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〜少し外の世界へ〜その9

 ウリカ村の入り口に着くと、村長が改めて自己紹介をしてくれた。

 今日はもう遅いので、蠍については明日の朝に話す事になった、ウリカ村にも宿屋の様な施設はない様で、何人かの村人が寝床を貸してくれると言う話になった。

 と言っても、既に顔見知りになっているカノンとミアの家でそれぞれ一人、村長の家で二人泊めてくれるらしい。


 「それじゃあ、誰がどこに世話になるか決めるか」


 「考えるまでもないんじゃないかな?ヒロはカノンちゃんの家でしょ、婿殿なんだから。ユチェはミアちゃんの家が良いんじゃない?冒険者志望の女の子同士なんだしね、俺とカーズは消去法で村長の家だね」


 「良いんじゃない?異議なーし」


 「俺はどこだって良いぜ」


 「聞き捨てならない部分もあるが、まぁ妥当だな、それで行こうか」


 一旦パーティは解散だ、明日の朝に村長の家で待ち合わせる事にして、ユチェと一緒に、待ってくれているカノンとミアの元へ向かう。

 カノンの一家と違い、ミアの父親と母親は、収穫祭で見た覚えがない、おそらくは来ていなかったのだろう。

 ユチェはミアに駆け寄って、手を合わせてはしゃいでいる、いつの間にか仲良くなっていたようだ。


 「俺はカノンちゃんの家に世話になる事になったよ」


 「それは良い!我が家に伝わる戦士の武勇伝を、思う存分語れるではないか!ヒロも聞きたかろう!?」


 「お兄ちゃん、黙ってて」


 正直なところ、興味がないと言えば嘘になる、面白い話が聞けるんじゃないだろうか、とは言え、ジークの話を一晩中聞かされてしまったら、明日の朝には頭戦士になっている事だろう。

 残念だが、辞退させてもらうとしよう。


 カノン達と共に家に向かう途中で広場を抜けた、村の広場はフアミ村に良く似た作りになっていた、基本的な村の作りみたいな、なにかしらの基準でもあるのだろうか。

 生活していると気付くのだが、フアミ村でも広場を中心に村が作られているように見えた、村を作る際に広場をまず作ってから、他の建物の事を考えているような作りな気がする。


 広場からは教会も見える、教会までの距離もフアミ村と似ている、そうなると、隣に建っている家は村長の家ではないだろうか。

 教会とは逆方向に少し歩くと、道を挟んで家が二軒建っていた、カノンの家とミアの家だそうだ、二人はお隣りさんだったらしい。


 家の中に案内されたので、カノンに着いて入っていく、今日は奥の部屋を使うと良いと言われた。

 元々はカノンやジークの姉が使っていた部屋らしく、当の本人は嫁に行ってしまった為、今は空き部屋になっているようだ。


 「それじゃヒロさん、食事の準備が終わるまでゆっくりしていて下さいね」


 カノンの母親にそう言われたものの、手持ち無沙汰だ、特にする事もないので外に出て剣でも振っていようか。

 カノンに一声掛けて家の外に出る、どうやらカノンも見に来るつもりらしく、後ろから着いてきた。

 家の前で、同じ様に家から出て来たユチェとミアに会った、ミアの魔法弓を見学させて貰うらしい、そっちの方が面白そうなので、一緒に見学させて貰う事にした。


 家から少し離れた大きな木に、なにやら木の板の様な物が吊るされている、ミア曰く、あれが的らしい。

 持って来ていた弓を構え、矢をつがえて深呼吸をした。

 普段の天真爛漫な雰囲気とは違い、その表情は真剣だ。

 的を真っ直ぐ見据えて矢を放つ、真っ直ぐ飛んでいった矢は良い音を鳴らして的に命中した。

 良い腕をしている、的まではそれなりに距離があるし、的自体も大きくはない。


 「凄いんじゃないか?アイザックより精度良さそうだけどな」


 「馬鹿、今のは普通に矢を射っただけじゃない、ここからが本番だよ」


 「その通りです、とくとご覧あれ」


 ミアは再び弓に矢をつがえ集中する。


 "祝福よ 我が身に集い 力となれ"


 ミアが詠唱を始めると、周りからぼんやりとした光の粒が弓矢に吸い込まれていき、弓矢が輝き始めた。


 "射抜け 灼熱の 閃光"


 引かれた弓にかけられた矢が強い光を放つ、ミアは一呼吸入れて矢を放った。


 「ピアシング・レイ!」


 閃光が走ったかと思ったら、パンと言う音と共に、的に穴が空いていた。

 これが魔法弓か、かなり殺傷力が高そうだ、森熊の鱗なんかも貫通出来そうな威力をしている。


 「凄いな、大した威力じゃないか」


 「うん、負けてられないよね」


 褒められたミアは自信満々の笑みを返してきた。


 「魔法弓にもメリット、デメリットはありますけどね、私達の場合二人しか居ないので、魔力を使わなくても後ろから援護が出来るように、弓矢の腕を磨いたのです。前衛はのんちゃんに任せきりですね、一応剣も使えなくは無いんですけど」


 「私は戦っている最中は周りが見えなくなるから、一歩引いて周りを見てくれてるミアちゃんには、いつも助けられてる」


 二人の間でもちゃんと役割分担は出来ているらしい、知っている冒険者の数は少ないので、あまり確信は持てないが、二人は良い冒険者になるんじゃないだろうか。


 そろそろ夕食の支度も済んでいる頃だろう、四人で家の前まで戻り、ユチェ達と別れ、カノンの家に入る。

 ちょうどカノンの母親が大きな鍋をテーブルに持って行っている最中だったので、代わりに運ばせてもらう。

 全員揃ってテーブルについている、お祈りを済ませて食事が始まった。

 

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