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〜新人冒険者へ〜その11

 少し寝不足ではあるものの、朝はすっと起きる事ができた、この町では謎の鳴き声を発する生物はいない様だが、今までの生活習慣が体に馴染んでいた様だ。

 他の2人が寝ているベッドを見ると、どうやら2人も目を覚ましたらしい、この2人も謎の鳴き声を目覚まし代わりに使っていたのだろう。


 「おはようヒロ、こうしてみんなで同じ部屋に泊まるのは楽しいね」


 「俺はお前のおかげで若干寝不足だがな」


 昨日の夜はアイザックと遅くまで話し続けていた、一緒の部屋でみんなで寝ると言うのが楽しかったのだろう、変なところで子供っぽい奴だ、人の事はあまりいえたものではないが。

 カーズの方は2人で話しているうちに、さっさと寝てしまった、周りが多少騒がしくても眠れるタイプらしい、冒険者としては優秀な才能ではないだろうか。


 「ビッツ達はもう起きてるかな?取り敢えず準備をしておくか」


 ギルドに行く準備を整えて部屋を出る、一階に降りると、既に朝の仕込みを終わらせていたボンが出迎えてくれた。


 「ボンさん、ビッツ達はもうギルドに行っちゃったかな?」


 「あぁん?まだ起きてきてねぇな、もう起きてくる頃だとは思うがな」


 冒険者は朝一番から、ギルドに詰め掛けるイメージがあったが、そう言うわけでもないようだ。

 ボンさんに朝食を頼んで、食べながら待っておく事にする。

 今日の朝食はスクランブルエッグらしきものと、餅パン、野菜系の入った透明なスープに、何かの果物だと思われるものだった、料金からすれば悪くないんじゃないだろうか。


 3人で雑談をしながら食事を取っていると、2階からビッツとマルクスが降りてきた、あまり急いでいる様子は見えない。

 お互いに挨拶をすませると、2人はボンさんに朝食を頼んで、同じ席についてきた。


 「ビッツ、ギルドには早く行かなくても良いのか?」


 「ギルドにはまだ入れないぞ、朝の鐘の音が鳴ってからじゃないと、ギルドの門は開かれないからな」


 どうやらこの町には、時間の目安になる様に、1日に3回、鐘を鳴らせる時間があるらしい。

 朝に一度、昼に一度、夕方に一度だそうだ、そう言われてみると、昨日も何処かから鐘の音が聞こえていた気がする。

 更にしばらく待っていると、ユチェとリリィも姿を表せた、全員で同じテーブルを使い、食事を取る。


 食事が終わる頃に、丁度良く朝の鐘の音が鳴った気がした、ちょっと聞こえにくかったが、確かに鳴っている様だ、もうちょっと音を大きくしても良いんじゃないだろうか。


 「さて、それじゃ行くか、鐘の音が鳴っても、ギルドが開くまでにはまだ余裕がある、まぁ、このタイミングで宿を出れば、遅れる事は無いはずだ」


 ビッツ達に着いて宿を出る、向かう先は当然ギルドだ。

 脇道から大通りに出て歩いていると、他の冒険者であろう人達も、同じ様にギルドに向かっているのが見えた。

 ギルドの前に着くと、かなりの人数の冒険者が既に集まっていた、ヤーセンさんや、モリスさん達もいる様だ、今後世話になるだろうから、ちゃんと挨拶をしておく事にする。


 集まって話をしながらギルドが開かれるのを待つ、その間に周りを見渡していると、フアミ村で見た顔を見つけた。


 「アイザック、あそこに立ってる男、ギグさんじゃないか?」


 「あぁ、フアミ村に来てた冒険者の、そうみたいだね」


 正直言ってあまり印象はよくないが、だからと言って、一応はちゃんと村を救ってくれた恩人でもある、挨拶くらいはしておくべきかもしれない。


 「一応挨拶しておくか、アイザック達はここにいてくれていいぞ」


 ヤーセンさんはあまり良い顔をしなかったが、礼儀を欠くのは良くないだろう、ひとまず一人で挨拶をしに行く事にした。


 「ギグさん、お久しぶりですね、フアミ村の時はお世話になりました」


 「あぁん?おう、お前あの時の冒険者志望か、俺達は仕事をしただけだよ、それよりお前、冒険者になりに来たんだろ?どうだ、うちのクランにはいらねぇか?っても、まだ見習いの間はクランに入っても意味ねぇんだけどな」


 「そうなんですか?」


 「おう、新人は討伐依頼も受けられねぇからよ、まずは採取だとか、警備だとか、掃除や手伝いなんかで階級を一つ上げねぇとな」


 なるほどおそらく、ギルドとしては冒険者に成り立ての者は、信頼が置けないだとか、そんな理由でもあるのだろう。

少しの間だけ雑用をこなして貰い、まずは信頼に値する人物かどうか、見極めなければならないだとか、そんな所だろう。


 「なかなか面倒だろ?まぁ、基本的にギルドってのはお堅いんだよ、おっと、そろそろギルドが開くぜ、まぁ、また話そうや」


 そう言ってギグは行ってしまった、思ったほど悪い人ではないのかもしれない、だからといって、良い人だとも思えないが。

 ギルドの門が開かれていく、みんなと合流して、ギルドの中に入っていく。


 掲示板の前ではいち早く入っていった冒険者達が、依頼を吟味していた。

 わかってはいたが、早い者勝ちであるらしい、そうは言っても、依頼によっては命に関わるものや、日数がかかるものもある、色々考えなくてはならないことも多いのだろう。


 冒険者達が、仲間内で色々相談しながら、どの依頼を受けるか決めている、その様子はまさに想像していた冒険者像そのままだった。


 「何ニヤついてんの?ちょっと怪しい人みたいだよ」


 「怪しくは無いだろ、いや、ちょっと面白くってな」


 「ふーん、変なの」


 受ける依頼を決めた冒険者達が、順番に依頼の書かれている紙を受付に持っていく、もう数日もすれば、あそこに自分達も混ざる事になるのだろう。

 チラリとモリス達の方を見ると、クランのメンバーを集めて何やら話し合いをしているようだ。

 近くに行って話を聞いてみると、どうやら誰がどの依頼に行くかを相談している様だった。

 モリス達3人で1つ、ヤーセンさんとマルクスで1つ、ビッツとリリィで1つの依頼を受けることに決まったみたいだ、なるほど、クランはこう言う時には確かに便利そうだ。


 依頼を受けてきたビッツ達が、ギルドを出ていくのを見送る、ここから先は自由行動の予定だ、アイザック達に、暫くギルドで本を読んでいくと伝える。

 ユチェも同じ様にギルドに残って本を読んでいくらしい、アイザックとカーズは町を見回ってくると言っていた、後で何を見てきたのか聞かせてもらうとしよう。

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