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〜順応していく、農村での日々〜その6

 それから暫くは、教会の簡単な仕事を手伝いながら、みんなに言葉を教えて貰ったり、畑の世話をしたり、文字を勉強したり、アイザックやカーズ、ユチェと遊んだり、訓練をしながら日々を過ごしていった。


 教会に住んでいるフロイド神父と違い、メアリーは教会の側の家に、旦那家族と一緒に住んでいるらしい、その旦那の父親が今の村長なのだそうだ。

 メアリーは凄く若そうに見えたが、いくつなのだろうか、女性に歳を聞くのはなんだか気が引けたので、この世界に来て数週間経つ今でも、未だに知らない。

 そのメアリーだが、実はフロイド神父のお孫さんらしい、メアリーの父と母、つまりはフロイド神父の息子さんとその妻だが、二人とも既に亡くなってしまっているそうだ、理由までは聞けなかった。


 カーズは予想通り、木こりの家に生まれたらしい、弟と妹に両親が居るが、家は裕福では無いのだそうだ。

 みんなで遊んだ時に、食べ物が多めに取れると、カーズに持って帰ってもらったりしている、非常に助かると言っていた。


 ユチェの家は農家で、父親が実はこの村の農家長をしている、両親と兄がいて、その兄は近々結婚するのだそうだ。

 とは言った物の、農家長と言うのが良くわからなかった、なんでも、畑を広げる方向や広さを村長と相談して決めたり、育てる農作物を割り振りしたり、仕事が無い農家に仕事を与えたりしているらしい。


 アイザックの家は猟師だった、姉と妹に挟まれた長男で、両親とも昔は少し離れた所にある、領主様が住んでいる町で軍に所属していたらしい。

 将来は自分も軍に所属したいと思っていて、自主訓練を続けてきたようだ、実際槍の腕が良くて、今だに模擬戦で勝った事がない。


 やはり異世界だけあって、元世界とは微妙にずれている事も多い。

 例えば、こっちの一週間は6日しかない、基本的には5日働き、1日休みましょうと言う事らしい。

 ひと月は30日の、1年が12ヶ月と言う所は似ているが、年の初めに祝福の週と言う、特別な一週間がある、短い0月があるとでも言えば良いのか。


 時間の概念はある様だが、非常に大雑把だった、1日を朝、昼、夕、夜の4つに分けてそれぞれを更に2つに分ける、つまり、朝の上の刻、昼の下の刻と言った具合だ。

 懐中時計の様なものがあり、朝の上の刻が始まると光が8つ灯る、そこから刻が進む事に1つづつ消えていき、全て消えるとまた8つ灯るようだ、早い話が、1日8時間制らしい。

 とは言え、この村で時計を持っている人なんて、フロイド神父と村長の二人しか居ない、この村ではあってないようなものだ。


 動物の名前は割とシンプルに名付けられているみたいだ、例を挙げると、モコモコしたカエルだが、あれはカエル類の原種扱いであるらしく、名前がカエルになっている。

 もっと大きくて、毒を吐くカエルがいるらしいのだが、そいつの名前が大毒カエルになっている、非常にわかりやすくて好感が持てる。

 動物や植物の名前は、偉い人達が研究をしながら名付けていったようだ。


 それで驚いたのが、教会の力の大きさだ、まずそう言った、所謂学者が集まって色々な事を研究する機関だが、これは国と教会が纏まって作り上げているらしい。

 魔法、動植物、歴史、神話から、薬学、医学、錬金術なんてものまで多岐に渡る。

 科学はないのかと思ったが、聞いている限りは錬金術に位置するみたいだ、魔法があるので、科学は発展しにくいのかもしれない。


 基本的にこの世界の宗教は、女神ララ・ステラを信仰するステラ教と、邪神ドルフを信仰する邪教の2種類しかなく、当然ステラ教の信者が大多数を占める。

 宗教に国境はなく、全ての国でステラ教が信仰されているらしい。

 それはそれでちょっと危うくないかとも思う、巨大過ぎる力には腐敗が付き物だ。


 ステラ教の教えは道徳心が非常に強い、困っている者には手を差し伸べなさい、勉学に励み正しい考えを身につけなさい、身体を鍛え健康に生きなさい、正しくあり神と人に尽くしなさい、誤りを誤りと認め反省しなさい、などなど、分かりやすく善性である。


 最も興味深かったのは神話だった、メアリーから貰った絵本と教会にあった聖書を並べて、少しずつ読んでいった。

 聖書曰く、始めに二人の神がいた、二人の神は協力して世界を作り、女神は人と植物を、邪神は獣を作った。

 女神は人に知恵を、邪神は獣に力を与えて世界を見守っていたが、知恵を付けた人が傲慢になりすぎて、世界を壊し始めてしまったらしい。

 それに怒った邪神が、獣に更に力を与えて人を滅ぼそうとした。


 人々は自らの間違いを悔い改めて、神に赦しを乞うた、女神は人々を赦したが、邪神には聞き入られなかった。

 人を守る女神と人を滅ぼす邪神、人々と獣達の戦いが始まった。

 女神は人を守るため、獣の力の一部を取り込む事が出来る力を人に与えた、幾つかの一族がその力を使い、獣達に対抗した。


 戦いは遥か長きに渡ったが、決着の時が来た、邪神はその全ての力を持って世界を消そうとした、女神はその全ての力を持って世界を守ろうとした。

 結果二人は全ての力を使い果たして消滅してしまった、邪神は世界に呪いを残した、女神は世界に祝福を残した。


 そんな感じの神話だったが、面白いのは、その祝福とやらが魔法の源になっているらしい。

 女神の祝福は空気や地面、水に溶け込み、魔力と言う形で人に力を与えてくれているのだそうだ。


 邪神の方の呪いだが、残念ながらこちらも残っている。

 この世界での動物は大きく分けて、獣、魔獣、魔物に分類される、基本的に人に直接的な被害を出さない動物は獣、人を襲う動物は魔獣、その魔獣が呪いによって力を得たものを魔物と呼んでいる。

 他にはアンデットも居るらしい、魔物によって殺された動物が、呪いの力で再び動き出すのだそうだ。


 聖書にはその後、聖者が現れて善行を成しつつ世界を巡り、弟子を増やし、ステラ教を広めていったことなどが細かく書かれていた。

 教会の教えのベースは、この聖者の言動や女神の教えであるらしい。

 教会は宗教を広げる事だけが目的ではなく、教育施設や医療施設の側面もあり、国の支援を受けていて、ほぼ全ての村や町にあるのだそうだ。

 なるほど、教会が力を持っていると言うのも頷ける話だった。

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