〜町から来た冒険者達〜その1
今日は月に一度、町から行商人が来る日だ、休日だがこの日はミサが無い。
朝起きて身支度を整えた後は、フロイド神父と村長と共に、行商人に受け渡す、村で取れた農産物や畜産物、狩りで取れた物や森で採取された物の量をあらかじめ調べておく。
とは言え、あらかじめ前日に村の倉庫に運び込まれる時に、一度調べているので、ただの確認作業だ。
収穫期でも無いので、量もそこまで多くはない。
「油が4樽、香木が6束、薬草の煮詰め汁が6壺、香辛料が20ですね、森は以上です」
数を数えながら報告して行く、フロイド神父と村長はあれこれ話しながら、紙に品物の量を書き留めていっている。
行商人と言っても、一人で来るわけでは無い、この村に来る行商人は、商人が5人に、護衛の冒険者が3人、兵士が2人、多少上下する事はあるものの、概ねその人数だ。
村には殆どの場合3日滞在していく、その間は町から持ってきたものや、注文を受けていたものなどを、村の広場で売っている。
個人的な物の買取もこの時にしてくれる、四人で集めた素材もここで買い取って貰っている。
「おはようございます、村長、神父様、ヒロ。行商人が村に到着しました。」
丁度確認が終わったタイミングで、アイザックが倉庫にやってきた。
行商人はまず倉庫の物の買取から始める、広場で待っていれば、代表がそちらに来る筈だ、どのみち村長の家に行くにも、教会に行くにも、広場を通らなくてはならない。
村人に囲まれて、商人が2人荷馬車を引き連れて、こちらに向かってくるのが見える、残りの人は村の側で野営の準備でもしているのだろう、残念ながらこの村に宿屋はない。
行商人の荷馬車は恐竜に引かせている、こちらの世界では馬の代わりに、村の牧場でもいた恐竜を使っているのだ。
2台ある荷馬車には、中に色々入っているのだろう、大きな箱や樽、壺が積まれている。
「ひと月ぶりですな、今回も色々とお持ちしましたよ」
毎月来てくれる行商人の代表、ミークさんだ。
大手の商会に所属している、行商担当のひとりらしい、商会は町では小売は殆どしていないらしく、もっぱら卸業なのだと言っていた。
町や国への貢献目的で、行商を行っているのだそうだ。
「良く来てくださった、倉庫に今月分の荷物が入れてあります」
「ありがとうございます、今他の者が野営の準備をしていましてな、こちらに合流次第、荷物の積み込みと積み下ろしをさせて頂きましょう。先に品物の確認だけ済ませて頂いても?」
「もちろんです、さぁどうぞこちらへ」
村長はそう言いながら、先程書いていた紙をミークさんに渡して、フロイド神父と共に倉庫の中に入っていった。
「それじゃあ、俺達も品物の用意をしに行こうか」
「そうだな、カーズとユチェはもう小屋に?」
こちらも昨日の内に、今日売る予定のものを森沿いの小屋に集めておいたのだ、一先ず小屋に集まり少し時間を潰してから、全員で品物を売りに行く予定を立てている。
アイザックの提案で少し野営の準備を見てから、小屋に向かう事にした。
野営地では、護衛の冒険者と兵士が協力して、テントを立てている最中だった。
まだ冒険者になって日が浅いのか、今まで護衛として来た冒険者より少し若めだ、何処か動きがぎこちない気がする。
「若そうな冒険者だね、見なよヒロ、あっちには兵士達も居るよ」
「アイザックはあれになりたいんだろ?」
「兵士じゃなくて、騎士だけどね、兵士は通過点だよ。ヒロは冒険者になって、それから先はどうしたいんだい?」
「まだ分からないな、冒険者をやりながら考えるさ」
あまり長く道草をするのも不味い、早々に切り上げて小屋へ向かう。
小屋では既にカーズが荷物を纏めていた、ユチェは外で戦杖を振り回している。
「二人とも遅ぇよ、ヒロ、テーブルの上にお前の剣とアームガードがあるぞ」
「悪いなカーズ、手間を掛けさせた」
テーブルの上には鞘を止めておける革のベルトと、二人分のアームガードがあった。
ベルトにはカエル革で作ったのであろう、ウエストポーチも付いている、気の利いた事だ。
アームガードは腕に巻いて、紐で括り止める形になっていた。
早速付けてみるが、悪くない、腕を振る邪魔にもならず、重さもそこまで感じさせない、軽く叩いてみたが、結構硬いような気がする。
隣ではアイザックが似たような事をしていた、どうやらアイザックも満足しているようだ。
「凄いよカーズ、店に売ってそうな出来だ。冒険者じゃなくて革職人の方が似合ってるよ」
「それ褒めてんのか?素直に喜べねぇよ」
「実際凄いぞカーズ、ここまで完成度が高いとは思ってなかった」
そう言いながらベルトもつけてみる、こちらも良い出来だ、剣を鞘から抜いたり、直したりしてみるが、かなりスムーズに動ける。
鞘はしっかり付いているが、簡単に付け外し出来る様で、邪魔になりそうな時は便利だと思う。
外に出て、剣を抜く所から斬りつける所まで、何度か繰り返し試してみる。
やはり木の剣やナイフと違って、それなりの重さを感じる。
「おぉー凄い凄い、冒険者みたいじゃん」
こちらに気付いたユチェが拍手を送ってくれた、そっちも似合っているよと返しておいた。
「どうよ?悪くないだろ?」
「完璧だよカーズ、頼んで良かった」
カーズは多少照れ臭そうに笑った後、また小屋の中へ入っていった。
そろそろ広場では露店が並んでいる頃だろう、みんなで荷物を持って、広場に向かう事にした。




