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〜新人冒険者へ〜その12

本日二本目です

 まだ何人かの冒険者達が、掲示板の前で集まっていた、それを尻目に受付に向かう。

 よく考えたら、まだ冒険者登録が済んでいるわけではないので、本を借りる事は出来るのだろうか。

 迷っていても仕方ないので、ダメもとで受付に聞きに行ってみると、本来は貸し出せないのだが、今回は見逃してくると言ってくれた。

 昨日ここへ試験の受け付けに来た時に、顔を覚えていてくれたらしい、ありがたい話だ。


 ユチェと2人で話しながら、本のページをめくっていく、割と細かいところまで書かれている図鑑だ、この情報を持っているか持っていないかで、討伐の難易度も随分変わってくるだろう。

 おそらくはそういう事も意図して、本の貸し出しをしているに違いない、ギルドや国からしても、冒険者には無駄に命を落としてほしくは無いはずだ。


 「ヒロってさ、やっぱり元の世界にいた時も、何かと熱心だったの?」


 「んー?いや、そんな事なかったな、適当に生きてたよ、今思うと、もっと熱心に生きとけば良かったな」


 元世界ではここまで物事に対して、真面目に取り組んでいなかったように思う、今更な話ではあるが、もっと色々な事に挑戦してみても良かったかもしれない。


 「ふーん、そうなんだ、ねぇ、やっぱり帰りたい?」


 「どうだろうな、もうこっちでも大事なものいっぱい出来たからさ、向こうに残してきたものもそりゃ多いけど、どっちがより大事かって、もう決められなくなっちゃってるな」


 初めの頃は、帰れなかったから、こっちで生きていく方法を探すしかなかった、今はどうなのだろう、もし帰る事が出来るのだとしても、帰る事を選ぶのだろうか。

 今はせめてもう少し、この先の人生を見てみたい気がする。


 「ふーん、ヒロがこの世界の事好きになってくれて良かったよ、今ヒロに居なくなられると、困っちゃうもんね」


 これは、まさかそうなのか、ユチェ、まさかとは思うが、そう言う事なのか。


 「ユチェ、さては俺に惚れたな?」


 「何言ってんの?馬鹿じゃないかな?」


 目が全く笑っていない、どうやら照れ隠しとかじゃ無いみたいだ、元の世界にいた時から、女心という奴は全く理解できない、それはこっちの世界でも変わらないようだ。

 今は女心の勉強をするよりも、この世界の動物の勉強を進める事にする、この二度目の人生が終わるまでには、そっちの勉強もきっと進んでいる事だろう。


 「ねぇヒロ、そろそろお腹空かない?本を読むのに夢中になってて気が付いてなかっただろうけど、昼の鐘が鳴ってから随分経ってるよ」


 「本当か?全く気が付いてなかった、そう言われてみれば、お腹空いてるな、よし、何か食べに行こうか」


 いつの間にか、かなり時間が経っていたらしい、受付に本を返しに行って、ユチェと一緒にギルドを出る。

 宿屋に戻って食事を取っても良いが、どうしたものだろうか。


 「ヒロ、露店回ろうよ、食べ物も飲み物も沢山あったよね?」


 「良いね、そっちの方が楽しそうだ」


 宿屋ではなく、露店通りの方へ向かう、昨日は雑貨の買い物に使ったが、今日は遅めの軽い昼食を取るために使う。

 何かの串焼きだ、これは昨日も食べた、相変わらずちょっと堅く、味が濃い。

 謎の緑色をしたスープ、野菜のスープだろうか、飲んでみるとほのかに甘い、コーンポタージュに近い気がするが、少し青臭さが鼻に抜ける。

 揚げた餅パン、ドーナツみたいな物かと思ったが、中に粗挽きにされた肉と、野菜を炒めたものが入っていた、肉まんの親戚だ。


 目につくものを幾つか食べ歩いていると、お腹もいっぱいになってきた、こんなものにしておくべきだろう。


 「さて、これからどうするかな」


 「またギルドに行って本でも読む?」


 「それも悪く無いんだけどな」


 特にする事も決まらずに、取り敢えず露店からギルドの方へ向かって歩き出す、広場まで戻ると、教会の前に人が列を作っているのが見えた、喜ばしい事ではないが、どうやら教会は大盛況らしい。


 「あー、病人と怪我人かな?教会には世話になってるから、ちょっと手伝って行こうか、ユチェ大先生の回復魔法のお力を、久々に見せてもらおうかな」


 「えぇ、回復魔法かぁ、でも、うん、そうだよね、やっぱりそっちも練習しないとだしね」


 並んでいる町の人達に頭を下げながら、教会の中へ入っていく。

 教会の中では、ダディ神父や他の神官達が、忙しそうに動き回っていた。


 「神父様、お忙しい様ですね、お手伝いしますよ」


 「おぉヒロか助かるわ、どうも今日は怪我人が多くてな、回復魔法が使えるなら、すまんが少し手伝っていってくれんか」


 他の神官達に混じって、町の人達の治療にあたる、念のためにユチェにはすぐ隣で治療にあたらせる事にした。

 町の人達に体の何処が悪いのか聞き、回復魔法をかけていく、外傷ではなく病気などの治療は少し難しい、なんと言っても症状が見えない、何処まで回復魔法をかけ続ければ良いのかは、直感で判断するしかない。

 出来るだけ外傷の治療をユチェに回して、病気であろう者の治療を担当していく、村での経験が生かされる場面だった。


 「ユチェの回復魔法も、昔に比べれば上手くなったよな」


 「そりゃね、回復魔法がって言うより、魔法を使うのが上手くなったって感じだけどね」


 周りも段々と成長していってるんだと思う、置いていかれないように、自分も頑張っていかなくてはならないだろう。

 休み休み治療を続けて、ようやく残りはあと僅かだと言う所まで来た、後は任せておいても大丈夫だろう。


 「神父様、そろそろ人が減ってきたので、俺達もこの辺りで失礼します」


 「ふむ、ちょっと待っておれ」


 ダディ神父は教会の奥へと消えていった、そのまま待っていると、小さな壺と袋を持って戻ってきた。


 「今日の礼じゃよ、茶と菓子じゃ、みんなで食うと良い」


 「ありがとうございます、みんなで頂きます」


 思わぬ報酬を受け取ってしまった、後で宿屋ででもいただく事にしよう。

 ユチェと教会を出ると、陽は既に傾き始めている、言ってる間に夕方になるだろう。

 そろそろ宿屋に戻っても良いかもしれない、夕食までにはアイザック達も宿屋に帰ってくるだろう。

 ユチェと二人、宿屋に向かって歩き出した。

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