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~見習い冒険者へ~その2

 それから更に数か月が過ぎた、もう町に出る日も目の前まで近づいてきている、村の人達には今までお世話になったお礼もかねて挨拶回りも済ませた、フロイド神父やメアリーと過ごした教会での日々も、もう後数日で終わってしまうのかと思うと、感慨深いものがある。

 アイザック達も、町に向かうまでの残り数日間を、家族との別れを惜しみながら過ごしているのだろうか、必ず生きて、4人揃ってまたこの村に帰ってきたいものだ、刻一刻と時間が過ぎていき、遂にその日が訪れた。


 いつまで経っても何の鳴き声なのかわからない謎の生き物の鳴き声で目を覚ます、こいつは町にも居るんだろうか。

 カーズが作ってくれた手製のバックパックの中を確認する、着替えよし、布切れの束よし、保存食よし、町までの地図よし、雑貨よし、大したものは入っていないが、必要な物は揃っていると思う。

 剣とナイフが備え付けられているベルトを腰に巻き、アームガードと新たに制作した森狼の革のゲートルを付ける、鎧は町に出てから探す必要があるだろう、その為の資金も準備できている。

 今まで世話になった教会の部屋に名残を惜しみつつ部屋を出ると、フロイド神父とメアリーが待ってくれていた。


 「いよいよ村を出るんだねヒロ、町に着いたらこれを教会の神父に届けなさい、便宜を図ってくれるよう書いておいたんじゃ、必ず届けるようにの」


 そう言ってフロイド神父は手紙を渡してくれた、なにからなにまでお世話になったものだ、この恩はいつか必ず返したい。


 「あなたは言っても聞かないでしょうが、決して無理をしてはいけませんよヒロ、必ず帰ってきて、またその顔を見せてくださいね」


 「この剣に誓って帰ってきますよ、神父様、メアリー、お世話になりました、行ってきます」


 そう言って教会を出た、待ち合わせは村の入口だ、今日から本当の意味での冒険が始まる、不安と期待で胸が一杯になりそうだ。

 広場を抜け、ユチェの家を超えて、ルコアの畑を見送り、麦畑の端に到着する、そこにはアイザックが一人で佇んでいた、他の二人はまだ来ていないようだ、しばしの別れを惜しんでいるのかもしれない。


 「よう、準備は万全か?」


 「ヒロの方こそ、忘れ物はしてきてないかい?」


 「問題ない、もうエリックさん達との別れは済んだのか?しばらくは帰ってこれないんだから、ゆっくりしてくりゃ良かったのに」


 「今生の別れってわけじゃないからね、もちろんちゃんと生きて帰してくれるんだろ?リーダー」


 「当たり前だ、出来る限りやるさ」


 二人でしばらくの間待っていると、ユチェとカーズが二人揃ってやってきた、途中でばったり会ったらしい、二人とも少し目を赤くしている、そこには触れないでおこう。

 全員で改めて荷物の確認をした、どうやら不備はないようだ、これでいよいよ準備は整ってしまった。


 「それじゃあみんな、心変わりしたなら今のうちだぞ?」


 「冗談じゃねぇって、ここまで来て後に引けるかよ」


 「うん、行こうよ」


 カーズとユチェの気持ちも固まっているようだ、バックパックを背負いなおして、村から町へ続く道へ一歩目を踏み出す。


 「それじゃ行こうか、全員で生きて、全員で帰ってくるぞ」


 良い返事を返しながら3人も村の外へ踏み出す、町まではおよそ3日、急げば2日ほどでたどり着けるだろう、次の休日に試験があるはずなので、多少遅れたところで間に合うはずだ。

 気を引き締めてはいるものの、冒険者になる期待や興奮がどうしても旅をピクニック気分にさせる、まぁ、気を張りすぎても仕方ない事なのかもしれないが、用心に越したことはない。

 その点でアイザックは優秀だ、浮かれてはいるのだろうが、きちんと自分を律している、こいつに関しては精神年齢が自分より上なんじゃないかとすら感じる。


 意気揚々と村を出たのは良いものの、町までの旅自体は単調なものだ、事前にビッツ達やミークさんにも聞いてはいたが、フアミ村から町まで続く街道は基本的に平和だ。

 この辺りは少し小高い丘がいくつかある程度で平坦な道が続くので、魔獣は遠くからでもある程度早く発見できるし、この地方にはほとんど盗賊も出ない。

 仮に魔獣が出たところで、この辺りに生息している魔獣は、今の自分たちにとってはそこまでの脅威でもない、精々危ない魔獣といえば森狼の亜種で、草原に生息している草原狼くらいのものだ。

 その草原狼も基本的には街道の方に近づいてきたりはしない、歩いている途中で何匹か見かけはしたが、ずいぶん離れていたし、こちらに気付いてはいたのだろうが、近寄ってくる様子はなかった。


 旅で最も気を付けなくてはいけないのは夜だ、寝ている間に襲われでもしたらひとたまりもないので、寝る時は二人づつ交代で寝るようにした、カーズが木と大きな布を組み合わせて作ってくれた簡易テントは随分役に立ってくれた。

 今はアイザックとユチェがテントの中で寝ている、二人一組となると、アイザックとユチェ、自分とカーズが組み合わせ的にはバランスが取れているような気がしたので、この組み合わせに落ち着いた。

 焚火のなかに途中で積んだ野草を放り込んで燃やす、この草を燃やした時に出る煙が虫よけになるらしい、つくづく便利な植物が多い世界だ、これも女神様の恩恵なのだろう。


 カーズと他愛のない話をしながら、周りを見張る、特に異常はないように思う、小さな鍋を使い沸かせたお湯をコップに注ぎコーヒーを作る、このお茶のようなコーヒーの淹れ方も慣れたものだ。

 そのまま苦いコーヒーを楽しみつつ二人で話をしていると、テントの中からアイザックが顔を出した、交代だろう、ユチェが起きて来なかったので、先にカーズを寝かせてやることにした。

 カーズの代わりに、今度はアイザックと他愛のない話をしながらコーヒーを飲む、元世界ではこんなアウトドアな趣味は持っていなかったが、これはこれで楽しいものだ、キャンプにハマる人の気持ちが今更わかった気がする。

 一つだけ残念な事があるとするなら、ユチェがそのまま起きて来ずに朝になってしまった事だ。

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