〜順応していく、農村での日々〜その5
短いですが、本日2本目です
夕食も非常に美味しかった、ナマズの様な見た目の白い魚を炊いた物だったので、ちょっと身構えたが、身は凄くフワフワとしていて、口の中で解けていくような感覚が良かった、味としては塩味の効いたスープの味が強くて、どちらかと言うとスープの味を楽しむ為の魚といった具合だ。
食事を終え、食器をフロイド神父の部屋に返しにいく。
動物の絵本の著者を指差し見せると、恥ずかしそうに自分を指差し、ウンウンと頷いていた。
やはりこの本はフロイド神父が書いた物のようだ。
洗濯物を取り入れようと、裏庭に出る、すでに辺りは夕陽が差し込んでいた。
洗濯物はどうやらしっかり乾いているみたいだ、順番に折り畳んで、籠の中に入れていく。
乾いた洗濯物を良く調べてみたが、汚れは凄く落ちている気がする、洗剤の性能なのか、他の何かの要因かは分からないが、漬け置き洗いでも充分に効果があるみたいだ。
籠の中に入っている布の内一枚を貰っておく、残りはどうしようかと考えて、教壇の上に置いておく事にした。
明日の朝にでも、フロイド神父かメアリーが何かに使ってくれるだろう。
バケツを持ち、井戸に水を汲みに行く、もう水汲みの作業にも慣れてきた。
広場では、同じ様に水を汲みにきた子供がいたり、村のお母様方であろう人達が、井戸端会議を開いていた。
ついでに掲示板も見ておいたが、張り出されている物は無かった、どんな事が張り出されるのだろうか。
教会に戻り、フロイド神父の部屋をノックする、汲んできた水のお裾分けだ。
フロイド神父は瓜ボトルを2つ持ってきて、それに水を入れ、その片方をこちらに渡してきた。
どうやら水筒代わりに使わせてくれるらしい、残りの水は壺の中に移し替えていた。
バケツを物置に片付けて部屋に帰る、布を取り出し、瓜ボトルの水を布に染み込ませ、絞って体を拭いていく。
川で水浴びをする事も考えたが、ひとまずはこれで間に合わせておく事にした、他のみんなはお風呂とかどうしているのだろうか。
瓜ボトルの水を飲み、今からどうするかを考える。
今から出掛けても、すぐに夜になってしまうだろうから、日が落ち切るまで本でも読もうかと思う、単語の意味はわからないが、アルファベット表を見ながら、単語の発音だけ解読していく。
元世界ではここまで勉強家ではなかったが、人間必要に迫られると、やる気が出るものだと、自分の事ながら感心してしまう。
異世界に来てまだ2日目、当然と言えば当然なのだが、この世界は新しい事の連続だ、知らない動植物、知らない言葉、知らない生き方。
中でも魔法は元世界では絶対に経験出来なかった物だ、自分でも使える様になるのだろうか。
望んで来たわけではないし、帰れるものなら帰りたくはあるが、それでもこの世界は魅力に溢れている。
自分の頭の良さでは、現代知識があまり役に立ちそうも無いのが残念ではあるが。
出来る限りの事をして、この世界を生き抜いていこうと思う。
もう陽も沈んでしまった、残念ながら電気どころかロウソクもないので、今日の読書はここまでだ。
農作業やら洗濯やらで、体は疲れ切ってしまっている、今日はぐっすりと眠れそうだ。
明日は何をしようか、まずは言葉が話せる様になりたいものだ、ゆっくりでも確実に前に進んでいこう。
そう思いながら、眠りについた。