〜町から来た冒険者達〜その15
ベッドから身体を起こして朝支度を始める、まずは窓を開けて陽の高さを確認する、どうも寝過ごしてしまっているようだ。
昨日のお酒がまだ残っているようで頭が痛い、年齢なりにアルコールに弱くなっているらしい。
部屋から出ると、フロイド神父やメアリーが村人の相手をしていた、まだ昼にはなっていないようだ。
井戸まで水を汲みに行き、身支度を整える、まだビッツ達は村にいるだろうか。
「神父様、まだビッツ達は村に居るでしょうか?」
「先程町に向かう準備をしていたらしいが、どうじゃろう、急げば間に合うかもしれんぞ」
見送りに行ってきます、とフロイド神父に告げて教会を出る。
広場を抜けて、冒険者達が野営をしていた場所に向かう。
冒険者達は戦利品の積み込みを終えて、今まさに村を出ようとしていた所だった。
同じ様に見送りに来ていたアイザックが、こちらに手を振っている、どうやらビッツ達も一緒に居るようだ。
「ギリギリだねヒロ、寝坊したのかい?」
「酒と疲れが効いたみたいだ、ユチェとカーズは?」
アイザックは両手を広げて首を振っている、残念ながら起きてこられなかった様だ。
「ようヒロ、うぅ頭いてぇ、飲み過ぎちまったみてえだ」
「だろうな、次に会えるのはまた行商人が来る時だな」
「ビッツは飲み過ぎなんですよ、これからは控えめに飲んでくださいね」
ビッツはリリィに怒られてバツの悪そうな顔をしている。
「マルクスは?」
「マルクスはケロっとしてやがったよ、アイツの方が俺より飲んでた筈なんだがなぁ」
ビッツがマルクスを呼ぶと、荷馬車の向こうからマルクスが顔を覗かせた、笑みを浮かべてこちらに手を振っている。
こっちに来て話せば良いのにとも思うが、あれはあれでマルクスらしいと言える。
ギグが声を上げて出発を告げる、本当に村を出る直前だったらしい。
「そろそろ出るようですね、それではヒロさん、アイザックさん、またお会いしましょう」
「リリィも元気でね」
「死ぬなよビッツ」
「ヒロの方がよっぽど危ねえよ」
荷馬車が動き出した、ビッツ達も荷馬車についていく、ヤーセンもこちらに気付いた様で、遠くから手を振っている。
「それじゃ俺は教会に帰るかな」
「そうだね、俺も皮の加工に戻らないと、随分あるから手伝ってくれても良いんだよ?猟師のみんなも喜ぶ、人手は歓迎だよ」
「面倒な事を言ってくれる、どちらにせよフロイド神父に言ってからじゃないと行けないさ、駄目とは言われないだろう、教会まで着いて来てくれ」
「言ってみるもんだね、教会の仕事は大丈夫なのかい?」
「出てくる前に見た限りだと、今日は人が少なそうだったし、大丈夫だろう」
そうしてアイザックと共に教会に帰る事にした、教会の前ではメアリーが掃き掃除をしていた、メアリーが外に居ると言う事は、やはり教会に来ている村人は少ないのだろう。
メアリーに伝言を頼んで、そのままアイザックの家に向かう。
アイザックの家の裏庭では、猟師達が皮の加工作業をしていた、エリックさんに挨拶をして、さっそく作業に参加する。
そうは言っても、まだまだ素人なので、基本的には雑用をこなすだけだ。
水を汲みに行ったり、薬品を取りに行ったり、切れにくくなったナイフを研いだり、やる事は多い。
作業中にアイザックの姉からお弁当を貰った、いつの間にか昼過ぎになっていた様だ。
しばらく休憩を挟み、作業を再開する、食後はアイザックと一緒に皮を干す作業だ。
「そろそろ収穫期だね、今年はヒロも手伝うのかい?」
収穫期には殆どの村人が収穫の手伝いをする、アイザック達も去年の収穫期には、ユチェの家で手伝いをしていた。
その時はまだこの世界の事も、言葉も殆ど分からなかったので、まずはそこをなんとかしようと、一日中勉強していた。
もうこの世界に来て一年以上経つのか、来たばかりの頃は、元世界の事も随分考えたりしていたが、今はこちらの世界でどう生きていくべきか、と言う事ばかり考えている気がする。
「今年は手伝うよ、もう言葉も十分わかるしな、村には世話になってる、恩返しをしないとな」
「そっか、もうこの世界には慣れたかい?」
「どうかな、まだわからない単語も多いし、俺はこの村の外の事は殆ど知らない、村から出た事がないからな、ミークさんから聞いた話と本で読んだ範囲以外は何も分からないさ」
「俺だって似たようなものだよ、まだ俺達は若いんだから、これから一緒に色々見て回ろうよ」
「俺はもうおっさんだっての」
「前の世界の話だろう?今はまだ子供さ」
アイザックと他愛も無い話をしながら作業を続けていく、干し作業が終わると一段落付ける、今日の作業はここまでになるだろう、次の作業は皮を良く干してからになる。
「そう言やアイザック、教会の畑に植えてた植物、随分デカくなってきてるんだが、あれって結局何なんだ?」
「あぁ、そう言われてみれば、そろそろあれも掘り起こせるかもね、暫くは森に入っても獲物が見つかりにくいだろうし、次の休みにみんなで掘り起こそうか」
次の休みの予定を立てながら、作業を終える。
二人でゆっくりしながら話をしていると、エリックさんが来て、夕食に招待された。
今日はアイザックの家に世話になろう、そう考えながら立ち上がって、アイザックに手を貸してやった。




