~見習い冒険者へ~その4
本日二本目です
城門に近づくと、見張りをしている衛兵さんに声を掛けられた、初めて町に入る時には簡単な手続きを済ませなくてはならないらしい。
城門のすぐ隣にある小さな小屋で、出身や名前、どこから来たか、なんの目的なのかと色々と質問をされた、出身はフアミ村ですとサラっと嘘を付いておいたが、後の質問に関してはおかしな部分も無いはずだ。
特に怪しまれる事もなく、手続きが進められていく、最後に入町料を収めて、代わりに入町許可証を貰った、ギルドに行ったときに提出を求められるらしい事を、ギルドの場所と一緒に、衛兵さんが丁寧におしえてくれた。
お礼をしていよいよ町に入る、ギルドまでは大通りを真っすぐ進んでいけば良いと言っていた、広場に隣接しているので、殆ど探さなくてもすぐに見つかるのだそうだ。
木造作りがほとんどだった村の建物と比べて、町の建物は石造りのものが多い気がする、大通りに面しているからだろうか、脇道にそれるとそうでもないのかもしれない。
カーズとユチェははしゃぎながら周りをキョロキョロ見渡している、とは言えこちらの二人もそこまで差はないが。
これはキョロキョロするなと言う方が無理だというものだろう、町の中は活気にあふれている、大通りには様々な露店が並び、沢山の人が行き来していた。
露店は食品系が多いように思う、果物から肉、魚、なにかの穀物の粉であろうもの、調味料に見える何かと様々だ。
アクセサリーや衣服なんかを扱っている露店もみかける、この町だけなのか、それともこの国、この世界の文化なのかはわからないが、こうも露店が多いとなると、普通の店と言うものは限られてくるのではないだろうか。
そのまま大通りを歩き続けていると、噴水のある広場に行き着いた、広場には露店が出されていない、入って来た城門と別の方に伸びている大通りにも露店は出ていない、あの一筋だけに集中して露店が出されているようだ。
広場を見渡してみると、すぐにギルドは見つかった、大きな建物に大きな看板、なるほど国営なだけあって目立っている。
扉は開きっぱなしになっているようだ、中に入らないことには何も始まらないので、中へ入らせてもらうことにする。
入り口を入ってすぐに広いスペースがあった、冒険者であろう人達が何グループかに集まって話をしている、左手には備え付けのテーブルや椅子なんかが並んでいた、そちらで集まって話をしている冒険者達もいるようだ。
まっすぐ正面には一つの大きな掲示板と、二つの小さな掲示板が並んでいる、受付は右手にあった、窓口が5つ並んでいるのを見るに、込み合う時間は冒険者が大勢押しかけてくるのだろう。
酒場なんかも併設されているんじゃないかと期待していたが、そんな雰囲気はない、掲示板の方が気にはなるが、まずは受付に向かうことにする。
「うーん、ちょっと予想と違うな」
「どうしたんだい?」
「いや、ギルドに入ったら中堅冒険者に絡まれるってのがセオリーだろ?ジロジロ見られたりしてな」
「なにそれ?ヒロってたまに変な事言うよね?」
冒険者達は、こちらをチラりと見る事はあっても、別段気にしている様子はない、当たり前だが絡んでくるような者もいない、正直ちょっと居てほしかった。
「すいません、新人冒険者試験の申請に来たんですが」
「はい、新人試験ですね、ではこの用紙のご記入をお願いします」
受付の女性に記入用紙を渡された、なんだか既視感がある、郵便局だとか、銀行だとか、市役所みたいな雰囲気だ。
後ろにあるテーブルに細いチョークのようなものが備え付けられていたので、それを使って記入用紙を埋めていく、名前、出身、年齢、家族構成、魔法習得の有無、特別な技能があれば空欄に書いてくださいと。
家族構成はどうしたものか、メアリーの父と母の名前を借りておこうか、しかし、メアリーも冒険者登録をしているはずだ、照合されでもしたら面倒かもしれない。
祖父、フロイド・ラルフレン、孤児、これで良いだろう、これならばなんとか誤魔化せるはずだ、もしかしたらフロイド神父に迷惑がかかるかもしれないので、後でミークさんに頼んで手紙を送っておく事にしよう、全員書けたのを確認して、受付に提出する。
「はい、承りました、ではこちらが四人分の試験料です、試験料には登録料も含まれております、試験の前にギルドの説明を致しますので、担当の者が来るまで暫くお待ちください」
受付の女性に試験料を払いしばらく待っていると、案内役のギルド職員さんが来た、ギルド内を回りながら説明を受けていく、獲物の素材なんかもギルド内で取り引きしてくれるようだ、カーズがこっそり相場通りみたいだと教えてくれる。
それならばわざわざ外で買い取り先を探す必要もないので、こちらとしては楽な話だ、まぁ、あえて外で販売先を探して、コネを作っておくと言うのも悪いアイデアではない、その辺は労力と相談になるだろう。
受付の窓口は、基本的にどこを使っても同じように対応してくれるらしい、元世界の市役所なんかとは違って、担当が細かく分かれている事もないようだ、ただ、凄く有名な冒険者になると、その冒険者に対する担当みたいなものはついたりするらしい。
そしてギルドのメインとなるのはもちろんこの掲示板、受けられずに残った依頼がいくつか貼られたままになっている。
依頼に目を通すと、ちょっと報酬が安かったり、面倒な条件が付いているものがあったりした、こんな風に残ってしまった依頼は、翌日には追加報酬が設定され、ちゃんと処理出来るような仕組みになっているらしい。
依頼は右上に入っているマークでいくつかの種類に分けられている、色がその依頼を受けられるランクを示していて、形によって採取や討伐、護衛、手伝いと言った具合に分けられているそうだ。
手に取った依頼を見てみると、青い剣のマークが付いていた、討伐依頼、魔獣沼蛇、なるほど、なんとなく理解できた。
それらの依頼がこの大きな掲示板に張り出されるようだ、ギルドが開く時間には、良い依頼を取ろうと冒険者が殺到するらしい。
隣の小さい掲示板には、国や町からの応援要請が張り出されるらしい、簡単には討伐出来ない凶暴な魔物や、複数で活動している魔物、魔物ではないものの、大きな集団になってしまった危険性の高い魔獣。
軍を使って討伐するような対象の、討伐の手伝いを募集するのに使ったりしているらしい。
そして最後に残った掲示板、こちらの二つとは違い、その掲示板に依頼が張られる事はない、その掲示板に貼られるのは、名前だ。
行方不明、もしくは死亡。
行方不明者の名前は赤い文字で書かれ、死亡が確定しているものは黒い字で書かれるらしい、行方不明者の名前も、死亡者の名前も、載るのは三か月の間だけであるらしい。
「ぞっとしねぇなおい」
「気にするな、俺達の名前が載る事は無い」
掲示板の名前を見ながらカーズに返した、少なくとも知り合いの名前は載っていないようだ、それでも決して少なくない人数の名前が載っている、やはり冒険者と言うのは危険な仕事である事に間違いないらしい。
だからと言って、この掲示板に名前を載せるつもりは毛頭ない、自分の名前も、仲間たちの名前も、誰一人としてだ。
「おいおい、アイザック!?ヒロ!?お前らやっと来たのかよ!待ってたぜ!」
少し暗くなってしまった気分を吹き飛ばすような声、もう聴きなれてしまったビッツの声だ。




