〜町から来た冒険者達〜その14
ユチェも加えて三人で戦勝会を続ける、ユチェはお酒には弱い体質だったようで、一杯目を開けた時点で完全に出来上がってしまっていた。
ここで酔い潰れて貰っても困るので、二杯目からはジュースを渡しておいた。
そうして三人で雑談をしていると、冒険者の一人がこちらに近づいてきた、確かこの人はリーダー格の男だった筈だ。
「お前等がヤーセンの言っていた期待の新人ってやつか、冒険者になるんだってな」
「そのつもりですよ」
ジロジロとこちらを見てくる、値踏みしているのだろう、あまり印象は良くない。
「なら、冒険者になったら俺のクランに参加しろよ、色々と面倒をみてやるよ」
「クラン?」
「派閥の事だよヒロ」
冒険者にはクランと言う、所謂派閥があるのだとアイザックに説明された。
ギルド公認と言うわけではないが、黙認はされているらしい。
少人数のグループをパーティと呼び、そのパーティが幾つか集まったものをクランと呼ぶのだそうだ。
クランには基本的に一人で行動している人も参加していて、一人では受けられない依頼などをこなす時に、メンバーを集めやすい利点なんかもあるらしい。
他にも、依頼が全く無い場合に資金難になった時に、お互いを助け合いましょうなど、つまりは人を集めてお互い得が出来るようにしましょう、と言う話らしい。
聞く限りは利点しかないように聞こえるが、そんな事はないだろう、おそらく何かしらの不利益になる条件もあるはずだ、そうでなければ、クランを運営するメリットが無い。
「なるほど、そう言ったものがあるんですね、考えておきます」
「おう、使える奴はいつだって歓迎するぜ」
そう言うとリーダー格の男は、笑いながら歩いて行ってしまった。
「どうすんのヒロ、私はあの人なんかやだよ」
酔ってうとうとしていたユチェも、きっちり話を聞いていた様だ、正直自分としても気に入らない、メリットだけしか教えてくれない奴には裏があるものだ。
「良い感してるぜ嬢ちゃん」
ヤーセンだ、遠巻きにこちらを見ていたのだろう。
「アイツはギグ、小さなクランを運営してる、見ろ、今ギグが話してる奴等がクランメンバーだ、この討伐にはギグを入れて5人参加してる」
ギグと呼ばれた男は、仲間達と酒を飲み交わしていた。
「つっても、誤解はすんじゃねえぞ、別に悪人って訳じゃねえ、ただちょっと、金に汚ねえんだ。クランへの上納金も他より値がはるし、新人使って小遣い稼ぎを欠かさねえ様な奴だ。そもそもギグにはクランを運営するような手腕はねぇさ」
やはりクランに所属するのも、ただと言う訳にはいかないようだ、と言っても微々たるものらしい。
ヤーセンは随分ギグの事を嫌っているようだ、何かしら色々あったのかもしれない。
その事については特に触れはしなかったが、クランの事は色々とおしえてくれた。
依頼と言うのは基本的に、人数制限ピッタリで受けるのが基本らしい、人数が増えると取り分が減ると言うシンプルな理由だ。
その際に役に立つのがクランの一番の利点らしい、パーティの人数が足りなければ補充が、超過している場合は、超過したメンバーを他のパーティに混ぜてもらったりと、人数調整がしやすくなるのだそうだ。
他にも戦力の偏りを防いだり、特殊な技術を持っている者に、適切な依頼をあてがったり出来るらしい。
入っていて損はないが、入るクランは良く見極める事だと助言をされた。
「ヤーセンはクランに入ってないのか?」
「俺のクランは、ちょっとな」
ヤーセンは急に表情を暗くして少し俯くと、持っていたお酒を一気に飲み干した。
「ちょっと前にな、無くなっちまった、クランを纏めてたパーティの連中がな、死んじまったんだ」
ヤーセンが他のパーティに混じって依頼をこなしていた時に、魔物討伐の依頼に、クランメンバーを連れて向かったまま、帰って来なかったらしい。
「12人で向かって、帰って来たのは二人だけだ、会った時には酷ぇ顔をしてた、依頼があった場所からは、帰って来るのに3日は掛かるってのによ、可哀想に、その間もずっと震えてたんだろうぜ」
アイザックやユチェも、神妙な顔をして聞いている。
結局ギルドに報告を終えた二人も、バラバラに故郷に帰ってしまったのだそうだ。
クランは解散して、残っていたメンバーも他のクランに移動してしまったらしい。
ヤーセン自身も次のクランを探している最中なのだそうだ、今回の依頼ではたまたまギグと一緒になったのだと言っていた。
「いいかお前等、冒険者にはそう言う事だってあるんだ。そうならない様に、出来る事は全部しろ、そうしなきゃ、次に居なくなっちまうのは自分だ」
ヤーセンは手を振りながら、やめだやめだ暗い話はと言い、話を変えた。
ちょうどそこにビッツ達がやってきた。
「飲んでるかヒロ!ヤーセンさんと何の話してんだ?」
「先輩に冒険者の心得を教わってたんだよ、後はクランの話だな」
「クランかぁ、俺達もまだ所属してないからなぁ」
そう言えばビッツ達は、先輩に誘われて今回の依頼に来たのだと言っていた。
「ビッツを誘った先輩と同じクランはどうだ?」
「俺はクランなんて作る柄じゃねえよ」
ヤーセンが代わりに答えた、先輩ってヤーセンの事だったのか。
「まぁどっかには入るつもりだよ、実際便利だと思うしな、ヤーセンさんにご教授願うさ」
その後も雑談は戦勝会が終わるまで続いた、川辺を片付けて教会に帰る。
ビッツ達は明日には村を出るらしい、見送りに行くよと言っておいた。
ユチェは完全に眠ってしまっていた、アイザックにユチェの家族を探しに行ってもらい、やって来た兄に任せておく事にした。
今日は一日本当に疲れた、良く眠れそうだ。




