〜町から来た冒険者達〜その9
「全員無事か?」
もはや息も絶え絶えだ、カーズがガッツポーズを決めながら叫び、アイザックはこちらに拳を伸ばしてくる。
アイザックと拳をぶつけ合い、カーズに斧を渡す、ひとまずは1匹、他はどうなっているのか。
咄嗟に投げ捨てた剣を拾いながら、辺りを見渡す。
エリックさんの方はもう一息で終わりそうだ、ビッツ達も回復を終えたリリィやユチェが参戦して、有利に進めているように見える。
回復されていた冒険者は、残念ながらまだ動き回れる程には回復していないらしい、余程傷が深かったのだろう、森熊の相手を優先させたのか。
「ヒロ、次はどうする?」
魔熊の相手をしている冒険者達は、数を増やしている、周りの敵を相手していた人達が、加勢に入ったようだ、敵ももう残り少ない。
増える可能性はあるが、まずは森熊だ。
「アイザックとカーズはエリックさん達を、俺はビッツ達に加勢する」
「もうフラフラなんだ、気をつけなよ」
「お互いやられねぇようにな!」
アイザック達が走り出す、こちらもビッツの援護に向かう。
足が重い、疲労はもう限界に近いが、まだなんとかやれそうだ。
自分に言い聞かせて足を前に動かす。
「ユチェ、あっちは終わった、みんな無事だ」
「ヒロ、森熊の鱗が硬すぎて、攻撃が通らないよ」
「腹側の鱗ならまだ柔らかい、全力で雷を落として隙を作ってくれ、全員で一気に決める」
「うん、わかった、時間かかるよ」
「任せとけ」
森熊の攻撃を避け続けているビッツに作戦を伝える。
「さっきも一発入れて貰ったが、そんなに怯まねえぞ!」
「ユチェの全力なら必ず怯む、時間を稼ぐ」
「ビッツ、俺は、ヒロを信じる」
「よし、なら異論はねぇ!リリィ!ユチェを頼む!」
出来る限り後ろに回り込み、背中を斬りつけていく、手の振りが届く範囲は危険だ、しかし、避けてばかりと言うわけにはいかない、気を引き続けなくてはならない。
息が上がる、既に体力も限界が近い、膝が笑っている、それでも下がるわけにはいかない、後ろにはユチェとリリィがいる。
ユチェの詠唱が聞こえる、もう少しだ、ビッツとマルクスも懸命に戦い続けている。
近い位置から森熊の叫び声が聞こえてきた、アイザック達だろうか、あちらは終わったのかもしれない、確認する余裕はない。
森熊がこちらを向いている、横薙ぎに手を振り抜いてくる、後ろに飛ぼうとしたが、足に力が入らない、まずい、避け切れない。
咄嗟に剣で受け止める、森熊爪と剣が激しくぶつかる音がする、駄目だ、只でさえ、もう足の踏ん張りが効かない、受け止め切れない。
勢いよく弾き飛ばされる、地面に叩きつけられても止まる事はなく、ゴロゴロと地面を転がる。
リリィの悲鳴、ビッツとマルクスが名前を呼ぶ声、遠くからはアイザック達の声も聞こえてくる。
食らってしまった、肩から腕に激痛が走る、なんとか手放さなかった剣を杖代わりに立ち上がる。
左腕が上がらない、右手で地面から剣を抜き、なんとか構え直す。
森熊がこちらを向いて吠えている、次の一撃はもう耐えられないだろう。
森熊がこちらに向かい走り始める、もう足も動かない、たがその視界の端、こちらに走ってくるビッツやマルクス、その更に奥にユチェの姿が見える。
吹き上がる魔力の風、光球が乱れ動くその中心に、右手を高く上げたユチェが立っている。
「惜しかったな、俺達の勝ちだ」
ユチェがその右手を振り下ろしながら叫ぶ。
「ライトニング・ボルト!!」
光が走り轟音が鳴り響く、地面が揺れているのではないかと言う程の衝撃だ。
四つん這いでこちらに向かっていた森熊が、叫びながら立ち上がる、口からは血を吹き、体中から煙が上がっている。
ビッツとマルクス、駆けつけて来たアイザックとカーズが一気に森熊にトドメを刺す。
森熊はその場に倒れて、動かなくなった。
みんなの所に行こうとしたが、足が上がらない、その場に倒れてしまった。
先に回復をしなければ、駄目だ、魔力を感じきれない。
「ヒロ!大丈夫かい!?」
「馬鹿!無茶して!」
「おいおい、死なねぇだろうなヒロ!」
みんなが走り寄ってくる、アイザックに身体をおこして貰うが、力が入らない、立ち上がれそうにない。
「リリィ、まだ魔力は残ってるか?ヒロを頼む」
「はい、直ぐに回復魔法を掛けます」
「アイザック、まだ戦闘は続いてる、周りの警戒を頼む」
「大丈夫だよヒロ、ここは必ず守ってみせるよ」
アイザックがカーズとビッツを連れて周りの警戒をする、エリックさんとヤーセンさんは魔熊か、他の敵の対処に行ったのか、賢明な判断だと思う。
ユチェに何度も馬鹿と言われながら、リリィの回復魔法を身体に感じていた。




