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~見習い冒険者へ~その8

 ビッツの後ろを付いて町を歩いていく、ビッツは鍛冶屋までの案内をしながら町の事を色々と教えてくれた、残念ながらこの世界でも貧富の差はあるようで、貴族のような人達が住んでるエリアと貧しい者たちが住んでるエリアは離れているらしい、規模的にはそこまで大きくはないものの、スラム街のようなものもあるようだ。

 気になったので詳しく聞いてみると、スラム街に住んでる者も、飢えて死んでしまうような悲惨な状況というわけでもないらしい、ビッツの知り合いの冒険者の中にも、スラム街で生活しているものはいるようだ。

 まったくなんの問題も起きないと言うわけではないが、それでもこの町の治安はちゃんと守られているらしく、スラム街に住んでいる人たちも基本的には規律を守って暮らしているらしい。


 「なぁ、アイザック、この世界って奴隷制度とかはどうなってるんだ?」


 「奴隷?居るよ、この町でも確か奴隷商人が居たんじゃないかな?ミークさんに聞いた気がするね、と言うか、ヒロだって奴隷の人には何度か会ってるでしょ、ユチェの農場で手伝いをしてた筈だよ」


 「そうだったのか、ユチェがまさか鞭を振るって、酷い話だな」


 「そんな訳ないでしょ、あのねぇ、奴隷の事なんだか勘違いしてない?奴隷は村にとっては貴重な労働力なの、それに私の家じゃなくて、村での所有だし、暴力で言う事聞かせてどうするのよ」


 奴隷の有無、その扱いは正直ずっと気になっていた、もし誰か詳しそうな人が居たら聞いてみようかと思っていたが、まさかユチェがその事について詳しいとは予想外だった。

 灯台下暗しというやつだろうか、こんな事なら村にいる間に聞いておけばよかった、まぁ、村の中で奴隷の事を話す機会などなかったし、そういえばこの2年間ほどの会話の殆どは、村の事、冒険者の事、その日の仕事の事、休日の話なんかばかりだった気がする、もっと広い目を持っておくべきだったかもしれない。


 鍛冶屋に向かう道を歩きながら、ユチェに色々と教えて貰う事にした。

 当たり前だが、奴隷というのは安くはないらしい、一人買おうとするだけでも、随分とお金がかかるようだ、その上、買った後も生活に必要なお金がどんどん出ていくらしい、そう言われてみれば当たり前の話か。


 奴隷法は国によって多少変わるが、この国では奴隷の所有権は、奴隷を買ってから10年と決まっている、10年経てば奴隷ではなくなるのだ、雇い主はその後の人生についても、ちゃんと生活をしていけるような教育を義務つけられている。

 守られているかはさておき、扱いについても、酷い扱いをするのは全体的に禁止されている、奴隷が国や町、村や雇い主に対して恨みを溜め、その結果反乱なんて事にならないための配慮らしい。

 ただし、奴隷に対しても雇い主に対する従順な態度を求められる、奴隷として雇い主と契約を交わしてから10年間、その期間の内に酷い問題を起こしたり、働かなかったり、逃げ出したりした奴隷は、犯罪者として指名手配を受けたりするようだ、もちろん捕まれば重い罪に問われる事になる。


 「奴隷にはどんな人がなるんだ?確かこの世界じゃ戦争なんてのは余り起きてないんだろ?」


 「この国ではね、その質問からして分かってると思うけど、やっぱり他の国と戦争が起きた時の捕虜とかかなぁ、戦争が終わった後の話し合いで、捕虜が解放される場合が殆どだけど、一部解放されないような人達もいるだろうしね、嫌な言い方だけど、国に捨てられちゃった人たちだね。あとはやっぱり、更生が見込まれるような犯罪者だったりだとか、生活がどうしようもなくなった人たちが、自己申請で奴隷になったりとかもするみたい、フアミ村の人達は確かこっちのパターンだったんじゃないかな?」


 この国の奴隷の扱いは思っていたより良さそうだ、良い方向に予想を裏切られた。


 「ついたぞ、ここだ」


 話に盛り上がっていると、いつの間にか目的地である鍛冶屋の前に付いていたらしい、なかなか年季の入った店構えだ、パッと見た感じ結構な広さがある気がする、店と工房の両方を兼ねているのだろう。

 ビッツの案内で店の中に入ると、店番をしている女性が対応をしてくれた、年齢は割と近いんじゃないだろうか、働いているというよりも家の手伝いをしているような雰囲気だ。

 ビッツがこちらを紹介してくれたので挨拶をする、やはりこの店と工房を仕切っている親方の娘さんらしい、リーアと名乗った女性は奥から父を呼んでくると言い、店の奥に入っていった、店の奥が鍛冶場になっているのだろう。

 リーアはしばらくすると、長いひげを生やした筋肉質な男を連れて現れた、宿屋のボンもそうだが、鍛冶屋ではなく冒険者にでもなったほうが良いんじゃないだろうか、と思わせるほどの体格だ。


 「新しく町に来た冒険者志望だって?俺はガーレ、この鍛冶場の親方をしてる、今日はなんの用だ?」


 「初めまして、ヒロです、冒険者用の武器と防具を探しにきました、ビッツに聞くとここが良いと言われまして」


 「なんだビッツ、宣伝ご苦労なことだな」


 「そうだろおやっさん、今度武器の修理費まけてくれよな」


 ガーレに言われてリーアが店を案内してくる、と言っても店自体はそこまで大きいものではない、簡単に案内をされた後は、こちらの四人で装備を吟味していく。

 鎧は金属製のものから、革のものまで色々と取り揃えられているようだ、武器は素材が違うのだろう、似ているように見えても値段がピンキリだ、こう言うのは無理に自分たちで選ばずに、プロに選んでもらった方が良いのかもしれない。

 四人である程度揃えておきたい防具の意見をだしあって、カーズに予算を伝え交渉に行って貰う事にする、流石に予算の範囲で金属鎧は揃えられるわけがないので革鎧で良い、形としては出来れば動きやすさを重視したい、なんなら胸当てみたいなものでも良いと言っておいた。


 四人分の防具ともなると、選びきるのにはそれなりに時間がかかってしまった、体に合わせて調節をしないといけないため、受け渡しには時間が掛かるらしい、体のサイズを測ってもらい、防具とカーズのハンドアクスの料金を払う。

 ここまでで、予定していた大きな額になるであろう支払いはすべて終わった、当初の予想よりは資金も余っている、日用雑貨に使うお金と、ある程度の期間の食費を引いてもそこそこのお小遣い程度は残りそうだ。


 ガーレとリーアにお礼を言って店を出る、時間が掛かったとはいえ、マルクスが帰ってくるまでにはまだ多少の余裕がある、最後に露店で必要な日用品を揃えておくことにしよう。

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