〜町から来た冒険者達〜その12
手伝いの呼び掛けに応えてくれた村人は、かなりの人数になった。
手引きのリアカーを何台か使って、森の中から獲物を運び出す、もちろん護衛は必要なので、冒険者と村人を何グループかに分けての作業だ。
こちらは村人枠なので、剣を持ってはいるものの、やる事は運搬の方だ。
リアカーを引きながら森を歩いていて分かったが、これは大した重労働だ、地面が整っていないので、尋常じゃない程に引きにくい、ただでさえ重いリアカーだが、行きはともかく、帰りは獲物も積んでいるので、更に重い。
全力で力をこめてリアカーを引く、押してくれている人達と力を合わせて、なんとか動かしながら森を戻っていく。
元世界でも、ここまでの重労働はした事がないと言える。
なんとか森を抜けて帰ってきた、後は川まで運ぶだけだ、森の中よりは道が滑らかでまだマシだ。
川辺まで着いた時には、全身ガクガクと震えていた、今日一日で一ヶ月分は筋肉を使った気がする。
とは言え休んでいる訳にはいかない、荷台から獲物を下ろして、流されない様に川に沈めていく。
血抜きはしていないので、若干肉は生臭いかもしれないが、食べられない事はないだろう。
町まで持って帰る事が難しい肉は、基本的に村の取り分だ。
冒険者も肉の加工が終わるまで、村で待っているわけにもいかないだろう。
解体作業だが、これは出来る人が限られている、アイザックやカーズも、森狼は兎も角、森熊は流石に解体出来ないと言っていた、二人共この機会に覚えておくつもりらしい。
特に覚えるつもりはないが、興味はある、折角なので見学させて貰うとしよう、だが先ずは獲物の運び出しだ、身体に鞭打ちリアカーを引いてもう一周森に入っていく。
更に一周を終えて川まで帰って来た、二周目は獲物の数も少なかったが、それでも重労働な事に変わりはない。
もう駄目だ、一歩も動けない、今日何度目かわからない限界だ。
川辺に倒れ込む、息が全く整わない。
「何よヒロ、情けないなぁ、男の子でしょ」
顔を上げる事も出来ないので、誰かは確認出来ないが、この声はユチェに間違いない。
たとえこの世界でずっと生きていく事になっても、ユチェを嫁にするのはやめておこう。
一度目の人生の死因はよくわからないし、そもそも死んだのかすら分かっていないが、ユチェと一緒になったら、この人生の結末は過労死だ。
「ハァ、おま、だっ、はぁ、こ、重、ハァ」
「何言ってんのか全然わかんないよ?」
ユチェが隣に座って、瓜ボトルと濡れた布切れを差し出してきた。
瓜ボトルの中の水を喉に流し込み、濡れた布切れを顔に当てる、冷たくて凄く気持ちが良い。
「お疲れ様、もう一息だから頑張ろうね」
ユチェはそう言うと、解体作業をしている方へ歩いて行った、あっちの作業を手伝っているのだろう。
くっ、やられた、ギャップで攻めてくるとは、中々高度なテクニックを持っていやがる。
他の奴なら一撃で持っていかれた所だろう、30年以上の人生経験がなければ危なかった。
少し休んでから解体作業を覗きにきた、森狼は既に見慣れたものだが、森熊の方は独特な方法を使っている。
鱗が硬くてナイフだと刃が通らないのだろう、鱗の継ぎ目をナイフで刺し込んだ後は、ノミとトンカチの様な物を使って、鱗に切れ込みを入れていっている。
ある程度部位毎に切れ込みを入れたら、継ぎ目からナイフを差し込み、鱗と肉を切り離していく。
なるほど、あんな風に鱗だけ綺麗に剥がしていくわけか。
剥がれた鱗はどうやら連結されているらしい、紐で括れば、そのまま鱗の鎧として使えそうだ。
まぁ、あのサイズを着れる人間がいればと言う話だが。
アイザックやカーズが、剥がされた鱗を持ったり叩いたりして調べていた。
「こりゃ硬ぇな、どうやって加工すんだ?」
「うーん、何度も叩いて形を変えていくんじゃないかな?」
「おっ、小さな冒険者諸君、こいつの加工方法が知りたいのか?教えてやるよ」
ヤーセンさんだ、アイザック達に合流して、ヤーセンさんの話を聞く事にする。
どうやらヤーセンさんは元々鍛冶屋の息子らしく、若い頃は父親に色々と仕込まれたそうだ。
兄が鍛冶屋を継ぐ事になったので、ヤーセンさんは冒険者になって、まだ知らない素材の加工方法や、武具の作り方などを調べて、手紙に書いて兄に送っているらしい。
鱗の加工方法は程々に、俺の兄貴は腕が良くてなぁと、兄自慢をされ続けた、何しに来たお前。
「まぁ、今回無事に帰れるのはお前等のお陰だよ、お前等も冒険者になるんだろ?だったら町に来るよな?そん時は遠慮なく頼って来いよ。俺はヤーセンだ、改めて宜しくな」
「ヒロです、その時はよろしく頼みますよ、ヤーセンさん」
「堅苦しい言葉使いはいらねえよヒロ、命の恩人じゃねえか」
「そうですか?じゃあ、よろしく頼む、ヤーセンさん」
「おう!任せとけ」
ヤーセンさんと握手を交わす、アイザック達も自己紹介をすませて握手をしていた。
皮や鱗剥ぎも、肉の下処理も、まだまだ作業は残っている、さて次はどこから手伝うべきか。
少し回復した体力をもう一度空にすべく、仕事を探し始めた。




