〜見習い冒険者へ〜その10
「君達がヤーセンやビッツの言っていた子達だね?始めまして、私の名前はモリス、モリス・ターツだ、このクランのクラン主をしている」
「始めましてモリスさん、俺はヒロ・ラルフレンです、まだ冒険者にもなってませんが、話によるとクランに勧誘したいだとか?」
「話が早くて助かるね、君達の話は良く聞いている、もし良ければだが、我々のクランに所属してはどうだろうか?」
さてどうしたものか、クランに入っておくのは得策な気がするが、簡単に決めてしまっても良いものなのだろうか。
取り敢えずは詳しく話を聞いてから考える事にする。
アイザック達とも自己紹介を交わしているモリスさんに、クランの事についての詳しい説明を聞く事にした。
「うむ、では説明しよう、クランというのは、冒険者同士でお互いに助け合おうと言う集まりの事だ、依頼の人数制限や、パーティに不足している戦力をまかないやすくするための、言わば大人数のパーティの事だな」
「クランには会費の様な物が存在すると聞いていますが?」
「うむ、会費はクランに所属している者に万が一があった場合や、どうしても生活に苦しくなってしまった場合に、クランから金を出す場合が出てくるので、その資金を普段から少しづつ貯めておこうと言うものだ、言わば保険だな、しかし、運営の一部に使わせて貰う事もある、とは言えその場合はあらかじめ、全員の許可を取るつもりでいる」
なるほど、聞いている限りでは悪くはない、何事にも保険というものはあった方が良いだろう。
ひとまずはみんなと相談して決めるべきだろう、何も今すぐに決める必要はない。
モリスさんにみんなで相談して考えさせて貰うと伝え、その場はそれで良いと言う話になった。
改めてマルクスとの再会を喜び、既に良い時間になっていたので、ビッツ達と共に宿屋に戻り、食事を取りながら今後の予定を立てる事にする。
宿屋は夕食時な事もあってか、随分と賑わっていた、ビッツ達とこちらを合わせて7人、なんとか食事を取る位は出来そうだ。
流石に夕食代はサービスしてくれないだろう、ちゃんと正規の料金を払い、ボンのオススメ料理を注文する、カーズが酒を頼みたがったので、追加で人数分頼んでおいた。
財布の紐を握っているユチェには冷たい目を向けられたが、折角の町に来て最初の夜だ、ビッツ達との再会祝いも兼ねて、多少は良いだろう。
「それで、俺達は明日も朝からギルドに仕事を探しに行くけど、ヒロ達は明日どうするんだ?明後日が試験だから、それの準備でもすんのか?」
「そうだな、朝はビッツ達に着いてギルドに行くよ、どんな感じで依頼を受けるのか見ておきたいし、それからは自由行動だな」
試験はさほど難しくないと聞いている、ギルド、いや、国としても労働力を確保しておきたいのだろう、ビッツ達が受けた年はめでたく全員合格だったらしい、それならばわざわざ準備をするまでも無い。
他の3人が何をするかはわからないが、ギルドで一日中本でも読ませてもらうか、教会に顔を出して手伝いでもしておくかだ。
「ヒロ達なら、問題ない、模擬戦を見たかった」
「模擬戦?なんだいそれは?」
アイザックがマルクスに尋ねる、こちらとしても気になった、試験には模擬戦があるのだろうか。
「3対3の模擬戦が最終試験なんだよ、まぁ、よっぽど酷くない限りは、負けても試験の結果には影響ないがな、その模擬戦がちょっとした見せ物みたいになってんだ、つっても、お偉いさんとかは来たりはしねぇがな」
「俺達は4人だぜ?1人抜けて戦えってのか?」
「残念だったねカーズ、相手のメンバーに入ってても手加減しないよ?」
「俺かよ!?」
「ちなみに、試験では魔法は使えねぇからな」
「残念だったなユチェ。相手にいたら真っ先に狙ってやろう」
「試験が終わった後魔法の練習台にしてあげるね」
「心配ないと言えば違う気もしますが、その時のメンバーはクジで決めるんです、私はビッツと同じ組に入れたので、運が良かったですね」
と言うことは、仲間同士で戦う可能性も大いにあると言うことか、魔法を使えないユチェや、防御特化のカーズはともかくとしても、アイザックとはやり合いたくないものだ。
チラリとアイザックの方を見ると、挑戦的な笑みを浮かべながらこっちを見ていた。
「アイザックと同じ組になれますように!」
「情けないよカーズ、でもやっぱりアイザックと同じ組なら嬉しいよね」
「まぁ、仲間同士潰しあっても仕方ないしね、そう思うだろヒロ?」
「お前絶対そんな事思ってないだろ」
試験を受けに来るのが、どの位の人数になるのか分からないが、この4人でお互い戦う事になる可能性もある、準備なんてする必要はないだろうと思っていたが、アイザックとやり合う可能性があるなら、多少は剣を振っておいた方が良いかもしれない。
雑談をしながら料理を待っていると、お待ちかねの料理が運ばれてきた、昼に食べた米料理と違って、夜はビーフシチューの様な料理だった、付け合わせはパンだ。
米料理以外の物もちゃんと出てくるのか、何の肉かは分からないので、謎肉シチューだ。
スプーンで掬い、一口飲んでみる、辛い、この辛さはあの米のものに違いない、とは言っても、昼に食べたチャーハンもどき程ではない、この位の辛さなら全然大丈夫だ。
パンを齧り、シチューを食べる、からさが中和されて実に美味しい、肉も柔らかく煮込まれている、食感的には鶏肉だろうか、カエル肉ではないと思う。
更に運ばれてきた酒を飲む、何の酒だか分からないが、苦味を感じる、ビールとは全く違う味わいだが、微量含まれている炭酸と苦味がビールを思い出させる、まぁ、悪くはない。
みんなでお腹一杯になるまで食べた後、それぞれの部屋に戻っていく、久しぶりにベッドでゆっくり眠れる、ボンに井戸の場所を聞いて、水を汲みに行く。
布を使い体を拭いて、寝る準備をすませる、そうして町での1日目が終わった。




