30 私は…
「それじゃあはじめ!!」
優美の掛け声と共に各自組み手の練習が始まる。いつものように二人一組で技の練習をするのだが、優美と愛子のみいつもと違っていた。
「…じゃあやりましょう」
「はい…本気でお願いします。」
優美は軽く構えた。今日の愛子は何か違う。何やら本気のようだ。
しかし実力的にはまだまだ不十分。少しは手を抜いてやらないと危ない。 そう思い軽く準備していた。しかし
バシッ
「…!?」
優美は一瞬よろめいた。予想以上の蹴りが入った。
「…甘く見ないでください」
そういって愛子は次々と攻撃を仕掛けた。優美はそれを受けるので精一杯な状況になった。
「手を抜いてるんですか!?本気でやってください!!」
優美は何も答えられないでいた。
手を抜いてるわけではなかった。確かに最初は油断していたが、今は本当に守りで精一杯だったのだ。
その様子をみて愛子は奥歯を噛み締めた。
「…どうしたんですか!!」
叫ぶような彼女の声は、周りの部員の掛け声に消されていたが、優美にははっきりと聞こえていた。
「最近おかしいですよ、部活中いつもうわの空で、先輩らしくないですよ!
…いつもの強い先輩はどうしたんですか!?」
優美ははっとした。
…ホントだ。今の私は強くない。
心も体も…。
「…強い先輩とやらなくちゃ意味がないんです!!」
私は…弱い。
全然強くなってやしない…。
「先輩!!」
私は…
バシッ
一瞬だった。愛子の振り上げた足がガードの緩くなっていた優美の頭にきれいに入った。
優美はそこで意識が途絶えた。
高校になって、彼女の初めての負けだった。
運動公園にて。
新城「…どうしてそんなこと思ったんだよ。」
愛子「…私が先輩のことを諦めたとき、ずっとそばにいてくれたのが新城くんだったから。」
新城「…」
愛子「でも、新城くんが強い女の子が好きなのは知ってる。
…だから勝ったら」
新城「でも、桜井先輩はかなり強いし、それに」
愛子「いいの!!私はやるって決めたの!!
今度の練習で勝負に挑む、本気でやってみる。」
新城「…わかった、頑張れよ」
そうして二人の修学旅行が終わったのでした。
次回はもうすぐラスト!!
ついに7日たち、優美は一人悩み続ける。
果たして優美は立ち直ることができるのか?蓮は?絵里は?
それから愛子と新城のその後は?
新城「予告に力入りすぎ!!」