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〜今日から異世界生活、日常から非日常へ〜その6

カエルの解体場面があるので、苦手な方は気を付けてください。

 森沿いを更に進むと、森に入ってすぐの位置に、もう古くなった小屋が建っているのが見えた。

 どうやら、ここが目的地だったらしく、三人が小屋の中に入っていく。

 もう誰も住んでいないのであろう小屋だったが、古くはなっているものの、中は割と整頓されているような雰囲気だった。

 大きめの木のテーブルがあり、そのまわりに木で出来た簡単な椅子が並んでいた。

 側には、台所であろう、木材を組んで作った台と、すぐ隣にかまどがあった。

 奥にも部屋があるらしく、カーズが何かを言いながら奥の部屋に入っていった。


 おそらくは、もう古くて誰も住んでいない小屋を、秘密基地のようにして遊んでいるのだろう。

 奥の部屋から戻ってきたカーズの手には、簡単に作ったのであろう、釣竿が2本握られていた。

 持っていた籠や壺が見当たらない所をみると、奥の部屋は倉庫代わりにでも使っているのだろう。

 ユチェが釣竿を一本受け取り、二人で小屋の外に出て行った、川魚を釣りに行ったのだろう。


「ヒロ」


 アイザックに呼ばれて振り返る、アイザックは自分とこちらを交互に指差し、次にいつの間にか持っていた木の枝を指差し、その後外を指差した。

 木の枝を一緒に拾いに行こう、と言う事だろうか、頷いて外に出る。


 小屋のすぐ裏で小枝を拾っていく、木の種類は、少なくとも目につく範囲では一種類だ、この木の枝で間違いはないだろう。

 もしかすると、この木の枝にも何か変わった用途があるのかもしれない、実は万能薬の材料だったり、実は食べると凄く美味しかったり、砕くと砂糖になったりするんじゃないか。

 流石は異世界、見慣れたようなものでも、色々と新鮮だ、おっさん心が少年心に書き換えられていくようだ。

 続けて拾い集めていると、近くの草むらで何かが動く音がした。

 何かいる、そうだ、ここは異世界なのだから、もしかしたら危険な魔物なんかもいるのかもしれない。

 そう思うと、一気に緊張感が膨れた、元世界であっても、開拓されていない森なんて、狼とか野犬が出る可能性があるのだ。

 幸いすぐ近くでアイザックが、ナイフを使い木の皮を剥いでいる。


「アイザック」


 アイザックを呼び、音のした草むらを指さす、二人で草むらを見ていると、また何かが動いた音がした。

 アイザックは集めていた木の皮を地面に置き、弓を構えた。

 音がゆっくり近づいてくる、草むらをわけて、何かが飛び出してきた。


「グゲゲグクォ」


 それはモコモコとしたカエルだった、なんだ、お前だったのか。

 ホッと一息、緊張の糸を緩める。

 アイザックの方を見ると目があった、アイザックは何かをこちらに言って、矢を放った。

 矢はモコモコしたカエルに突き刺さり、アイザックはドヤ顔をこちらに向けている。


「えぇ...」


 矢の刺さったカエルは暫くもがいていたが、程なく動かなくなった、流石はアイザック、見事なクリティカルヒットだったようだ。

 アイザックは矢の刺さったカエルを拾い、こちらに持って来た。

 近くで見るとそこそこ大きい、30センチはありそうだ、折角なので触っておく、期待通りにモフモフしている、皮は思ったより硬い。

 アイザックはカエルから矢を抜くと、カエルを掴み上げ、小屋の方を指差した。

 そろそろ戻ろうと言っているのだろう。


 小屋まで戻って来たが、中には入らず、そのまま二人が釣りをしている川の方へ向かう。

 二人は並んで釣りをしていた、アイザックが二人に声を掛けて、カエルを見せている、二人はなんだか嬉しそうだ。

 アイザックが二人に何かを聞くと、カーズが少し離れた地面を指差した。

 どうやら、川辺の石をどかしてそこを少し掘り、水を入れて簡単な生簀を作っていたらしい。

 もしかしたら、魚が釣れたのかもしれない、期待して生簀を覗くと、魚ではなく、20センチほどの海老が3匹いた、海老と言っても、ロブスターのような肉厚の海老だ。

 魚釣りではなく、ロブスター釣りをしていたらしい。


 肩を叩かれたので、そちらを向くとユチェだった、凄い笑顔で、海老と自分を指差している。

 どうやら、私が釣ったのよと言いたいらしい、拍手をして褒め称えておく。

 ユチェは満足したのか、カーズから釣竿を受け取り小屋の方へ戻っていった。

 カーズは川辺の石を積み上げ、何かを作っていて、アイザックは小さいナイフを使い、先程のカエルを解体している。

 丁寧に皮を剥いで、川の水を使い血や臓器などを洗い落としていく、綺麗になったそれを上手くナイフで切り分けている。


 カーズが組み立ているのは、どうやら簡易な土台のようだ。

 戻ってきたユチェは、木の棒を削って作ったのであろう串と、金属製の鍋に、小さな壺を持っていた。

 あの土台はかまどだったようで、ユチェが川から水を汲み入れた鍋を置いている、壺のなかは白い粉が入っていた、おそらくは調味料なのだろう。


 なるほど、みんなでキャンプ的な食事を楽しもうと言うわけだ、先程拾ってきた枝はこの為のものらしい。

 枝を組むくらいは手伝っておこう、確かサバイバル番組で見た焚き火の組み方を思い出しながら、木を組んでいく。

 解体を終えたアイザックが木の皮を細かく裂いて、組み終わった焚き火の間に差し込んでいく、燃えやすいようにしているのだろう。

 一通り準備が終わると、ユチェがかまどの前に座り、焚き火の方に手を伸ばした。

 しばらくそのまま手をかざしていると、木が燃え始めた、魔法で火をつけたのだろう、便利なものだ。


 量は少ないが、自分達で取った獲物を食べるのは、ちょっとワクワクする。

 そう言えば元の世界では、カエルなんて食べる機会はなかった、鶏肉に近いなんて聞いた事がある。

 少し抵抗は感じるが、きっとこちらでは普通の事なのだろう。

 鍋にロブスターを入れるユチェや、カエル肉を串に刺しているアイザックとカーズを見て。

 これが自分にとっての普通になる日も、そんなに遠くは無いんじゃないか、そう思っていた。

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