~少し外の世界へ~その11
本日二本目です
「皆さん揃ったようですな、フアミ村の方々もいらっしゃるので、先に少し説明をさせて頂くとしましょうか。蠍はここ、ウリカ村の湿地に生息する魔獣です、魔獣といっても危険性は少なく、人に被害が出ることも滅多にありません、とは言え、数が増えすぎると話は変わってきます。蠍はウリカ村の湿地帯で育てている特産品を食べてしまいましてな、数が少ない間は湿地の奥の方で活動しており、村の近くまで出てくることは稀なのですが、今年は大量に繁殖してしまったらしく、例年に比べて湿地帯の作物の被害が多く出てしまっておるのです」
大体は今まで聞いていた話の通りのようだ、村長はその後、蠍はウリカ村でよく使われる食材の一つなので、居なくなってしまっても困ると言う事、駆除といっても、蠍は出来るだけ素材を使えるように倒してほしい事などを説明してくれた。
「ハンマーや斧で叩き潰しても駄目って事か、そうなると細身の槍で急所を突き刺す方が良さそうだな」
「そうだね、ナイフなんかだと近付きすぎて刺されちゃうかもしれないからね」
アイザックと蠍の狩り方について相談をする、この辺りの話は、普段から蠍を狩っているであろうジーク達に聞いた方が確実かもしれない。
一度湿地帯にある畑を見てもらおうと言うことで、自警団の人達や村長と共に、蠍の生息する湿地まで行く事にした。
村から少し離れた位置に、大型の小屋と幾つかの家が建てられている、この村の特産品を育てている農家の人達の家と、特産品を収穫する時や、特別な農具を保管しておくのに使う小屋らしい。
その大きな小屋の向こう側が湿地帯になっており、さらにその向こう、遠くの方には沼が見える、湿地の近い部分には柵が建てられており、その中で特産品を育てているようだ。
特産品と言うのは、なんだか赤いスイカのようなものだった、村長がその内の一つを取って、こちらに持ってきてくれた。
「これがウリカ村の特産品です、食べてみますかな?」
「良いんですか?是非頂いてみたいですね」
村長から受け取ったスイカを瓜ボトルの水で洗い、ナイフで二つに割ってみる、中は黄色いメロンの様な見た目をしていた。
「初めて食べるな、どんな味がするんだろな」
「え?ヒロはこれ食べたことあるじゃない、ほら、ドライフルーツになってた」
もしかして、コーラみたいな味がしたマンゴーもどきか、こう言う元世界でまったく似たような物がない動植物は、なんと呼べば良いのか分からないのでちょっと困る。
村長に名前を尋ねると、シャウプの実であると教えてくれた。
適当に切り分けてアイザック達にも渡す、やっぱりあのドライフルーツの様な味がするのだろう、齧りついてみる。
炭酸はないものの、やはりコーラのような味がする、コーラに比べると甘さが少し控えめで、酸味がちょっと強いだろうか、ドライフルーツにしたものとはまた違う美味しさだ。
シャウプを食べ終わり、湿地帯の方へ目を戻す、よくよく目を凝らしてみると、確かに柵の向こう側の方で何かが蠢いているのが見える、おそらくは蠍なのだろう。
一度蠍の姿をとらえると、そこらじゅうで何かが蠢いているのがわかる、なるほど、これは数が多そうだ。
「蠍が動いておるのが分るでしょう?本来はここまでの数が村に近づいてくる事はないのですがな」
村長が隣に立ち、湿地を見回しながら言った。
「繁殖しすぎたと言う理由以外はないんですか?たとえば、沼地の方で魔物でも現れるか、別の魔獣が増えすぎて、それから逃げてきたとか。」
異常繁殖してしまっただけならば蠍に対処するだけで良いが、ほかの要因が加わるとなると、そちらの方への対処も考えなくてはならない、魔物でもいようものならお手上げだ。
「それも考えて、自警団の者達に湿地帯の奥や、沼地の方も調べて貰いましたが、湿地帯はともかく、沼地の方には異常は見られなかったようですな」
「うむ、その調査には我が行った、沼地の方はいつもと変わらない様子であったな、別段おかしな所も無いように感じた、だが、湿地帯の方は酷かったぞ、そこら中蠍だらけであった」
ジークが事前に調査を済ませていたらしい、そうなるとやはり蠍が繁殖しすぎただけという線が濃厚なのだろう。
「ジーク、普段はどうやって蠍を狩ってるんだ?」
「うむ、この手鉤と槍を使う」
ジークは柄の長い手鉤と、先の細い槍を取り出しながら言った、槍というよりは、長い針の方が近いかもしれない。
手鉤で蠍を押さえつけて、槍で急所を突いて、動かなくなった所で手鉤を槍で空いた穴に入れて引き寄せると言った狩猟方法らしい。
ジークはちょっと待っていろと良い、湿地の方へ走って行った、様子をみるに、どうやら蠍を狩っているらしい。
一匹仕留めたようで、蠍を持って戻ってきた。
「蠍の急所はここだ、槍でついた後はちゃんと動かなくなるまで待つ事だ、急所を突いたあとでも反撃してくる事がある、刺された所で死にはしないが、凄まじく痛いし、腫れあがるのでな」
そりゃこのサイズの蠍に刺されれば痛いだろう、アイスピックを突き刺されるようなものだ、死ぬような毒はなくとも、腫れあがる程度の毒は持っているらしい。
一通り説明は理解できた、特に難しい事もなさそうだ、自警団の人達も駆除作業に取り掛かり始めた、こちらも作業を始めていくとしよう。
ジークに槍と手鉤を人数分借りて、湿地の方へ向かっていく。




