8 約束だよ
この回は何回も書き直してみたけどなかなか上手く書けなかった(>_<) また時間があれば何回でも書き直します!!
……その日、栞は夢を見た。
すぐに夢だとわかった。
彼がいたから。
「……ごめんね」
彼女は真っ先にこういった。もっといいたいことがあった。どこに行ってたの?会いたかったよ。どうして、いなくなったの?
でもこの言葉を選んだ。栞は後悔してたのだ。傷ついた彼に気付いてあげられなかったこと。引き止められなかったこと。彼のくれたネックレスをなくしたこと……。そのすべてを、謝りたかった。
「ううん、君は悪くないよ。
俺こそ、ごめんね」
あぁ、やっぱり、そういうと思った。彼女はそう思った。
ホントに、優しすぎるよ。
「……俺、ここからずっと栞を見てたよ」
そういって彼はいつものように栞に向けて微笑む。
「あの青いネックレス……大切にしてくれてたんだね。」
「……うん」
当たり前じゃない。あなたが最後にくれた誕生日プレゼントなんだから。
「あのね、栞。」
「……なぁに?」
栞は彼に顔を向け、それからすぐに目をそらした。
……ずるいよ、笑わないでよ。
「俺ね、この先栞がどんな人を好きになっても、栞を応援しようと思う。
ここから栞の幸せを祈っていようと思う。」
栞はもう一度彼のほうを向く。今度は目をそらさない。
きっと、これが最後。
「……でもね、これだけは約束してほしいんだ。」
「……なぁに?」
とまらない涙を必死で拭った。一秒でも長く、彼を見ていたかったから。
・・・・・・・
起きてしまったのは仕方がない。
栞は体を起こし、時計をみる。まだ5時だ。
もう少し長くいれたら……一瞬そう思ったが、すぐに吹っ切れた。
「……約束するよ。約束する。」
暗い部屋の中で、栞は一人つぶやくのだ。
・・・・・・
こんなに朝早く来たのは初めてかもしれない。太陽がもうすぐ顔を出す頃、栞は昇降口で上履きを履きながらそんなことを考えていた。
今日は文化祭二日目。彼女がみんなの前で歌う日である。早く目覚めてしまった栞は、折角だから朝一番にいって練習しようと考えたのだ。
体育館に入ると、ちょうど朝日が昇って来たようで、当たりは太陽の光で明るく照らされていた。
「……あっ」
栞は見つけた。太陽の光に照らされたステージの上で、仁王立ちをして立っている女王様を。
「……栞っ!!」
突然、舞台の上の少女が栞に怒鳴り付けた。栞はびっくりして彼女をみた。その娘の様子はとても不機嫌そうだった。
「あんたって、ホントにズルいよ!!
性格いいし可愛いし、胸が大きい癖にモデルみたいなスタイルしてるし!!
ホントにズルいよ!!」
「なっ、何なのよ急に!?」
栞は訳がわからなかった。怒鳴られるようなことなんてしてないのに、何でそんなこと言われなきゃいけないのか理解出来なかった。
「それに……」
すると、ステージの彼女は栞に向かって優しい表情をした。
「……栞、ホントにステキな恋をしてるんだもの」
「……えっ?」
少女はステージから華麗に飛び降り、一歩一歩、ゆっくりと彼女に歩み寄る。
「私ね、栞の恋を応援するよ。
まだその彼が好きだからって私は栞を変な目で見たりしないし、もし他の誰かを好きになっても私は栞を攻めたりしない。」
彼女は栞の目の前で立ち止まる。
「でもね、これだけは約束して。」
そういって彼女は栞の肩に手を乗せる。そして首の後ろに手をやる。
「あのね……」
ありがとう、優美。
約束するよ。彼とも約束したから……。
・・・・・・・
「……次は『Blue Tears』によるミニライブです!」
体育館に大きな歓声が響き渡った。今日一番の歓声かもしれない。
その中心にいたのは栞だった。
彼女はマイクをもち、そしてゆっくりと目をつぶった。
……聞こえていますか??
あなた、この歌大好きだったでしょ?
だからね……
「……あなたのために、歌います!!」
……聞こえていますか??
私、まだあなたのことが好きみたい。
だからもう少し、あなたのことを好きでいさせて。
もしかしたら、この先、私はあなた以外の誰かを好きになるかもしれない。
でもね、約束するよ。
優美とした、あなたとした約束。
『一緒にいたこと、忘れないでね!!』
・・・・・・・
「……やっぱり、うらやましい」
ステージを見ながら優美は小さく呟いた。
優美にはわかる。
あれは、恋してる目だ。今栞は、ここにいる誰よりも輝いている。
それが、ホントに羨ましかった。
「それにしても……」
今彼女が歌っている歌、バンプの『天体観測』。
「ホント、ピッタリだなぁ……」
ステージの上で歌う栞の胸元には、キラキラと青の光が輝いていた。
文化祭の後
優美
「……私も恋がしたいなぁ」
蓮
「!?!?」
優美
「ちょっ!?何ジュースこぼしてんのよ!?スカート汚れたじゃない!」
蓮
「あ、いやっ!そのっ!優美が恋がしたいっていうから……
(もっ、もしかして、チャンス!?)」
優美
「あー、いってみただけよ。今は部活忙しいから諦める」
蓮
「……。
(期待させといて……やっぱ優美は酷すぎる(T_T))」
[次回は優美に恋のライバル登場!?]