〜新人冒険者の日々〜その1
本日二本目です
ギルド職員による、冒険者講座はかなり時間を取って進められた、冒険者への注意事項や、ギルドでの決まり事はかなり多い様だった。
説明が終わり、その日は以上という話になった、新たに冒険者になった若者達が、ぞろぞろと部屋の外へ出ていく。
「ヒロ君たちは宿舎の申請にいくのかい?」
ギルド職員の話では、この後受付で冒険者用の宿舎を希望する者達を募っているらしい。
既に宿屋と契約を結んでいる身としては、関係のない話だった。
「いや、俺達はもう住み込み先を見つけてるんだ」
「むっ、詳しく聞かせてもらいたい」
ミネを食い気味にアイラが興味を示してきた、2人に今借りている宿屋の説明を済ませる。
「なるほど、まだ部屋は空いていたりするのだろうか?一人部屋などはあったりしないだろうか?」
「ちょ、落ち着いてくれ、宿主に聞いてみない事にはわからないな」
「なぁ、あの部屋って全室3人部屋だっただろ?あと二人入れんじゃねぇの?」
「そこはビッツ達に相談してみない事には、なんとも言えないな、取り敢えず昼時になってるし、宿屋に戻って食事をしながら話さないか?」
6人でギルドを出て宿屋に向かう、歩きながら話をしたが、どうやらアイザックとミネは気が合うらしく、かなり楽しげに話をしている。
こっちはアイラから剣術の流派の話や、アイラ自身の話を聞かせてもらう事にした。
話の途中で宿屋に到着した、ボンに人数分を昼食を注文してテーブルにつく。
「じゃあ、アイラは自分の家の流派を広げるために冒険者になったのか」
「うむ、自らの力を試したい気持ちと、実家の流派の宣伝を兼ねてな、冒険者として名前が売れれば、使っている流派の名前も売れるというものだろう」
「門下生は何人くらいいるんだ?」
「少ないさ、有名な流派ではないのでな、しかし、有名にさせる心持ちだ」
なかなか野心の強そうな話だ、それを悪い事だとは思わない、目標があるというのは良いことだ。
「みんなは何か目標があるのか?どうして冒険者になったのだ?」
アイラがみんなを見回しながら訪ねてきた。
「金だな、金持ちになりてぇ、実家の家族にも楽させてやりてぇしな!」
「自分の知らない世界を見て回りたいんだ、知らない事をいっぱい知りたい」
「騎士になりたいんだ、子供の頃からの夢でさ」
「物語の英雄に憧れて、いつか僕もそんなふうになりたいと思ったんだ」
それぞれがそれぞれの理由を語り始めた。
「俺はそうだな、なんとなくこんな生き方も良いかなって思っただけだよ、知りたい事もあるんだけどね、今となってはどうだろう、知ることが出来たら良いな位にしか思ってないかもしれない。目標って言って良いのかはわからないけど、全員で生きて、全員で帰ってくる、それが目標かな。気の知れた仲間達と、人生を謳歌してみたいだろ?誰も欠かすことのなくさ」
なんだか語ってしまった、少し気恥ずかしい気もするが、特に笑われたりするような事はなさそうだ。
食事を取りながら話を続ける、明日からの依頼の事から、どうでもいい様な事まで、話題は尽きない。
話をしていると、ボンが何かを持ってこっちに近づいてきた、良く見るとカードの束の様なものだった。
「お前ら、もちろん冒険者試験には受かったんだろ?じゃあ一つ、冒険者に欠かせねぇもんを教えてやるよ、へっへっへ」
なんだか悪そうな笑いだ、聞くまでもなく冒険者に欠かせないというような話ではないだろう、しかし、興味はある、黙って話を聞く事にする。
「ほれ、こいつは冒険者なら誰でも知ってる、カードゲームだ」
カードの束は、トランプの様にも見える、1〜9までの数字と、3種類のマーク、火と水と風のマークだろうか、それに剣、槍、弓、斧が描かれている、数字の書いてないカードが、それぞれ4枚ずつ入っている様だった。
ボンがルールを細かく説明してくれた、簡単に言うと、麻雀の様なゲームだった、手札が11枚の麻雀だ、揃った手札によって点数が変わるのも麻雀みたいだなと感じる。
「ちょっとヒロ、これ絶対ギャンブルだよ、良いの?」
ユチェは難色を示していたが、逆にカーズの目はキラキラと輝いている、カーズの思う冒険者像にはギャンブルを嗜むなんて事も入っているのだろう。
「なるほど、ルールは理解出来ました、点数表みたいなものはあるんですか?」
「おう、ベーシックなのはこんな感じだ、まぁ、細かいルールなんかは、場所によってちょっと変わったりするからな、それはその都度確認するしかねぇな」
「ちょっとやってみるか、3、4人でするゲームらしいから、2グループに分かれよう、ボンさん、もう1セット分カードはありますか?」
「おうよ、もちろん」
ボンがもう1セット、カードの束を持ってきてくれた。
「ま、待ってくれ、これはその、金を賭けてやるのか?実はその、言いにくいのだが、路銀が心許なくてな」
アイラの財布の中身は寂しいらしい、かなり気恥ずかしそうに打ち明けてくれた。
「いや、遊びでやってみるだけだ、ルール確認だよ」
「のめり込まないでよ?特にカーズ、絶対駄目だからね」
「なんで俺なんだよ!?ヒロの方が乗り気じゃねぇか」
「なんだか心配なの、カーズはこう言うので身を滅ぼしそうな気がするからね」
2グループに分かれて暫くの間カードゲームを楽しむ、やればやるほど麻雀みたいなゲームだと思う。
始めは少し抵抗を見せていたユチェだが、続けているうちに段々と笑顔になっていった、しかも強い、頭を使うゲームは得意なのだろう。
「キャスト、それだカーズ、剣が2枚、火の1〜9、チャージは無し、フレアストレートで5点だな」
「なんだよヒロ、強くねぇか?やった事あるんじゃねぇの?」
「さっきから好調だねヒロ君」
「似たようなゲームを知ってるんだよ、ずっとやってた時期があってな」
もう一組の方を見ると、ちょうどユチェが勝っているところだった。
随分長いことゲームをしていたように思う、そろそろこんなものにしておくかと思っていると、他のテーブルで同じようにカードゲームをしていた男に話しかけられた。
「なぁこっちで一人メンバーが欠けちまったんだ、金を賭けてゲームが出来る、勇敢な奴はお前等の中にはいねぇか?」
「悪いな、冒険者になったばかりで、金には余裕がないんだ、他所を当たってくれ」
「おぉ、そりゃ残念、まだヒヨッコだったか、金がなけりゃ勇気もねぇわな」
「あんだと?」
「カーズ」
安い挑発だ、カーズを止める、だが、このおっさんを痛い目にあわせてやりたい気持ちはわかる。
「そうそう、駄目だからねカーズ、放っておくのが一番だよ」
ユチェが小声でカーズを諫め、椅子に座らせる。
「ルールはこちらに合わせてもらう、レートは?」
「ちょっとヒロ!?なんの為にカーズを止めたの!?」
「良いねぇ!それでこそ冒険者だ、レートは銀貨1枚でどうだ?参加人数は4人、足りねぇのは一人だ」
「頼むよユチェ、ちょっとは余裕があるだろ?大丈夫だって、勝ってくるから」
「えぇー、負けたらヒロだけ暫くはお小遣い無しだからね」
ユチェから銀貨を10枚受け取り、相手のテーブルに着く。
「初心者なもんでお手柔らかに、カードは向こうのテーブルで使ってたものを持ってきた、こっちを使わせてもらう」
「へっへっへ、なんだしっかりしてやがるじゃねぇか、イカサマなんてしねぇよ、始めようぜ」
「お前、新人冒険者なんだって?じゃあ今日の試験で冒険者になったのか?俺も元々冒険者だったんだ、今じゃ職人だがね」
ごろつきかと思ったが、そう言うわけでもないらしい、適当に挨拶を返してゲームに集中する事にした。




