〜今日から異世界生活、日常から非日常へ〜その1
太陽の光が1日の始まりを告げる、どうやらアラームがなる前に起きられたらしい。
閉じたままの目を開けて、仕事に行く準備をしなくてはならない、しかし、何かがおかしい。
布団がない、寝ている間に蹴り飛ばしてしまったのだろうか?
いや、そんな事よりベッドがない、何故か草の生えた地面の上で寝ているらしい感触がつたわる。
そんな馬鹿なと思い目を開けると、そこに見慣れた天井などはなく、ただ空が広がっていた。
「...はぁ?」
昨日の夜は外で寝ていたか?いやいや、そんな訳はない、シャワーを浴び、ベッドに入って、適当なスマホゲーを弄りながら寝た筈だ、身体を起こし辺りを見渡す。
緩やかに流れる川、舗装もされていない道、近代的な建物など一切なく、かなり遠くに村のようなものが見える。
何処かの田舎にでもいるのだろうか?しかし、なぜ?寝てる間に運び出されて、ここに放置された?
いやいや、わけがわからない、誰が何のために、そんな事をする。
「グェグェグェクォ」
カエルの様な鳴き声にビクッとして、そちらを振り向く。ただ、そこに居たのはカエルのような何かだった。
いや、フォルム的な事を言うなら、カエルで間違いないがしかし、そのカエルには全身にモコモコとした羊の毛の様な物が生えていた。
「なんだこいつ?」
触ってみようかと手を伸ばすと、カエルもどきはピョンピョンと跳ねて逃げて行ってしまった、あんなにモコモコしたカエルもいるんだな。
とりあえず立ち上がってみる、足元から伝わる草の感触が心地良い、陽気は暖かだが、風が吹くと少し肌寒くもある。
それはそうだ、今はパンツにシャツ1枚なんて格好でいるのだ、ズボンや上着を着たい所だが、当然周りには何もない。
「あぁ、成る程、夢か...」
そこでようやく自分が夢を見ているのだと気付く、夢にしてはリアルではある、夢っていうのはもっとフワフワしているものだ。
しかしまぁ、夢なら程なくアラームさんの手によって現実に引き戻されるだろう。
それから、朝支度をして仕事に行かなくてはならない、今日も一日変わらない日々を変わらずに過ごして行くのだ。
「折角だし、目が覚めるまでブラついてみるか」
夢から覚めるまでの時間を散策して潰す事にした、辿り着く前には目を覚すだろうけど、ひとまずはこの道を村の方へ向かい歩いて行く。
素足なので少々歩きにくい、小石なんかがちょっと痛い、さっきのカエルはまた出てこないだろうか、凄くモコモコしていて触り心地が良さそうだった。
街道沿いには時折野草の花が咲いていて、それを観察しながら村へ向かう、見たことが無い花だったが、紫の小さな花が可愛い、鈴蘭の様にも見えるが、鈴蘭の仲間なのだろうか。
タンポポの様な花も咲いてる、しかし、タンポポと言うには二回り程大きくて、水色の花弁をしている。
何か久々にゆっくりしている気がする、朝起きて仕事に行き、それなりに働いて、帰ってきて、適当にゲームをしたり、動画をみたりして寝る。
休日は友人や彼女と遊んだりと、そんなどこにでもあるような日々を過ごしてきた。
田舎の道を花を愛でながら歩くなんて、もう何年もしていない、子供の頃以来ではないだろうか、少し若返ったような気がする。
向かう途中喉が渇いてきたので、道沿いに近い場所から川に寄る事にする、川辺の石は丸みを帯びていて、小石が転がる道よりむしろ歩きやすかった。
川の水は澄んでいて綺麗だ、目に付く範囲に魚は居なかった、少し残念ではある。
川の水を飲んで良いものか迷ったが、良く考えたらこれは夢なのだ、適当に手で掬い上げ、口に運ぶ。
「うん、美味い」
とは言ったものの、水の味の差なんてわからない、雰囲気で言っただけだ。
ついでになんとなく顔を洗っておく、サッパリしたが、タオルもないので、犬のように顔を振っておいた。
水の反射を使って、身だしなみを整えようとする、今の状況では特に意味はないだろうが、習慣というやつだ。
「...えぇ?」
そこに映っていたのは、ミドルダンディーな30過ぎのおっさんではなく、10代も過ぎたばかりであろう少年の顔だった。
自分である事には違いない、だが、若返っている、まぁしかし、夢なのだから、ありきたりな話ではあるのかもしれない。
若い頃の自分をみて、あぁそう言えば若い頃は、こんな顔立ちだったな、やっぱり老けたもんだなとも思ったりもする。
再び村に向かって歩き始める、割と長い時間歩いて来たが、そろそろ目を覚ましても良い時間ではないだろうか?
そんな事を考えながら歩いてると、青々とした畑に到着した、植えられてる野菜は大根とかニンジンあたりの根菜に見える、他にはトマトか何かも育てられているらしく、奥の方には柵に絡ませて育てているらしき物も見える。
トマト畑の隣に小屋がある、ちょっと興味が、湧いたので、中を覗きに行ってみる。
「お邪魔しまーす」
農具入れに使っているのか、小屋にはドアが無かった。
クワに鎌や籠、それに良く分からない農具に、赤い髪のショートミドルをツインテールにしている、白いバンダナが良く似合う活発そうな女の子。
いや、人が居るじゃないか、こちらを見てピクリとも動かない。
「えーっと...あの...」
「******!****!!」
聞いた事も無いニュアンスの言葉で何かを叫んでいる、それはそうかもしれない、良く考えなくても、こちらはパンツ1枚の変質者にしか見えないだろう。
「ちょっと!待ってくれ!俺は...」
「****!」
女の子が近くに立てかけていた棒を取り、殴りかかってくる。
一振り、二振りとなんとか避けながら説得しようとするが、言葉は全く通じそうにない、そうこうしている内に、良いのを一発頭に貰ってしまった。
薄れていく意識の中、あぁ、目覚めは最悪な気分になりそうだ、なんて事を考えていた。
長々としたストーリーになりますので、緩くお付き合いください
少し修正しました。