表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/87

〜順応していく、農村での日々〜その7

 絵本から始まり、聖書や動植物の図鑑の様な物を読みながら、使える単語を増やしていった、発音の方は話す方、聴く方共に、多少怪しくはあるものの、日常会話程度ならもう問題ないと言って良いのではないだろうか。

 聖書を熱心に読んでいるお陰で、今ではフロイド神父やメアリーからは、神官になりたがっているのだと思われている程だ。

 ステラ教自体に興味はあっても、神官になるつもりはなかったのだが、これから生きていく上で、そういう選択肢もアリなのかもしれない。


 読んでいた聖書を閉じて、出掛ける準備をする。

 今日は休日だ、教会ではミサがあるので、朝から軽く掃除をしたあとは、部屋で本を読んでいた。

 そろそろミサに参加する人達が集まってくる時間だ、聖書を本棚に返しておいた方が良いだろう。


 「ヒロ、今日のミサには参加するのかい?」


 部屋を出ると、ミサの準備をしていたフロイド神父に声をかけられた。

 何度か参加したミサだが、特に手伝える様な事はない、参加しても良いのだが、今日は朝から森に行く用事がある。


 「いえ、今日は森に出ます」


 フロイド神父に聖書を返しながら答える、フロイド神父は少し残念そうにしていた、どうもフロイド神父は、神官の道に進んで欲しいようだ。

 神官になるのも悪くはないと思う、他の職業に比べて安定感がある、この世界の教会は、なくてはならないと言っても過言ではない巨大企業の様なものなのだ。

 しかし、折角の異世界なのだ、もっと自分の目で見て回りたい、そうしてる内に、何故自分がこの世界に来たのか、何か理由や意味があったのか分かるかもしれない。

 教会に所属しながら探していくのも良いかもしれないが、やはりここはもっと動きが自由になる職業、商人や冒険者なんかが良いかもしれない。


 「気を付けて行ってきなさい、あまり危険な事はしてはいけないよ」


 「はい、行ってきます神父様」


 フロイド神父にお辞儀をして教会を出る、教会の外にはメアリーがいた。

 メアリーにも挨拶をして、森に行く事を伝える、メアリーは手を振って、行ってらっしゃいと見送ってくれた。

 まずは待ち合わせに村の広場に向かう、ミサが始まる少し前にと言っていたので、そろそろ良い時間だろう。

 待ち合わせをしているのは、アイザック、カーズ、ユチェの三人だ、殆どの休日はこの四人で一緒に過ごしている、もういつものメンバーと言うやつだ。


 どうやら広場には一番乗りだったようだ、井戸から水を汲み、瓜ボトルを満たして、ウエストポーチに掛ける。

 ウエストポーチはカエルの皮を使って、四人で自作した、ベルト部分は木の皮を薄くして編んで作った、出来は悪いが、間に合わせとしては使えるのではないかと思う。

 そのウエストポーチに引っ掛けられる様に、瓜ボトルをロープで縛り、木の輪っかを付けている。


 井戸はやはり魔石の力を使って作っているらしい、魔石は女神の祝福が固まって出来ているらしく、鉄なんかの鉱石と同じように、採掘で取れるらしい。

 その魔石に魔術師が色々な効果を付与する、なんでも出来ると言うわけではないが、この魔石には水を吸い込む力が付与されている。

 井戸の底には、魔石から水を一定量表に出す魔法陣が仕込まれていて、魔石に溜まった水を外に出していると言うわけらしい。


 魔石や魔法陣の費用は安くはないが、村全体の税金から費用を出している様だ。

 税金は収入から計算されて、一度村長の元に集められる、そこから村の施設や設備の為に使われて、残りを領主の元に持っていくと言う形らしい。

 もちろん無駄に使う事は出来ない、少額ならば事後報告でも良い事になっているとは言え、どんなふうに、何に使ったなど細かく報告しなくてはならないし、大きすぎる額になると事前に領主様の許可を取らなければならない。


 「お待たせ、ヒロ一人?」


 ユチェが手を振りながらこちらへ近づいて来る、いつも通りのツインテールにバンダナを巻いている。

 腰にはウエストポーチに瓜ボトル、採取や解体用のナイフを付けている。


 「まだ来てないみたいだね」


 手を振り返しながら答える。

 ユチェは、そっかと言いながら井戸から水を汲み、瓜ボトルの中に入れていく。


 「今日も遺跡周りまで行くんだよね?あの遺跡に凄い杖とか埋まってないかなぁ」


 「あの遺跡は、ギルドの人達が何度か調査したらしいし、俺達だって何度も中を調べただろ?今更何も出て来ないって」


 「そりゃあ分かってるけどさぁ」


 夢がないなぁとユチェに呆れられる。

 森を少し入った所には古い遺跡があるのだ、特に何かあるわけでもないようで、随分昔に冒険者ギルドの人達と研究員が何度か調査に来たらしいが、そのまま放置されている。


 冒険心をくすぐったので、四人で何度か中に入って調べてみたが、特に変わった物は見つからなかった、念入りに調査をしていたようで、めぼしい物も何もなく、綺麗なもんだった。

 最近はその遺跡の周りで薬草を集めたり、カエル狩りをしたりしているのだ。

 森には魔獣である森狼も出るらしいのだが、今のところ見た事はない。


 アイザックが親と一緒に何度か狩りをした事があるそうだ、そこまで危険な魔獣ではないと言っていた。

 カーズに至っては出てきて欲しいと思っているらしい、森狼の毛皮はそこそこ高く売れるのだ。

 カエルの毛皮や、薬の材料になる肝を集めたり、薬草を集めたりするより手っ取り早いと言っていた。


 「待たせたかな、水を汲んだら出発しようか」


 「すまねぇな!」


 アイザックとカーズも到着したようだ、さぁ、今日の冒険に出掛けよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ