〜町から来た冒険者達〜その13
その後も作業は続き、一段落ついた頃には既に日が暮れかけていた。
夕食は戦勝会も兼ねて、川辺でキャンプファイヤーを取り囲み、バーベキューをするらしい。
幸いな事に肉はいくらでもある、美味いかどうかは置いておくとしてだが。
村からはお酒の類も振る舞われるようだ、出す所は出すと言う事だろうか。
何にせよ、こちらの世界のお酒は初めてだ、元々飲む方ではないが、興味はそそられる。
夕食が始まる前に、一度教会に帰って服を着替えておく、流石に血生臭すぎるのではないかと思ったのだ。
身体にも匂いが付いていそうなので、洗剤を染み込ませた布で綺麗に拭いておく。
さっぱりした後は教会の前で、フロイド神父やメアリーの一家を待つ、みんなも戦勝会に参加するらしい。
「そろそろ時間でしょうか」
教会からフロイド神父が出てきた、メアリー達を待つ間に今日の出来事を報告しておく。
フロイド神父は、みんなの無事を神に感謝し始めた、実際今日は女神様の祝福とやらに随分と助けられた。
特に信仰心は無いが、感謝の祈りを捧げておく。
二人で祈っていると、メアリー達がやってきた、揃った所で川に向かう。
川を目指して歩きながら、村長とメアリーに森での様子や出来事などを報告しておく。
村長は興味深そうに聞いて居たが、メアリーは少し呆れ顔だ。
まぁあれだけ危険な事はしないようにと、釘を刺されておいてこれなのだから、仕方ない気もする。
川辺に近づくと、肉の焼ける香ばしい香りが漂ってくる、何かタレでも使っているのか、甘い香りも混じっている気がする。
調理場に近づくと、調理をしていた女性に串焼きを手渡された。
やはり何かしらのタレの様な物に漬けて焼いているようだ、さっそく頂いてみる。
余り獣臭さは気にならないが、ちょっと硬い、噛み切るのに力がいる、タレは甘塩っぱい味のタレだ、魚の煮付けなんかに使われてそうな味付けだと思う。
めちゃくちゃ美味しいと言うわけでは無いが、悪くはないんじゃないだろうか。
美味しいですよ、と調理してくれていた女性に告げると、今度はつくねの様な物を渡された。
つくねの方は何種類かあるみたいだ、それぞれ色が少しだけ違うように見える。
練り込まれた調味料が多少違うのかもしれない。
幾つか食べ比べてみると、やはり味が違う、辛いものもあれば、甘いものもある。
肉を焼いた物と違い、こちらは硬くないので食べやすい、個人的にも好きな部類の料理だと思う。
「ようヒロ、食ってるか?今日は本当に助かったぜ」
振り返るとビッツ達が居た、ビッツとマルクスは顔が赤い、酔ってるのだろう。
リリィはお酒は遠慮した様だ、ステラ教で禁止されているわけではないので、元々飲まないタイプなのだろう。
代わりに果物を絞ったのであろうジュースを飲んでいる、果物と断定出来ないのがこの世界だ、根菜の煮詰め汁と言う可能性もある。
「ヒロ、頑張った、飲め」
マルクスからコップを渡された、ビールかワインの様な物が出てくるのではと予想していたが、キャンプファイヤーの火があるとは言え、木のコップの中は良く見えない。
匂いを嗅いでみると、ミントの様な清涼感のある香りがした、アルコールの匂いもキツい気がする。
これは大分強い酒なんじゃないだろうか、この身体で飲んで大丈夫か、少し不安ではある。
とは言え、飲んでみない事には始まらない、軽く口をつけてみる。
口の中にミントの香りが広がる、口当たりはサラサラとしていて非常に良い、そしてほのかに甘い、これは凄く飲みやすい。
ただ、アルコールが少し強めな気がする、ビールよりは強いんじゃないだろうか、ワイン位な気がする。
「飲みやすいな、美味しいよ」
「おいおいなんだヒロ、その歳で飲めるのかよ、良いねぇ、ほら、乾杯!」
ビッツと乾杯をしなおして、もう一口飲む、満足だったようで、笑いながら歩いて行ってしまった。
どうやら相当飲んでいるらしい、リリィが後ろを付いて行った、何かしでかさない様に見張っているのだろう。
つくねをもう三本貰い、キャンプファイヤーの方へ移動する。
冒険者達も村人も入り混じって、ワイワイと騒いでいる。
怪我人は出たものの、死人は出なくて本当に良かった、冒険者側としても結果は上々、村も平和になり万々歳と言った所か。
適当な場所に座って、コップを口に運ぶ。
「やぁヒロ、もう飲んでるみたいだね」
「そう言うお前もな」
アイザックがコップを持って現れた、隣に腰掛け、乾杯をする。
どうやらアイザックは、初めてのお酒と言うわけではないらしい、何度かは飲んだ事があると言っている。
二人で串焼きを食べて、飲んで、話をしていると、ユチェが現れた。
「二人共お酒飲んでるんだ、美味しいのそれ?」
「まぁ、飲みやすくはあるかな、ユチェも貰って来いよ、何事も経験だろ?」
「んー、わかった、試してみようかな」
調理場に向かって行くユチェを見送る。
「ユチェも、あんなふうにならないと良いけどね」
何の話だと思い、アイザックが指差す方を見ると、カーズが倒れ込んでいた、どうやら完全に眠ってしまっている様だ。
先程まではペース良く飲んでいたらしい、大丈夫なのかと思ったが、すぐ近くにカーズの母親が立って居た、放っておいても大丈夫だろう。
ユチェが木の板の上に、コップやら串焼きやら色々と載せて帰ってきた。




