〜町から来た冒険者達〜その5
それからは休日毎に、森の少し深くで採取をしつつ、猪や森狼を探した。
実戦に慣れるまではやはり時間が掛かったものの、今では3匹程度ならスムーズに狩りが終わる。
ユチェの雷魔法は、実戦中はまだ威力が落ちるものの、森狼を一撃で葬り去る。
味方が前に立っていても撃てる雷魔法は、色々な場面で役に立ってくれている。
カーズは集めた皮と木を使って、革の盾を作ったようだ、基本的にユチェを守る役目を頼んでいる為か、攻める技術より守る技術が上達している。
今では森狼を後ろに通してしまった場合でも、カーズが上手くカバーしてくれる様になった。
アイザックに関しては相変わらずだ、元々強かったアイザックは、今ではなんの危なげもなく森狼に対処できるようになっている。
そこそこ良いペースで森狼も狩れたので、カーズに革鎧を作って欲しいと言ったが、流石にそこまでの技術は無いと返された。
仕方ないので、アームガードや脛当てを人数分作って貰ってからは、全て行商人に引き取って貰っている。
行商人に着いてくる護衛は、初めて会ったあの日からこっちは、毎回ビッツ達が来ていた。
基本的に行商人の護衛は、毎回同じメンバーに頼むらしい、前任者は引退して故郷に帰ってしまったのだそうだ。
それのお陰で、ビッツ達とはもう友人の様に接する事が出来る様になった。
そんな風に順調に毎日を過ごしていたが、今日は朝から難しい顔をしたアイザックが教会を訪ねて来た。
「あぁヒロ、神父様はいるかな?ちょっと不味い事になったかもしれないよ」
「神父様なら丁度トイレだよ、どうかしたか?」
「今父さんが村長様も呼びに行ってるんだ、神父様と一緒に来てくれないかな?見て欲しいものがあるんだ」
「穏やかじゃないな、すぐに行こう」
トイレから戻ってきたフロイド神父に、今聞いた話をする、フロイド神父も只事では無いと感じたのだろう、少し顔を歪めた。
「わかりました、すぐに参りましょう」
アイザックに着いて教会を出る、どうやらアイザックの家に向かっているようだ。
家の前には何人か猟師達がいた、表情が硬い気がする。
どうやら裏手の方に何かあるらしい、そこには既にエリックさんと村長も到着していた。
「来たかアイザック、神父様、これを見て下さい」
「ふむ、これは」
そこには森狼の死体があった、ただの死体ではない、腹部が完全に吹き飛ばされている、傷口は爪の痕の様に見える。
「爪痕か、森熊かのぅ?いや、しかし」
森熊、森の奥で生活している魔獣だ、本でしか見た事がないが、大きな鱗で全身が覆われている熊のような生き物だ、ここの森でも少数は目撃されているらしい、だがいくら何でも。
「爪痕がデカすぎる、森熊は森狼よりちょっと大きい程度だと本に書いてあった筈だ」
「ヒロもそう思うかい?俺も一度だけ狩りの最中に、森熊の親子を見た事があるけど、親熊にだって森狼をこんな風に出来るとは思えないよ」
どうやらエリックさんもアイザックと同じ意見らしい、そうなると可能性としてありえるのは。
「森熊が魔物になったのかもしれんわけか」
フロイド神父の言葉に周りがしんとする、森熊の魔物、魔熊とでも言うべきか。
小さな村にとって魔物は脅威的だ、太刀打ち出来ないとは言わないまでも、討伐しようとするなら被害が出てもおかしくない、最悪討伐に向かった人達が全滅する事だってありえる。
「村長様、やはりギルドに調査を依頼すべきでしょう」
「そうだな、直ぐに町に依頼を出さねばならぬだろう、エリック、猟師達を率いて森の見張りを頼めるか」
「わかりました、冒険者達が来るまでは必ず村を守ってみせます」
エリックさんはそのまま猟師達と会議を始めた、村長とフロイド神父はギルドに出す依頼を準備する為、村長の家に向かった様だ。
村の側で魔物が現れたかもしれない、その知らせはすぐに村中に広がっていった。
町までは恐竜を走らせても丸1日はかかる、冒険者達が依頼を受けて村に到着したのは、森狼の死体を見つけてから5日後の事だった。




