〜少し外の世界へ〜その8
収穫祭は夕方前まで続いた、他の村から来ていた人々は、帰る準備を始めている。
こちらも出発の準備をすべきだろう、一旦解散して教会へ戻り、装備を整える。
「気を付けて行って来なさい」
「はい神父様、行ってきます」
フロイド神父に挨拶をして教会を出る、ウリカ村の人達は、村の入り口で待ってくれている筈だ。
広場を通るついでに井戸で水を補給しておく、同じ様に水を汲んでいたカノンとミアと共に、村の入り口まで向かう。
どうやらアイザック達はまだ来ていない様だ、先にウリカ村の人達に挨拶を済ませておく。
この村でも巨大なウサギに荷車を引かせている様だ、帆が付いた荷車の中には村人達が乗っている。
「お待たせ、準備出来たよ」
アイザック達も到着したようだ、ウリカ村の人達が全員揃っている事を確認してから村を出る。
護衛依頼の練習もかねて、ウサギに付いて行きながら周りを警戒する事にした。
前にアイザックとカーズを、ユチェにはウサギを扱う御者の隣に座ってもらい、自分は後ろから着いて行く形にした。
当然な事だが、村同士を結ぶ街道はそこまで整備もされていない、ごく普通の田舎道が続いているだけだ。
馬車にはサスペンションなんかも付いていないだろう、乗り心地は良くないのではないだろうか。
サスペンションがどう言うものなのかは理解出来るが、その構造や作り方は全く知らない、元世界でもっと色々と学んでおくべきだった。
「ほらヒロさん、あの山の麓にモリブ村があるの、フアミ村よりうちの村に近い」
「へぇ、ウリカ村はあっちだから、結構近い位置にあるんだね」
ウエストポーチから地図を取り出し、位置を確認しながら街道を歩く。
カノンが横に並んで歩きながら、村の事や、その周りの事を色々教えてくれている。
「うむ、モリブ村で取れる鉱石は良い武具になる、武具は大事だが、戦士にとって最も大事なものは、己の肉体と精神だ、そこを疎かにするものは、戦士としては二流」
「お兄ちゃん、どっか行って」
もっとも、カノンのウリカ村周辺講座よりも、ジークの戦士講座の方が、聞かされている割合としては大きい。
戦士と言う単語を100回は聞いた気がする、どんどん戦士について詳しくなっていく、実は冒険者ではなく戦士を目指していたのかもしれない、そうだった気がする。
「駄目だよカノンちゃん、戦士として家族は大切にしないと、戦士なんだからね」
「ヒロさん!?」
まずい、脳が戦士に侵食されている、戦士としてどうにかしなければならない戦士。
ジークがカノンに引っ張られて、馬車の前の方へ連れて行かれた。
今のうちに脳内の戦士をなんとかしておく事にする。
「あはは、大変でしたねヒロさん、ジークさんも悪い人では無いんですけど、根っからの戦士ですからね。」
馬車の中からミアが飛び出してきた、やはり馬車の中は快適ではないらしく、身体を伸ばしている。
「ヒロさんはどうして冒険者になろうと思ったんですか?」
唐突な質問をされた。
「そうだな、色々と知りたい事があってね、冒険者なら色んな場所に行けるし、行動にも自由が効きやすいと思ったからかな、後は単純に性に合ってるかなって。ミアちゃんはなんで冒険者に?」
「楽しそうだからです!」
ミアは笑顔でそう言った、凄く単純な理由だが、それだけに想いも強そうだ。
「もちろん楽しい事ばかりじゃないかもですけど、きっとそれを乗り越えた先には、楽しい事がいっぱいあるんだと思います」
ミアは見た目に反して努力家なのかもしれない、成功を収める一番の近道は、それに向かって努力を重ねる事だと考えているようだ。
猫に近い獣系の亜人なので、性格も猫っぽいのかと思っていたが、そう言うわけでもないらしい。
「ミアちゃんの方は家族に反対されていたりはしないのかな?」
「うちはそう言うのは無いですね、頑張ってねって言われてます」
「ミアの家はそう言う所硬くないもんね」
カノンが戻って来た、ジークが居ない所を見ると、引き離しには成功したようだ。
「うちの家は代々戦士の家系だから、反対されるのは仕方なかった、お兄ちゃんもお父さんも、私には戦士になって欲しかっただろうし」
「カノンちゃんはなんで冒険者に?」
「広い世界で自分を試したいから、村の中だけで終わりたくなかった」
カノンの方は野心家であるらしい、その目には強い意志を感じる。
その後も三人で話をしながら、村への道を歩き続けた。
カノンとミアは子供の頃からの付き合いで、ずっと一緒に遊んできたらしい、残念ながら、ウリカ村に居る同年代で冒険者志望は二人だけらしく、他の子達とは少し話が合わないようだ。
冒険者としての知識は十分に蓄えられているようで、まだ知らなかった事を色々と教わった。
野営の事、武具の事、使える植物や獣の素材など、幅広く物事を知っていた。
カノンは実は優秀な槍使いである事、ミアは比較的珍しい、弓矢と魔法を使って戦う、魔法弓使いである事も教えてもらった。
二人の会話は興味深く、面白かったので夢中になって聞いていると、いつの間にか随分と時間が経っていたようで、既に日暮れ前になっていた。
正直、護衛としてはどうかと思うと反省していると、ミアが馬車の前に出ましょうと手を引いて来た。
されるがまま馬車の前に出ると、少し先に村が見える。
「着きましたよヒロさん、あれが私達の村です」
「ようこそウリカ村へ」
あれがウリカ村か、簡単な依頼だとは言え、冒険者になる為の試験である、達成させる為に気合を入れ直す、自分達の依頼はこれから始まるのだ。




