっと離れている様な気もする。


 「へぇ、結構色んなゲームの種類があるんですね、それ以外には何が?」


 「代表的なもんって言えば、やっぱ音楽や劇じゃねぇか?この町には劇場が2つあってな、まぁ、デカい方は俺達にはあんまり縁のねぇ劇場だな、高貴な方々のいく様な場所だ、値段が高えからオススメはしねぇ。もう一つの劇場なら、入場料も安い、俺も気分転換に行ってるんだぜ」


 劇場があるのか、それは是非一度見てみたい、元

世界では殆ど行ったことが無い、それこそ、一度や二度程度の話だ。


 「音楽なら劇場じゃなくても、酒場に音楽隊を呼んでたりする事もあるな、うちの店じゃやってねぇが、探せばすぐ見つかるんじゃねぇか?後はやっぱり本だな、俺も読書家なんだぜ」


 「それならボンさんも、本を沢山持ってたりするんですか?」


 「いや、買うと場所を取るしな、値段も高いとは言わねぇが、それなら借りる方が金もかからねぇしな」


 「本を借りられる場所があると」


 「おう、町が管理してる施設があるぜ、すげぇ数の本があってよ、冒険者の証明証があれば借りる事が出来た筈だ、興味ありゃ行ってみるんだな」


 図書館みたいなものがあるらしい、中々どうして、この世界は文化面がかなりしっかりしている様だ。


 「なるほど、ありがとうボンさん、かなり為になったよ、今日の夕食は色々と注文させてもらうよ」


 「おうよ、じゃんじゃん食って、金を落としていってくれ」


 カウンターを離れてテーブルに戻る、タイミングよく宿屋の扉が開かれて、ビッツ達が帰ってきた。

 手をあげてビッツに挨拶をする。


 「おうヒロ、どうだった?って聞くまでもねぇか、しかしなんだ、賑やかだな、こっちの二人は?」


 「紹介するよ、試験で一緒になった、ミネとアイラだ。ミネ、アイラ、こっちはビッツ、後ろにいるのがリリィとマルクスだ、俺達の先輩にあたる冒険者達だな」


 ビッツ達とミネ達がお互いに自己紹介と挨拶を交わした、全員で同じテーブルにつくのは無理そうだったので、席を分けることにする。

 こっちの席は自分の他にビッツ、アイザック、ミネ、アイラの5人だ、相談事もあるのでこの分け方になった。


 「ビッツ達も夕食はまだだろ?さっきちょっとした収入があってな、今日は奢るよ、その代わりちょっと相談に乗って欲しいことがあるんだ」


 「なんだ?もうカードゲームを覚えたのか?あれは身を滅ぼすぜ?まぁ、奢ってもらえるならありがてぇ、遠慮なく食わせて貰うかな、それで、相談事ってのは?大体察しは付くけどな」


 ボンに夕食とお酒の注文を入れて席に着く、ミネとアイラの事や、今日の出来事をビッツに報告する。

 ビッツからは、今日の依頼の話なんかを聞かせて貰う事にした。


 「なるほどな、じゃあ、この二人もかなり腕利きって事か」


 「そうだね、二人ともかなり強いと思うよ、同じ依頼を受ける事になったら、頼れる戦力になるんじゃないかな?」


 「アイザック君に言われると嬉しいね、アイザック君が一番強いだろうからさ」


 「いーや、俺の方が強いね、今日はたまたま負けただけだ」


 「アイザック殿の方が強いだろう、槍の扱いに迷いがない」


 「おいおい、お前等、話が逸れてるっての、宿屋の話だが、俺は構わねぇよ、じゃあ、ミネが俺達の部屋で、アイラがリリィ達の部屋って事になるよな?ちょっと待ってろ、あっちの二人にも確認してくる、まぁ、駄目だとは言われないだろうぜ」


 ビッツが席を立ち、もう片方のテーブルへ向かう。

 ミネとアイラは内心緊張していたのだろう、今は緊張も解れて、ホッとした表情を浮かべている。


 「良かったな二人共、住む所には困らなくて済みそうだぞ」


 「うむ、感謝する、宿舎の方はどうにも肌に合わなさそうだったものでな」


 「ヒロ君達は宿舎の説明聞いたかい?結構決まり事が細かいんだよね、息が詰まりそうな雰囲気だったよ、気にしない人は気にしないんだろうけど」


 ビッツが別のテーブルから帰ってくる、親指を立てて笑顔を見せている。


 「オッケーだぜ、それじゃ、新たな仲間達に乾杯だ、ほら」


 木のジョッキで乾杯をする、ここまでくれば、ミネとアイラの仲間入りも、確定した様なものだろう、別に反対する理由もない。

 明日からはいよいよ冒険者として依頼を受ける事になる、本当の意味での冒険者生活が始まるのだ。

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