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〜今日から異世界生活、日常から非日常へ〜その4

 教会から出て、緩い坂を降りながら、広場までの道を戻っていく。

 三人は何やら楽しく話をしている、同年代が少ない中で、いきなり引っ越ししてきた同年代の、ちょっと変わった奴がいる、みたいな感覚なのだろうか。

 面白そうだし、俺達で村を案内してやろうぜ、まずはどこから行く、とか話しているのだろうか。


 村の広場まで戻ってくると、イケメンが井戸を指差して、何かを言ってきた。

 蛇口をひねれば水が出る、みたいな環境にいた自分でも、流石に井戸くらいはわかる。

 ここからみんな生活水を汲むんだ、みたいな事を教えてくれているのか。

 でもまぁ、よく考えたら、相手だってこっちの事が全くわからないのだから、親切に教えてくれているのかも知れない。

 相手にとっては、こっちが何を知っているのか知らないのだから。


 「*****」


 黒髪の少年が何か言い、井戸の横に置いてあった木製のバケツを拾う、バケツにはロープが括ってあり、これで水を汲み上げるのだろう。

 黒髪の少年が井戸の中にバケツを放り込むと、バシャっと水に当たる音がした。

 紐を引っ張り、水の張ったバケツをこちらに見せてくる。


 あれ、いやまてまて、水位高すぎないか、今手を伸ばせば届くかもしれない、って高さじゃなかったか。

 普通は井戸って、結構深いものなんじゃないのか、そう言えば括られているロープも、やけに短い気がする。

 気になって井戸を覗き込むと、手を伸ばせば届きそうな位置に水が張っていた。

 いや、そんな馬鹿な、こんな位置に水が張っているなら、この辺りは水没しててもおかしくない、少なくとも地面は水を含みすぎてて、グチャグチャになってるはずだろう。


 不思議に思い井戸の中を良く見ると、井戸自体の高さも、それほど深くない事に気付く、水が澄んでいて、底が見える。

 更に良く見ると、井戸の中心辺りの底に、水色に発光している、透明感のある石の様な物がある事に気付く。

 もしかすると、水を生み出す魔石の様な物でもあるのだろうか。

 それとも、たとえば川の水を、ここに転送するような効果があるのかもしれない。

 凄いじゃないか異世界、こんなに便利な物があるなんて。

 いや、まだそうと決まったわけじゃない、しかし流石は異世界、思いもよらないテクノロジーがあるんだな。


 「*******」


 いつの間にか、少年達は少し先に歩き出していた、立ち止まって、手招きしながらこちらに何かを言っている。

 他にも何か面白いものがあるかもしれない、元世界の事を考えると、思うところはあるものの、ちょっと楽しくなってきてしまった。


 少年達に付いて歩いていると、村の住人であろう男とすれ違った、少年達は軽く挨拶をしたので、それに倣いこちらもそれにならう、軽く手を上げるタイプの挨拶らしい、そう言えば神父様はお辞儀で挨拶をしていた気がする。

 人によって、多少挨拶の仕方が違うのだろうか、それでも、やはり元世界とボディランゲージ自体に大きな差はない様に思える。


 男は何やら色々な物が積まれている荷台を、動物に轢かせていた、赤髪の君が動物の体を撫でてニヤニヤしている。

 体長2メートルはあるであろう、耳の垂れたバカでかいウサギだ。

 似ている所は多いものの、生態系も微妙に違うらしい、そう言えば、こちらのカエルはモコモコしていた。

 全く見たことも、聞いたこともない様な生物ではないだけ、大分マシなのかもしれない。

 とりあえずウサギを触らせてもらう、凄くフワフワしていて触り心地が良い。

 こいつの毛を使って、布とかが作られているのかもしれない。


 更に道を進んで行く、赤髪の君の家を通り過ぎ、麦もどき畑のそば。

 ぶん殴られた記憶がまだ新しい、思い出の小屋まで戻ってきた。

 赤髪の君の方をみると、何よ、と言いたげな表情を返された。

 小屋の横を通り、なにやらトマトの様な物を植えてある畑に近づく。

 柵の高さは1メートルちょっとだろうか、そこにはかなりの量のトマトもどきが実っていた。


 イケメンが赤髪の君に、トマトもどきを指差しながら何かを聞いている。

 赤髪の君は頷くと、トマトもどきを幾つかむしり取り、全員に配り始めた。

 黒髪の少年が嬉しそうにかぶりついている、そのまま食べられるらしい。

 イケメンもトマトもどきをかじり、こちらに笑いかけてくる、お前も食ってみろと言いたげだ。

 異世界で初めての食べ物だ、もしかすると、とんでもない味がするのかもしれない、異世界と元世界の味覚が近いものである事を祈り、トマトもどきをかじってみる。


 甘い。


 なんとなく、トマトに近い味を想像していたが、全く違う味だった。

 味はイチゴに近いだろうか、食感は硬めのモモみたいだ、正直美味しい。

 中心に種があるのもモモっぽい、ただ、種はなんだかグニグニしている、ハード食感のグミみたいだ。

 赤髪の君が、種だけ口の中に放り込んでいた、どうやらこれも食べられるらしい、真似をして口の中に放り込んでみる。

 味はあまり大差ない、食感はまさしくグミそのものだ。

 異世界初の食べ物に少し感動を覚えていると、イケメンが何やら思いついたらしく、トマトもどきを指差している。


 「***、***、***」


 なんだろう、何か同じ単語を繰り返しているように聞こえる。


 「***、***」


 ルコアって繰り返しているのか、あぁなるほど、そう言う事か。


 「ルコア」


 そう言うと、イケメンは満足そうに首を縦に振った、そうして次に自分を指差し始めた。


 「アイザック」


 黒髪の少年も、それにならい、自分を指差して言う。


 「カーズ」


 「...ユチェ」


 赤髪の君は自分を指差すような事はしなかったが、腕を組みながらボソっと名乗ってくれた。


 「アイザック、カーズ、ユチェ」


 三人を見回しながら、名前を呼ぶ、最後に自分を指差しながら、異世界で始めての自己紹介をした。


 「ヒロ」



主人公の名前が判明しました

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