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33 今なら言える



優美はゆっくりと蓮の方へと向かった。少し下をむいたままで。


…落ち着け、私。

いうんだ。絶対いうんだ。


私の、想いを。



「…体調よくなったか?」


蓮がやさしく声をかけてくれた。

…まだ、絵里に何もいわれていないのだろうか? それとも、もうすでにいわれたのだろうか。


…そんなことは関係ない。

私はいうんだ。ここで、今。


「れ、蓮!はっ、話があるんだ!」


思わず声が裏返った。それでも笑わず蓮は優美の次の言葉を待っている。



優美は一度ゆっくり大きく深呼吸をした。


大丈夫、大丈夫。

私は優美、優しくて美しくて、それでもって強い女。

きっと、うまくいく。



「あのね、ずっといろいろ考えてた!!いろんなことがあって、1人で悩んでた!!蓮のことで!」


どういえばいいか上手く整理できないでいた。

だから、思ったことすべてを話しだした。


「あのね、蓮が私の傍にいつもいて、それが当たり前で、そんな日常がずっと続くと思ってた…


だけど、最近あまり話せない時間が多くて、1人でイライラしてた。」


「…うん」



「…そしたら急に怖くなった。蓮が私の傍からいなくなるのが、すっごく恐かった。

最初は一人になるのが怖いんだと思ってた。でも違った。私がホントに怖いのは、蓮を失ってしまうこと、蓮が他の人のところにいることだったんだ。」



「…うん。」


「…やっと気付いたんだ。

自分のホントの気持ちに!!」


優美は顔を上げて蓮をみた。

恥ずかしくって顔が真っ赤だ。蓮はそんな彼女を優しく見てくれている。



もう一度大きく深呼吸をした。

…よし、いく!



「だから、私がいいたいのは…


…蓮!!私がいいたいことは…私は…私は蓮が…」



ポツッ



ポツッ



あまりに突然の出来事だった。



ザー



「……雨?」

優美は思わずへにゃりと座り込んだ。

緊張の糸が途切れてしまったようだ。



「…ぶっ、ははは!!」

その様子を見て、蓮も思わず笑いだした。

優美はさらに顔を赤くしてしまった。



雪なら凄くロマンチックだったのだが、まさか雨だとは…。

完全に天に見放されてる。



「なんだよ蓮!!笑うな!!」


「だって、タイミングよすぎだろ、ははははは!!」


ただこの雨のおかげで、いつもの二人の会話に戻ったみたいだ。なんだか久しぶりの会話に感じる。



しかし、優美としてはかなり不満だった。



「なんだよ……私だってな、ホントに色々悩んで必死に…」


そう座ったままぶつぶつ言う優美に、蓮がすっと手を差しだした。


「…わかってるよ、優美が頑張っていったこと。」


優美は何も言わず手をつかんだ。それから蓮が優美をたたせた。



「…さて、帰るか。風邪引いちまうよ」


蓮がカバンから折り畳み傘をだして開いた。さっきのことを忘れたかのように、呑気に帰ろうとしている。


…ちょ、待った!!

優美は慌てた。


「ちょっと待ってよ!!

まだ私の話は…」



「…24日、」


話をしようとする優美に、傘を差出しながら蓮が答えた。


「…24日、クリスマスイブの部活終わりに、一緒にどっか行こう。


そのとき、今度は俺から話があるから。」


顔をそらし、かなり照れ臭そうに話す蓮。その様子を見て、優美も思わずにこりと笑った。


「…ほら、傘入れよ、濡れるぞ」



「…うん!帰ろっ!!」



二人は小さな傘に入った。肩が少し濡れるけど、そんなのちっとも気にしなかった。



「…ねぇ、蓮。」



「…何?」



「…やっぱいいや、今度言う。


今度は、きっと言えるから。」




そんな二人を月明かりが優しく照らしていた。


次回は最終回!!


明日の0時に公開予定です!!゜+。(*′∇`)。+゜

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