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~見習い冒険者へ~その7

 全員で一階に降りるとこちらに気が付いたボンに声をかけられた、どうやら宿屋の契約と、初めて町へ出てきたお祝いを兼ねて、昼食をご馳走してくれるらしい、節約にもなるので大変ありがたい。


 「まぁ、料理自体はこっちに任せてもらうことになるけどよ、それでも良いなら食ってけよ」


 「親父、俺達の分も奢ってくれるのか?」


 ボンは仕方ないといった表情をしながらも、ビッツ達の分まで料理を用意してくれることになった、見た目に反してボンは随分と面倒見のいい良い人のようだ。

 六人でテーブル席に座り料理を待つ、さて、どんな物が出てくるのだろう。


 「お待たせしました、どうぞ」


 料理を持ってきてくれたのは女性の店員だった、年齢から考えるとボンの妻だったりするんじゃないだろうか、手に持ったトレイからテーブルの上に料理がおかれていく。

 これは米料理だろうか、色々な具材がふんだんに散りばめられた、チャーハンだとか焼き飯だとか、そんな見た目の料理だ、ただ、色合いは赤だとかオレンジに近い、チキンライスの方が近いかもしれない。

 こっちの世界にも米に近い穀物があったのか、いや、実際近いかどうかは食べてみるまで分からない。


 「へぇ、この料理はパンとは一緒には食べないんだね、この粒が主食になってるのかな?珍しいと思わないかいヒロ」


 料理を見ながらアイザックが話しかけてきた、普段からパン食しか食べてこなかったであろうアイザック達には、やはり米料理というのは珍しく見えるのだろう、こちらとしては久々に見る米料理に、なんとも言えない感動を覚える。


 「俺の世界じゃ珍しくもなかったけどな、この料理によく似た料理はよく食べてたよ。」


 「俺の世界?何の事だヒロ?この料理はこの国の料理じゃねぇよ、親父が北の国からの移住者なんだ、そっちの方の料理さ、最近じゃこの辺りでも作られるようになったみたいだな、この町から北に進んだ所にある村で作られてるって聞いたぜ」


 「こっちの話だよビッツ、その村には行った事があるのか?」


 今まで近場の地図しか見たこともなく、余り地域の事を調べる必要もなかったので、この国の地理や情勢、他の国との関係性なんかは未だに殆ど知らない、冒険者として活動する以上、その辺りの知識も今後補っていく必要があるだろう。


 「おう、一度行った事があるぞ、駆け出しの頃に受けた、村の採取の手伝いの依頼でな、村の更に北側に森が広がっててな、その森で色々取れるんだよ、ひと月に一度くらい募集されてたみたいだから、ヒロ達も機会があるんじゃねぇか?」


 稲作をする村か、一度見ておきたい気がする、やはり水田なんだろうか。


 「凄かったぜ、フアミ村の麦畑も、ズラッと麦が並んでて壮観だったけどよ、その村じゃこう、木がズラッと並んでてさ」


 「木?米の他に果物でも育ててたのか?」


 「何言ってんだヒロ、お前さっきよく食ってたって言ってただろ?じゃあ、見たことあるんじゃないのか?」


 なにやら話が噛み合わない、水田か何かがあってそこで稲作でもやってるんじゃなかったのか。


 「その木にこの位の実がなっててよ、その実の中にこの種がいっぱい詰まってるんだよ」


 「すまないアイザック、この料理を良く食ってたって言ったけど、俺の思い違いだったみたいだ」


 「そうなのかい?まぁ、なにはともあれ食べてみようよ、冷めちゃうよ」


 米じゃなくて、なにかしらの木の種だったらしい、元世界の常識で話をしないほうが良さそうだ、変な誤解を生んでしまうこともあるかもしれない。

 親近感の沸く料理だったはずが、一気に未知の料理に早変わりした、そうは言っても仕方ないので、まずは食べてみることにする、味覚は近いのだから、おかしな料理ではないはずだ。

 陶器ではなく、木で作られた皿に盛られたそれを、木のスプーンを使って口に運ぶ、米料理のようなフワッとした食感でもなければ、チャーハンのような少しパラパラとした食感でもない、シリアルを細かく砕いたみたいな、ザクザクとした食感だ。

 混ぜこまれた、肉や野菜を細かく切った物の味を良く吸っている、だが、辛い、元からこの種が持つ辛さだろうか、唐辛子だとかそっち系の辛さだ、体がポカポカとしてくる。


 「辛い!でも美味しいね」


 「うめぇな、かっ込めるのが良い、冒険者飯って感じがするな」


 「力が出るので冒険者にはオススメの料理だと、ボンさんもおっしゃっていました、これを食べ続けると病気になりにくいんだとか」


 栄養価が高かったりするんだろうか、まったくイメージとは違ったそれを食べ続ける、やはり辛い、店員の女性に水を持って来てもらい、食べて飲んでを繰り返す、空になった皿にスプーンを置き、最後にもう一度水を飲む。


 「うん、美味かったんじゃないか?辛い物苦手な奴にはキツいだろうけど、俺は好きだな」


 「俺も好きだよ、この辛さが癖になりそうだよね」


 そう言うアイザックの方をみると、凄く汗を掻いていた、ウエストポーチに入れておいた布を渡してやる、辛い物を食べてよく汗を掻く人は、健康的だなんて聞いた覚えがある、実際はどうなのだろうか。

 全員が食べ終わるのを待ち、少し休憩してから席を立つ、ボンにお礼と美味しかった事を伝えて、宿から外に出る。


 「それで、ヒロ達はどこに案内して貰いたいって?まだ随分時間があるからな、つっても、町の外には出れないぞ、まぁ、正確に言えば出れなくはないけど、手続きが面倒だし、出入りに金がかかる」


 「町の外には今の所用事はないな、とりあえず武器と防具が見たいんだ、露店が並んでるのは見たけど、そこには無いみたいだったからな」


 「おう、じゃあ俺達も使ってる鍛冶屋を紹介するぜ、ヤーセンさんもお墨付きだから間違いないはずだ」


 ヤーセンさんは実家が鍛冶屋だと言っていた、そのヤーセンさんが薦めるのだから、良い店なのだろう、ビッツの後ろについて大通りまでの道を歩いて行く。

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