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〜新人冒険者へ〜その16

 「それでは、始めて下さい」


 お互いにある程度まで歩いて距離を詰める、そこから一気に走り出した、まずは牽制だ、右手に持った斧を投げつける、狙いは侍ガールだ、アイザックに投げたところで、効果がないだろう事は分かりきっている。

 素早く剣を右手に持ちかえる、斧は木刀で叩き落とされたが、侍ガールの足は止まった。


 「ミネ!合わせられるか!?」


 アイザックの真正面に出る、待ってましたと言わんばかりの鋭い突きだ、その突きに合わせて剣を振り抜く、木と木が激しくぶつかる音が中庭に響く。

 素早くミネが後ろから切り掛かる、アイザックの槍は止めている、これで決まれば楽なものだが。


 「一気に来たね!でも!」


 力押しに剣を弾かれる、そのまま流れる様な動きでミネの斬撃を受け流した、だがミネも負けてはいない、そのまま距離を詰めて斬撃を繰り返す、二本の剣から繰り出される素早い連続攻撃だ。


 「なかなかやるじゃないか!」


 アイザックが槍を素早く繰り出し、ミネの斬撃を全て落としていく。

 アイザックの後ろから侍ガールが飛び出してきた、ミネを狙っている様だ、すかさず援護に入る。


 「もらった!」


 「もらってないんだな!」


 木刀と木の剣がぶつかる、斬撃が出鱈目に速い、受け切るのがやっとだ、重くは無いのが救いだった。

 だが、切り返しが速い、腰のナイフを素早く抜いて切り返しを受ける、そのままこちらも剣を切り返すが、後ろに飛び退かれて避けられてしまった。

 同じように斬撃を捌き切られたミネが、真横に並び立ってきた。


 「君の仲間、アイザック君だっけ?なかなか厄介な相手みたいだね」


 「だろ?こっちの侍ガールもなかなか曲者みたいだ」


 息を整え剣を構え直す、デキストの方はもう勝ってくれる事を祈って放置するしかない。

 援護に行こうにも、こっちはこっちで手一杯だ、援護に行った隙を見逃してくれる様な相手でもないだろう。


 「さぁどうするヒロ、言った通り、この子は強かっただろう?」


 「そうだな、お前より強いかもなっ!!」


 そう言いながらナイフを投げつける、ナイフを追いかけるように一気に走り込む。

 アイザックが槍でナイフを叩き落とした、その槍を剣で押さえ込む。


 「ミネ!」


 間髪入れずに、ミネがアイザックに切り掛かる、侍ガールがフォローに入ろうと動き出した。

 槍を押さえたまましゃがみ込み、ナイフを拾い上げ、そのまま侍ガールの方へ突っ込む。

 斬撃の軌道を読めば、そこにナイフを構えておくだけで木刀を受け止められる筈だ。


 「甘い!」


 直前で軌道を変えられた、体を捻りなんとか躱す、返しの斬撃が速い、かろうじて剣で受け流す。

 体勢が崩されてしまった、ミネの方を確認している余裕が無い、侍ガールが追撃をかけてくる。

 ナイフを投げつけて牽制する、刀で打ち払われてしまったが、その間に体勢を立て直すことが出来た。

 後ろからはアイザックとミネがやり合っているのだろう、木と木がぶつかり合う音が聞こえてくる。


 「やるじゃないかお嬢さん、剣術は何処で習ったのかな?」


 「試合中にお喋りとは余裕だな、試合が終わった後にでもゆっくり語らせてもらおうかっ!」


 侍ガールが突っ込んでくる、素早い斬撃が何度も襲いかかってきた、剣を使い弾き、受け流し続ける。手数が多い、受けきれない、だが少しは慣れてきた、受けきれない分は躱す。

 身体のすぐそばを木刀が掠めていく、当たれば痛いじゃ済まなさそうだ、更に集中して斬撃を捌き続ける。


 一度距離を置き、後ろをチラリと確認する、どうやらミネも押され気味の様だ、苦戦しているのであろう声も度々聞こえてくる。

 出来る限り早く援護に向かった方が良いだろう、こちらも勝負に出る必要がありそうだ。


 剣を低く構えて突っ込む、散々アイザックと相手をして見てきた突進突きだ。


 「玉砕覚悟か?迂闊だな!」


 そうだ、突進突きは受けるより躱したい、剣を使ってるならそう考えるだろう、その後は突進に合わせてカウンターを決めたくなる、同じ様に考えてくれる筈だ。

 思った通りに動いてくれる、侍ガールは突きを避けようと横に逸れた、そのまま木刀を引いて、横薙ぎで斬り抜こうとする、ここだ。


 「ここぉ!」


 強引に突き出していた剣を振り下ろす、上手い具合に木刀の腹を叩き落とした。


 「誘われたっ!?」


 そのまま体を一回転させて侍ガールの後ろに回る、いくら速いと言っても、その状況からなら体勢を立て直している時間などない。

 振り返ろうとしたときには、こちらの剣が鼻先に突きつけられていた。


 「ま、まいった」


 その言葉を聞き、剣を引く、アイザックとミネの方を見ると、ミネは座り込み、アイザックは槍を肩にかけてこちらを眺めていた。

 あちらもいつの間にか勝負が決まっていたようだ。


 「助けに来なくても良かったのか?」


 「模擬戦だしね、邪魔しちゃ悪いかと思ってさ、実戦ならもちろん助けに入っていたけどね」


 もう一組の方もチラリと確認する、あちらはまだ戦い続けている様だ。


 「余裕だな、足元を掬われるぞ」


 「是非とも掬ってみて欲しいね、出来るものなら」


 ナイフを拾い上げ、アイザックの方へ近づいて行く。


 「それじゃお待ちどう、そっちも準備良いか?」


 「いつでもどうぞ」


 アイザックを見据えて武器を構える、アイザックも同じ様に槍を構え直した。

 一呼吸おいて一気に距離を詰める、突いて来た槍をナイフで受け流し、そのまま距離を詰める。

 アイザックは回りながら後ろに下がり、遠心力を使って槍を大きく振り回してきた。

 剣を使い槍を受け止める、激しい衝突音が中庭に響く。


 「そこまで!」


 ギルド職員の声が試合の終了を告げる。

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