〜新人冒険者へ〜その14
翌朝、昨日と同じ様に朝から準備を済ませると、朝食を宿屋で取ってから、ビッツ達と一緒にギルドへ向かった。
今日は休日だった筈だが、ギルドや冒険者にはあまり関係がないようだ、とは言え、昨日に比べるとほんの気持ち程度は、ギルドが開くのを待っている冒険者が少ない気がする。
「ビッツ、冒険者には休みがないのか?」
「冒険者なんだから、好きに働いて、好きに休めば良いんじゃないか?まぁ、金の問題が付き纏うからな、結局は休んでばかりも居られないけどな」
どこの世界でも、貧乏暇なしと言うのは変わらないようだ、全く世知辛い。
そうこうしている内にギルドが開いた様だ、冒険者達がゾロゾロと中に入っていく。
「それじゃ、俺達も行こうか、まずは受付だね」
「多分それであってると思うけどな、行ってみるか」
4人で受付に向かう、新人試験を受けに来た事を伝えると、名前を確認された。
それぞれ名乗った後、受付の女性は机の引き出しの中から紙を取り出し、こちらに渡してくれた。
「そちらが皆さんの受験証です、それを持って、試験開始まで暫くお待ち下さい」
「あちらのテーブル側で待っていても?」
「はい、ギルド内でしたら何処でも構いません」
依頼を受けにくる冒険者達の邪魔にならないように、テーブル側に移動して待っておく。
同じ様に試験を受けに来た人達だろうか、何グループか同じ様な紙を持っている若者が、所々に待機している。
依頼が決まったビッツ達が、出かける前に声をかけてきてくれた、見送った後、更に暫く待つ。
冒険者の数が減った頃、受付の人が試験参加者を呼びに来てくれたので、その人に着いてギルドの奥に進んでいく。
部屋の中に通されると、そこにはテーブルがヅラっと並んでいた、テーブルの上には、何かの用紙とペンにインクが置かれている、どうやら筆記試験があるらしい。
「皆さん、お好きな席にどうぞ、席に着いたら、受験証をテーブルの上に置いてください」
適当な席に座り受験証を置く、用紙にはチェックリストの様なものが書かれていた。
「では、今から受験者の名前を読み上げますので、名前が呼ばれたら、返事を返してください」
順番に名前が呼ばれていく、返事を返しながら耳を傾けておく、どうやら受験者は全員で20人いる様だ。
「全員揃っている様ですので、これより試験を開始します、まずは筆記試験です、テーブルの上の用紙に、チェックリストが書かれていると思います、ご確認下さい」
改めて用紙を確認する、不備は無さそうに思う。
「よろしいですか?ではこれより問題文を読み上げていきます、その問題が合っていると思ったなら左に、間違っていると思ったなら右にチェックを入れていってください」
所謂マルバツ問題か、初めから用紙に問題が書かれていないのは、文字が読めない者に考慮しているのだろう。
順番に問題が読み上げられていく、極々一般的な常識問題だ、そうそう間違える事は無いだろう。
全部で30問程度あった、おそらくは間違いも無いはずだ。
「では、受験証をテーブルの上に置いたまま、退室してください、外で職員が待っているので、その職員に着いて行ってください」
言われた通り外に出る、外では職員が待っていて、次の試験場に案内してくれた。
更にギルドの奥へ行くと中庭に出た、訓練所の様にも見える、端の方には木で作られた武器が、収納棚に立てかけられいた、かなりの種類と量が揃っている様だ。
「それでは、名前を呼ばれた者から順に、こちらの魔石を握りしめて、魔力を送り込んでください」
次は魔力試験のようだ、実際に魔法を使うのかと思ったが、そう言うわけではないらしい、あの魔石が魔力を量る役割でも持っているのだろう。
「遂に来たか、見てろよユチェ、あの魔石を木っ端微塵にしてやろう」
「出来るわけないでしょ、急にどうしたの?」
「そう言うセオリーなんだよ、なんと言う魔力だ!こんな魔力の持ち主は見た事が無い!って驚いてくれ」
呆れ顔のユチェを置いておいて、名前が呼ばれるのを待つ、順番に魔石に魔力を込めている様子を見ていると、どうやら魔石の光り具合で、魔法の練度を調べている様だ。
殆ど光らない者から、そこそこ光っている者もいる。
カーズの名前が呼ばれた、うちのパーティの一番手はカーズだ、度肝を抜いて来る事を期待する。
「おっし!俺の番か、行ってくる!」
カーズが魔石を受け取り、集中して魔力を込め始めた。
魔石はぼんやりと光を放っている、まぁそんなものだろう、予想通りだが、期待外れだ。
「お疲れ様、良い方だと思うけどね」
「お手本見せてあげる、よく見てなさい」
名前を呼ばれたユチェが前に出て魔石を受け取る、目を閉じて深呼吸した後、握られた魔石に意識を集中させる。
魔石が強い輝きを放ちだした、流石は魔法担当、他の受験者達からもざわめきが聞こえて来る、試験官をしているギルド職員からも、お褒めの言葉を頂けたようだ。
「ふっふーん、こんなもんよ」
「やるじゃないか、それじゃ、魔石を木っ端微塵にしてきてやるかな」
「先に俺みたいだよ、ユチェの後は気が引けるけど、仕方ないかな」
アイザックも魔石の光り具合は良い方だったが、ユチェに比べると地味だ、魔法メインではなく、近接戦がメインな事を考えると、大したものだと思う。
さて、いよいよ順番がまわってきた、魔石を受け取り、しっかりと握りしめる、意識を集中させ、魔石に魔力を注ぎ込む。
上々の光り具合だとは思うが、ユチェのものよりは劣るだろうか、受験者の内の何人かは感心した様子だが、ざわめきが起こる程では無かった。
「お疲れ様でした、素晴らしい練度ですね」
魔石を返してアイザック達の元へ戻る、わかってはいたが、残念ながら木っ端微塵とはいかなかったようだ。
「お疲れ様、良い感じだったんじゃないかな?」
「魔石が木っ端微塵になる予定だったんだがな」
ユチェの方をチラっとみると、勝ち誇った顔をこちらに向けていた、模擬戦で当たったら絶対泣かせてやろう。
魔石での試験も終わり、暫くこの場で待つように指示があった、受験者の中ではユチェが最も魔法の練度が高そうだ、実際に魔法を使っている所を見れば、また印象も変わって来るのだろうか。
「お待たせしました、では最後の試験に移りたいと思います、最後の試験はグループ対グループの模擬戦になります。今回の受験者は全員で20人ですので、4対4を1試合、3対3を2試合行います。名前を呼ばれた方は、あちらの棚から好きな武器を選び、広場の中央で準備を整えて下さい」
順番に名前が呼ばれていく、さっそくカーズとユチェの名前が呼ばれた、二人は同じグループになった様だ。
試合は4対4から先に済ませるらしい、待機場の様な場所から試合を観戦させてもらう事にする。
周りを見渡すと、何人か見物客も来ているようだ、年配のギルドの職員であろう人や、軍の関係者であろう服装の人もいる。
「ヒロ、始まるみたいだよ、二人はどうなるだろうね」
「大丈夫じゃないか?魔法を使えなくても、ユチェは十分戦えるし、カーズだって攻めるのは得意じゃなくても、弱いわけじゃないさ」
ギルド職員の合図で、模擬戦が始まった。




