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〜順応していく、農村での日々〜その12

 ようやく川に着いた、アイザックに言われて川に獲物を沈める。

 獲物を洗わなくてはならないのだが、まずは傷の治療を終わらせる事にする。

 手頃な石に腰掛けて意識を集中させる、疲れている為かなかなか上手くいかない。

 何度か繰り返して、ようやく魔法が使えた、腕の咬み傷がちゃんと治るまで使い続ける。

 完治した時には、貧血になったように頭がクラクラしていた。

 魔力を使いすぎたようだ。


 少しフラフラしながら、獲物を解体し始めていた三人の方へ近づく。

 アイザックが猪を解体しているのを、二人で見ていた様だ。


 「あぁ、ヒロ、もう大丈夫そうだね」


 アイザックに腕を見せてこんなもんさと答える、興味があったので猪の解体を見学する事にする。

 流石に猪にもなると、解体がグロテスクだなと思う。

 アイザックは慣れたものでサクサクと進めていく、皮を剥いで、胴体を叩き割って、肉を小分けにしていく。

 解体中も子供達が話を聞きたいと言うので、カーズが話を始めた。

 ついに3匹ともカーズが仕留めた事になっていた、ユチェは呆れ顔だ。


 「猪はこんなものかな」


 「狼の片方は俺にやらせてくれないか」


 アイザックの隣に並んで、教えてもらいながら狼を解体していく。

 内臓は傷つけないよう慎重に切り取り、掻き出して、中を洗って。

 見様見真似で皮を剥がそうとするが、上手くいかない、アイザックに手伝って貰った。

 後は切り分けだが、ここから先はカーズがやりたいと言いだしたので、任せる事にした。

 カーズはこう見えて何かと器用だ、靴や服なんかもある程度自作出来るし、ウエストポーチなんかは殆どカーズが作った。


 「こっちの皮は処理が終わったら、何かに使って良いかもね」


 アイザックが少し焦げている皮を指差して言う、おそらくは買い取り価格を考慮したのだろう。

 猪と森狼1匹分もあれば、まぁ十分ではある、まだ時間はあるので、おいおい稼いでいけば良いのだ。


 「それは良いとしても、何を作る?鞄でも作ってみるか?」


 「ねえねえ、だったら水筒作らない?皮の水筒なんて冒険者っぽいじゃん」


 「待った、だったらまずは防具じゃねぇの?ヒロとアイザック用のアームガードを作ろうぜ」


 アームガード、腕に巻く防具だ、確かに今回アームガードがあれば、腕も軽症で済んでいたかもしれない。


 「俺とアイザックの分で良いのか?」


 「皮1枚だと二人分しか作れねえよ、アイザックは戦力の要だし、ヒロは無茶するからな」


 なるほど、理に適っている気がする。


 「あんまり硬いのは作れねえけど、森狼の牙くらいなら防いでくれるだろ」


 「俺も賛成するよ、防具は武器以上に大事だしね」


 ユチェもどうやら賛成らしい、こちらとしても反対する理由はない。

 皮の1枚はカーズに頼んで、アームガードにして貰う事にした。


 「じゃあ猪ともう1枚の皮は、次の休みに来る行商人に買取を頼むか、肉はどうする」


 「ここで食っても良いけど、肉を食うならちゃんと料理してえよなぁ」


 「猪は兎も角、森狼は硬いし、そんなに美味しくはないよ」


 売っても安いしねと、アイザックが付け加えて教えてくれた、苦労した割には肉はあまり価値がないらしい。

 それならばとカーズが家に持って帰らせてくれと言い出した。

 こちらは別に構わないし、ユチェも欲しそうではない。

 猪は四人で分けて、余った分をカーズが干し肉に加工してくれるようだ。

 多少は資金の足しになるんじゃないか、と言う事らしい。


 アイザックが猪の肉をこちらに渡してくる、明らかに一人で食べられる量ではない、フロイド神父とメアリーの家族にも手伝ってもらう必要がありそうだ。

 同じような量を四人で分けたが、まだかなり残っている。

 後はカーズの腕に期待しておくとしよう。


 「こんなもんかな、ちょっと早いけど、そろそろ帰ろうか」


 魔力も体力も、今日は随分使ってしまった、やはりどちらも不足している、まだまだ鍛えていかなくてはならない。

 それに戦いの技術もだ、アイザック程に強ければ、わざわざ無茶をするまでもなかった。 

 魔力、体力、技術、課題は山積みのようだが、思ったより充実はしている。


 帰り道の途中にアイザックとカーズの家があるので、森狼の片方を引き受ける事にした。

 残りの片方をカーズが、ユチェは猪肉の残りを、アイザックは3匹分の皮を担当している。


 アイザックとカーズの家に近づくと、アイザックの父親が家の前で待っていた。

 森沿いを通っている時には、子供達の親以外はみんな帰っていた様なので、姉から報告を受けたのだろう。

 ちらっとアイザックと目を合わせた、流石に危険過ぎたか、怒られるかもしれない。


 「返り血は酷いが、どうやらみな無事の様だな」


 どうやら怒っている雰囲気はない、ホッと胸を撫で下ろす。

 アイザックの父親、エリックさんだ、元兵士で現猟師、おそらく村で最も強い。

 アイザックと一緒に何度か訓練して貰った事がある、二人がかりでも勝てなかった、今でもまだ勝てないだろう。


 「獲物を見せてみなさい」


 「この3匹です父さん」


 アイザックが毛皮を見せる、エリックさんは、毛皮を確認しながら、ふむふむと頷いている。


 「なるほど、四人でこの3匹を」


 「アイザックのお陰ですよ、居なかったら全滅してました」


 「うむ、詳しく聞きたいな、みな夕食をうちで取っていかんかね」


 特に反対する理由はないが、一度教会に戻って肉や荷物をどうにかしたい。

 返り血と自分の血で汚れた服や体もどうにかしなくてはならない。


 「では教会に戻って、準備をして来ます、服も着替えたいですしね」


 「うむ、それが良かろう、ユチェとカーズはどうするかね」


 「俺は構わないですよ」


 「私は親に聞いてみないとですけど、大丈夫だと思います」


 話し合った結果、一度全員自分の家に帰って、夕食前に再びアイザックの家に来る事になった。

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