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〜順応していく、農村での日々〜その13

本日二本目です

 広場でユチェと別れて、教会に帰ってきた。

 ミサは終わっていたようだが、フロイド神父とメアリーはまだ教会の中にいた。

 血に濡れた服を見て、非常に驚いた様子だ。


 「ヒロ!大丈夫なのかね!?」


 「只今戻りました神父様、この血は俺のじゃありませんよ、狩った獲物の返り血です」


 「そ、それなら良いのじゃが、まずは身を清めて、着替えて来なさい」


 「はい、でもその前にメアリー、猪肉を分けて貰ったんです、ご家族と神父様と一緒にどうぞ」


 「ヒロが狩ったのですか?なんて危険な事を」


 フロイド神父とメアリーに、今日の出来事を軽く説明した。

 フロイド神父もメアリーも、無事に戻って来た事を喜びながら、祈りを捧げていたが、言いつけを守らず危険な事をしてしまった事は、少し怒られてしまった。

 この後、夕食を取りながらエリックさんとも話をする事になったと伝えたが、それよりも、今日の出来事で、ひとつ自分の中で明確になった事がある。


 「フロイド神父、メアリー、俺は冒険者になろうと思います」


 フロイド神父とメアリーは、少し考えている様子だったが、こちらを見ながら深く頷いた。


 「そう決めるだろうとは思っていたよ、ヒロ。君の目は、教会の中よりも、村の中よりも、もっと広い世界を見ていた。しかし、まだ暫くは村にいるのだろう?君はまだまだ幼い、たとえ、実際の年齢は違くともだ。まだこの教会で、村で学ぶ事は多いだろう。」


 フロイド神父の意見に同意する、その通りだと思う。


 「アイザック達は後二年は村に居ると言っていました。彼等と共に町に出たいと思っています」


 「うむ、それが良いだろうね。しかし、冒険者になると決めたのなら、メアリーの話を聞きなさい。メアリー、ヒロが着替えて来たら、ヒロに話をしてあげなさい」


 「はい、お祖父様。ヒロ、冒険者になると言うなら、是非聞いておいて欲しい事があります。また後で来ますね」


 そう言ってメアリーは教会を出て行った。

 話と言うのは気になるが、まずは着替えだ。

 井戸まで水を汲みに行き、裏庭に運ぶ、瓜ボトルに入っている洗剤を水で薄め、布に染み込ませる、服を脱いで、体を擦っていく。

 この洗剤は汚れを落とす力が凄く強い、その割には人体に無害であるらしく、皮膚がかぶれたり、炎症したりはした事がない。

 始めの頃は、よく洗い落とさなくても大丈夫なのかと思っていたものだ、身体全体を洗った後は、髪も洗っておく。


 洗い終わると別の布を使い、身体を拭いていく、拭き終わると、変えに出しておいた服を着る。

 鏡なんかはないので、確認する事は出来ないが、こんなものだろう。

 使った水は畑に撒いておく、これも始めは大丈夫かと思ったが、ユチェ曰く問題ないらしい。


 準備も終わったので、教会の中に戻ると、すでにメアリーが待ってくれていた。

 メアリーが座っている椅子の隣に腰掛ける、暫くは沈黙が続いたが、やがて話し始めてくれた。


 「ヒロ、私も昔は冒険者でした」


 黙って聞く事にした。


 「親の反対を押しきって、冒険者になったのです、村の外の世界へ出たかった、色々なものを見て周りたかった。町に出て、色々な人と出会い、色々な依頼をこなして行く内に、素晴らしい仲間達とも出会いました。そして、いつものように、なんでもない様な依頼をしていた日、彼等はこの世を去ってしまいました、私だけを残して。」


 メアリーは後ろに置いていた長箱を取り出しながら続けた。


 「いいですかヒロ、決して慢心せず、無理をせず、仲間を大切にしなさい。日々の準備を欠かさず、己を律して事に挑みなさい。そうしなければ、簡単に大事な者達を、自らの命を失う事になるのです、それが冒険者と言う生き方なのです。」


 メアリーは箱を開けて、中身をこちらに渡してくれた。

 古いショートソードと、先に魔石の付いた長い戦杖だ。


 「私が冒険者をしていた時に使っていた杖と、私の仲間だった人が使っていた剣です。彼女はとても勇敢で優しい人でした、貴方を導いて、守ってくれるでしょう」


 木の剣とは違う、ずしりとした重さを感じる、鞘から抜いてみると、古さを感じさせない輝きを放っていた。


 「良い剣でしょう?良く自慢をされたものです。今日言った事を、決して忘れてはいけませんよ」


 「ありがとうございますメアリー、大事に使わせてもらいます。」


 そう言うとメアリーは、満足そうに俯くと、空になった箱を抱いて教会を出て行ってしまった。

 それを見送った後、剣を鞘に収めて、戦杖を手に取る。

 接近戦も考えて作られたのであろう戦杖は、先の魔石部分を鉄で覆ってメイス状に作られている。

 これを使ってメアリーも戦っていたのだ、仲間と共に。

 まだまだ先の話ではあるが、必ず生きて帰ってこよう、誰一人欠ける事なく、そう強く思うのだった。

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