〜少し外の世界へ〜その5
広場に戻ると、先程の二人とユチェ達が話していた、偶々だとは思えない、これ以上の誤解は避けたいので、そちらに近づいて行く。
「凄い!やっぱりヒロさんのパーティの人は、みんな実力者なんですね」
「あぁ!森熊位ならもう、一撃よ一撃!」
手遅れだった、ユチェの方を見ると、ユチェが照れながら私のおかげだねと言っている、どうして調子に乗ってしまうのか。
「あっ、ヒロさん、今カーズさん達に話を聞いていたんです」
こちらに気付いた二人が駆け寄ってくる、夢を壊すようで悪いが、誤解は解いておいた方が良いだろう。
「二人共、俺達は魔物の討伐もしてないよ、着いて行っただけだ、冒険者としての実力も決して高くない、二人が思ってる程のパーティじゃない」
二人は顔を見合わせてキョトンとしている
「でもビッツさん達やミークさんは、ヒロさんの事を褒めてました、アイツ等は大物になるーって、だからやっぱり私達はヒロさん達みたいになりたいです!」
ビッツ達やミークさんから話を聞いていたようだ、やっぱり行商人まわりから聞いたのか、それにしても凄く好感度が高い、どうしてこうなったのか。
「えっと、カノンちゃんはどうかな?他の人に憧れた方が良いと思うけど」
「私もミアちゃんと同じ気持ち」
誤解の一部は解けたようだが、変に高い好感度は残ってしまった、折角出来たファンを幻滅させない為にも、頑張っていくしかないようだ。
いつの間にか周りにも人が増えてきて、テーブルには料理やお酒が並び始めた、モリブ村の人達も既に到着しているらしい。
十分に人が集まり、テーブルが料理で埋まったのを見計らって、三人の村長がスピーチを始めた。
三人とも内容は概ね、今年の収穫を神に感謝をみたいな話だった。
それが終わり、三人で乾杯をして収穫祭が始まった。
ミアもカノンも離れようとしないので、アイザック達を含め六人で雑談をしながら食事を取る。
辺りを観察してみると、子供を連れた親同士が、子供を紹介しあっていたり、ひたすら食事とお酒を楽しんでいる人が居たり、何かしら情報交換をしているのだろう、職人や農牧の関係者が集まっていたりしていた。
カノンと同じ、トカゲの亜人であろう男がこちらに近づいて来た、表情を見るに、あまり友好的だとは思えない。
後ろに人間の男が二人ついて来ている、歳は少し上だろう、こちらもなんだか険しい顔をしている。
「何か用?お兄ちゃん」
どうやらカノンの兄らしい、ミアが小声でウリカ村の自警団の人達だと教えてくれた。
名前は違うものの、ようは猟師の様なものらしい、沼地に出てくる蠍や、草原で見かける狼などから村を守っているのだそうだ。
カノンの兄はこちらを見て鼻を鳴らした。
「貴様がヒロか、冒険者には見えんな。のん、一族の戦士ならば、こんな奴に憧れなどよせ、冒険者ではなく、村を守る戦士を目指せ」
「お兄ちゃんには関係ない、私は冒険者になりたいの」
さっきまでほのぼのとした雰囲気だったのに、いきなり場がピリピリしだした。
ミアが更に小声で、カノンの兄はカノンが冒険者になるのに反対しているのだと教えてくれた。
「ヒロ、私に良いアイディアがあるんだけど」
ユチェが自身満々な顔をしている、ユチェは博識だ、どうもトカゲの亜人には人間とは少し違う価値観があるらしい、何か知っているのだろう、ここはユチェに任せてみる事にした。
「決闘を申し込む!」
ユチェがカノンの兄を指差して言った、最悪だ、任せなければ良かった。
ユチェの前には空になったコップが転がっている、よく見ると顔も少し赤い、酔っているみたいだ。
「ほう」
「決闘に勝てば、カノンちゃんが冒険者になるのを認めて貰うからね」
「面白い、我が名誉と誇りに賭けて誓おう」
なんだか話が進んでいく、それと同時に周りには人が集まり始めていた。
「ジーク・スズベル、この決闘を受ける!」
「よしっ、じゃあヒロ、やっちゃって!」
「アイザック、ご指名だ頑張れよ」
「駄目だよヒロ、カノンちゃんの為にも頑張ってね」
ジークと名乗ったカノンの兄は、すでに広場の空きスペースに向かって歩き始めていた。
ミアはやっちゃえヒロさんなんて言っているが、カノンは申し訳なさそうな顔をしている。
「やるだけやってみるよカノンちゃん、カノンちゃんが冒険者になれるようにね」
溜息混じりに席を立ち、ジークの後を追う。
完全にとばっちりを受けた形になったが、戦うと決まった以上は全力で勝ちにいく。
見物客や仲間達に囲まれて、ジークと対峙した。




