〜見習い冒険者へ〜その9
本日三本目です
鍛冶屋があったエリアから、露天が並ぶ大通りまで帰ってきた、日用品はパーティよりは個人的な品物が多くなるだろう、ここからは暫くバラバラに買い物をした方が効率的かも知れない。
ユチェに財布を預かり、中を確認する、残りの資金は概ね予想通りだ、その中から幾らかを取り出し、四等分して配る。
「この資金の範囲内で必要な雑貨を揃えようか、余る様なら好きな物を買っても良いだろ」
ユチェには少しだけ多めに渡しておいた、こんな時は女性の方が多くかかるのでは無いかと思ったからだ。
資金を受け取ると、みんなは露店の方へ歩き出していった、ユチェはリリィと、カーズはビッツと一緒に動くつもりらしい。
「それじゃ俺達も二人で見て回るとするか」
「そうだね、ヒロはもう何を揃えるか決まっているのかい?」
「まぁ、ある程度は決まってるよ、基本的には村から持ってきた物があるから、雑貨というより、持って来られなかった物の代わりになりそうなものとかかな」
アイザックと一緒に露店を廻る、本当に様々な物が揃っている、やはり村で開かれる露店の規模とは全く別物だ。
アイザックと適当にぶらつきながら必要なものを揃えていく、中古服屋なんてのもあるのか、そう言えば服も多少丈夫なものに買い替えたほうが良いのかもしれない、今後資金が増えたら考えて行く事にしよう。
「見ろよアイザック、昆虫食なんてのもあるぞ」
「あぁ、村ではあまり見かけないね、あの辺りだと昆虫食に適してるやつは居ないからね」
食べて美味しいものなのだろうか、流石に少し抵抗がある、いつか試してみても良いかも知れないが、今回は見送る事にしよう。
それはそれとして、ちょっと覗いてみることにする、手で掴める程のでかい芋虫や、何かの足であろう物が山積みにされている、芋虫は全く動かない所を見るに、死んでいるのだろう。
これは苦手な人が見たら、卒倒してしまうかもしれない。
「買ってみるかい?」
「いや、昆虫食は俺の世界じゃ余り馴染みがなくてな、遠慮しておくよ」
「こっちでも苦手な人は少なくないね、やっぱり見た目とか人を選ぶよね」
適当に買い物を済ませた後は、余ったお金を使い、何かの肉の串焼きなんてのも買ってみる、祭りの時の屋台にありそうな、でかい肉の串焼きだ。
凄く濃い味付けがされている、噛みきれなくは無いが随分と硬い、まぁ、屋台っぽいと言える、濃い味付けが癖になりそうではある、所謂ジャンクフード的な美味しさだろうか。
食べながら歩いていると、同じようにぶらついていたユチェとリリィを見つけた、ユチェが食べてみたそうにしていたので、残りを渡す。
これで雑貨も殆ど揃った、確信はもてないが、不備はないはずだ、まぁ、何か足りなければまた買いに来れば良い、村での生活と違って、ここならばすぐに買いに来る事が出来る。
露店を巡りながら合流していく、そろそろみんな買い物も済んだ頃合いだろう。
「こっちは揃ったぞ、なんだカーズ、随分荷物が多いな」
「おう、こう言うのは一気に色々と揃えておくんだよ」
正直何に使う為に買ったのかわからないものまで混じっているが、本人からすれば必要な物なのだろう。
ユチェの方は裁縫道具なんかも買っているようだ、中古の服を買うより、布だけを買って自分で作った方が良いんだと言っている。
一旦宿屋に戻って荷物を置いてこなくてはならないだろう、それが済んだらギルドでマルクスを待つ、ちょうど良いくらいの頃合いになるはずだ。
宿屋に戻り部屋に荷物を置く、色々と揃ってくると、段々と部屋にも愛着が湧いてくる。
ちょっと休憩をしてからギルドに向かう、どうやらマルクスはまだ帰ってきていないらしい。
ギルドの中で待たせてもらう事にしよう、全員でテーブルを囲み椅子に座る。
「そうだヒロ、ちょっと待ってろ」
ビッツが立ち上がり、ギルドの受付の方に歩いて行った、暫くすると本を一冊持って戻ってきた。
「ほら、お前こういうの好きだろ?ギルドの受付に言えば貸してくれるんだ、他にも何種類かあるんだぜ、持って帰ったりは出来ないけどな」
ビッツに受け取った本をめくってみると、中身は生物の生態や特徴が書いてある、生物図鑑の様な物だった、これはありがたい、何かを討伐するにしても、あらかじめ知識を持っているのは随分と助けになる。
この本は動物と虫の図鑑らしい、他には植物の図鑑や、鉱物の図鑑なんかも貸し出してくれる様だ。
「私も読みたい!ねぇリリィ、一緒に借りに行こうよ」
ユチェも興味が湧いたらしい、植物の図鑑を借りてきてリリィと一緒に読み始めた、ビッツに新人の頃受けた依頼で、駆除や討伐をした事のある、魔獣や獣を教えてもらいながら、本のページを捲る。
主には繁殖力が強めの害獣が多いみたいだ、同じような依頼を受けた時のために、ある程度の知識は持っておきたい。
全員で雑談をしながら、本を読み進めていく、そうやってマルクスの帰りを待っていると、ギルドが少し騒がしくなり始めた。
「そろそろ帰ってくるんじゃねぇかな」
この位の時刻が、冒険者達が日帰りの仕事が終わって、帰ってくる時間帯の様だ、まだ若い冒険者達が多いように見える、ベテランになってくると、1日で終わらない仕事の方がメインになったりするのだろう。
ギルドの入り口の方を暫く眺めていると、マルクスが姿を見せた、どうやらヤーセンも一緒のようだ、それに見たことがない人達も一緒にいる、クランの人達だろうか。
マルクスもヤーセンもこちらに気付いたらしく、こっちの方に歩いてくる、大柄な一人を省いてクランのメンバーであろう人達も一緒だ。
「町に来たのかヒロ」
「今日着いたんだ、ビッツに色々案内してもらってたよ」
「やっと来たのかヒロ、今俺達のクラン主が仕事の報告に行ってる、ちょっと待っててくれ、紹介したい」
「ヤーセンさんは随分長いことあってなかったかな?元気にしてたみたで良かったよ」
他のクラン員であろう人達とも軽く挨拶をしておく、マルクスやヤーセンと再会を喜んでいると、クラン主らしい大柄の男がこちらに向かいやってきた。




