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〜少し外の世界へ〜その4

 収穫祭はその翌々週に決まった、朝早くから準備が始まり、みんな忙しそうに動き回っていた。

 特に16.7歳の子供を持つ親は張り切っている、子供の結婚相手を探そうと必死なのだろう、逆に子供の方は乗り気な者と、そうでない者にハッキリと別れている。

 どこの世界でも、そう言うズレはあるものなのだなと思う。


 広場にはすでにテーブルや椅子がズラリと並んでいる、かなりの規模だ、料理や飲み物なんかもそろそろ運び込まれ始めた、言っている間に、他の村からの人も到着するのだろう。

 アイザック達と合流して、適当に時間を潰していると村長とエリックさんがやって来た。


 「おぉ、みんな揃っているようだね、丁度良かった」


 何やらこちらに用事があるらしい、アイザック達と顔を見合わせるが、特に心当たりも無いようだ。


 「どうかしたんですか?」


 「うむ、みなはウリカ村へは行った事があるな?ヒロはまだ無いのだったかな」


 地図で見た事ならあるが、行った事はない、そこまで離れてはいなかった筈だ。

 確か沼地に面している村だった記憶がある。


 「行った事はありませんね、沼地に近い村だと言う事は知っています」


 沼地に面しているウリカ村、小さな鉱脈があるらしいモリブ村、そしてここ、フアミ村。

 地図を見た限りだと、この3つの村が近くにある村の全てだ。


 「いまその村の者達が到着しての、少し話をしておったのだが、なんでも沼地に生息している蠍の数が、随分と増えてしまったらしくてな」


 あの絵本に載っていた蠍か、てっきり砂漠にいるのかと思っていたが、沼地に生息している生物だったのか。

 体長以外は普通の蠍と大差ないように見えた、特に毒があるわけではないが、大きさは元世界に比べて随分大きいようだ。


 「何人か人を出し合って、駆除しようと言う話になってな」


 「まさか俺達に行けと?」


 いやいや、確かに本にはそこまで危険な生物では無いと書いていた、危険度で言えば森狼や森熊の方が高いだろう、だからと言って子供を駆除に行かせて良いものなのか。


 「ヒロ、アイザック、カーズ、ユチェ、これはお前達に対する試験でもあるのだ」


 エリックさんが村長の代わりに答えた、蠍は魔獣ではあるが、魔獣の中では危険性は最も低い部類に入る、駆け出しの冒険者でも、特に難なく駆除出来る程度の相手だ。

 逆に言えば、この程度の相手も駆除出来ないようなら、冒険者になっても到底やっていけないと言うわけだ。

 もう後1年もしない内に町に出る自分達に、本当に冒険者としてやっていけるのか、この機会に確かめてみようと言う事らしい。


 「父さん達はついて来られないのですか?」


 「うむ、お前達だけで解決してみなさい、これはお前達が受けた依頼と言うわけだ。何、心配しなくても良い、森狼を難なく狩る事が出来るお前達だ、蠍如きものの数には入らぬだろう」


 「そう言う事ならやってやろうぜ!俺達の初めての依頼だ、パパッと片付けて、報酬貰って酒場で一杯やろうぜ!」


 「あぁ、冒険者っぽいよなそう言うの、でも報酬が出るわけないだろ、これは正確には依頼じゃなくて、頼み事なんだから」


 またタダ働きかよとカーズが力を失っていく、ちょっとしたお礼位は出してくれるんじゃないかとは思うが、まぁ、期待は出来ないだろう。

 町に依頼を出すまでもない程度の話なのだ、しかし、経験を積んでおくのは悪くない、四人でなんとなく狩りをしているのとは、また勝手も全然違うのだろう。


 「どう思うアイザック、俺は悪くない話だと思う」


 「試験だと言うなら、どちらにせよ受けないとね、俺も賛成だよ」


 「しゃあねぇだろ、受けなきゃ冒険者になれねぇんだから」


 「うん、やろうよ」


 満場一致の様だ、収穫祭が終わってからウリカ村の人達と共に村に向かう事になった。

 代表としてアイザックと共に、ウリカ村の村長へ挨拶をしに行く。


 「はじめまして、ヒロです、宜しくお願いします」


 「アイザック・レンフォールドです、宜しくお願いします」


 初めてアイザックのフルネームを聞いた気がする、そう言えばフルネームで知っているのは、フロイド神父だけだ。

 フルネームを使う機会も後々あるかもしれない、なんと名乗るべきか、実名でも良いが、溶け込みにくくなるかも知れない。


 「話は聞いているよ、なんでもその歳で魔物を討伐したんだって?凄いじゃないか、駆除の方は村に戻ってから説明させてもらうよ」


 魔物の討伐をしたわけじゃないのだが、うちの村の村長はどんな説明をしたのだろうか。

 他の村人達は先に広場に向かったようだが、村長の他に凄くキラキラとした目を向けてくる少女達が居た。


 気になったのは、その少女達が普通の人ではないと言う事だ。

 女神によって獣の力をその身に取り込んだ者達、すなわち亞人。


 猫の様な特徴を持った少女と、トカゲの様な特徴を持った少女だ、と言っても、耳と尻尾が生えている程度だが。


 「アイザック、亜人だ、凄い見られてるぞ」


 アイザックに耳打ちする。


 「あぁ、ウリカ村には亜人が何人か居た筈だよ、確かに見られてるね」


 「あのっ!」


 猫の亜人の少女が話しかけて来た、今は自分も少年なので歳も殆ど変わらないだろうか、相手側の村長に諌められているが、そんな事はお構いなしと言った感じだ。


 「私、ミア・アシュリーって言います!冒険者を目指しているんです!こっちはのんちゃんです!」


 「カノン、カノン・スズベルです」


 活発で人懐こそうなミアと、対照的に静かでクールな印象を持つカノン。

 二人は冒険者志望らしく、一足先に冒険者になろうとしているこちらに興味があるようだ、しかし、どこでそんな話を聞いたのだろうか、行商人辺りのつてだろうか。


 「ヒロさんのパーティは、もう魔物を討伐出来る程の実力があるとか、凄いです!」


 「魔物は手強かった?怖くは無かったの?」


 いや、討伐しても無いし、普通に怖かったけど。


 「うちには優秀なリーダーがいるからね、魔物位は朝飯前さ」


 否定しようとしたが、アイザックに先手を取られた、よりにもよって何故煽ってしまったのか。

 アイザックの方へ冷たい視線を送ってやると、素敵な笑顔を返された、なんだその顔は。


 「これ二人共、まずは広場に行ってこの村の皆様に挨拶をして来なさい、話はその後で良いだろう」


 二人は返事を返しながら、広場の方へ逃げて行ってしまった。


 「良かったねヒロ、いつの間にかファンが出来てたみたいだよ」


 「そうだな、変な誤解のおかげでな」


 アイザックに返事を返しながら、唐突に増えたファンの誤解を解くために、広場へ向かう事にした。

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