2 新しい…
最初はどうしても説明口調が多いけど我慢してください(>_<) 物語を激しく動かしてみました(ノ><)ノ
大野蓮。優美と同じ空手部に所属していて、彼女とは幼なじみの関係である。それ以上でもそれ以下でもない。
それなのに三咲はいつも優美が蓮のことを好きなのではないかとからかう。
もちろんそんなことはない。と本人は思っている。
それに、優美は高校の間はもう恋をしないことを決めていた。
彼女は一年生の頃、ある先輩に告白したとき、その先輩にフラれた上に散々馬鹿にされてしまったという経験をしている。(もちろんそいつはたたきのめした。)
そのため、恋愛に関しては人一倍億劫になっていた。
優美自身は、恋愛なんてどーでもいい、私には必要ない、と考えているようだ。
しかし、この高校二年生の生活が恋愛と大野蓮によって揺り動かされるものになるなど、優美は全く予想だにしなかった。
・・・・・・・
「おはよ蓮。まさかあんたとまた一緒とはねぇ」
優美は自分の席に座って、蓮に向かって話し掛けた。それにしても優美は蓮に対しての対応が他の人と違う。
もちろん長年優美の側にいた蓮にはそれがわかる。
「おはよう、またよろしく……って何でそんな嫌そうなんだよ!?」
「別に〜、嫌ってわけじゃないけど……腐れ縁もここまでしつこいと怖くなってくるなぁって。」
優美と蓮が同じクラスになったのは幼稚園から数えて六回目。確かに幼なじみとはいえあまりによく同じクラスになりすぎている。
「いいじゃんかよ!!俺らの仲だしさ……それとも俺と一緒だと照れくさいとか?」
「ばぁか、そんなことある訳無いでしょ。」
ほんの冗談でいったセリフを本気で否定する優美。これには蓮も流石にへこんだ。
蓮は昔から優美のことが好きだ。だが、幼なじみという壁と優美の鈍感さにことごとくやられていた。
だからこそ、今年は彼女に想いを伝える!と一人で強く決心していた。
蓮は小さく呟く。
「……でも、今年こそ優美に……」
「ん?なんかいったか??蓮」
「い、いやぁなんでもないんだ!気にするな!」
「???」
こんなありがちなわざとらしい会話でさえ、優美はなにも感じることはないのだ。
・・・・・・
新しいクラスの担任は空手部の顧問、神崎静香だった。空手部のことなんてなにも知らない、いわばただいればいい顧問である。
その神崎先生が新クラスでの初ホームルームのあとで優美を呼び出した。
「神崎先生、どうしたんですか??」
「今から始業式でしょ??桜井さんはクラスのとこじゃなくて、先生達の席の横に座ってね。
前あった大会の表彰あるから。」
「はい、わかりました」
優美は空手が強かった。学校内では今や敵無し。大会に出れば、一年生だったにも関わらず、上級生をはねのけ常に県で上位に食い込んでいた。
しかも今まで負けた試合は、前の試合で相手に怪我をされられたりして棄権するなどで、すべて不戦負。
つまり、今まで試合をして負けたことなどないのだ。
今回表彰される大会での棄権理由に至っては、試合会場で具合を悪くしていた知らないおばあさんを、背負って病院まで運んでいたら試合時間を過ぎていた、というものすごいものだったのだ。
それで県ベスト4であるからまたすごいのである。
本当に、強すぎる。
・・・・・・・
「……表彰状。桜井優美殿。……」
ステージで表彰される優美を蓮はじーっと見つめていた。というより見とれていた。(蓮は優美が好きなのだ、ホントに)
すると、周りから小声がちらほら聞こえた。
「なぁ、やっぱ桜井さんめっちゃかわいいよな!?」
「ホント、俺桜井さんになら殴られてもいい!!」
「おぉ、なんせ『女王様』だもんな!!」
蓮はそれを聞いて、ムカつくが、少し嬉しかったりもした。
以前、優美は全く女の子らしくなく、寧ろ男だった。そのため周囲が彼女につけたあだ名は『番長』だった。(もちろん本人は知らない、知ったときは……)蓮はそれがすごく嫌だった。
ところが、優美はある日から突然女の子らしくなってきたのだった。
優美も元はかわいい、だから少し女の子らしくなるだけで、彼女はたちまちモテるようになったのだ。(男女共に)
そして、一部の危ないマニアックな人間には、その可愛さと強さとまだ少し残る男らしさから『女王様』と称えられるようになったのだ。(もちろん本人は知らない)
(優美のことが大好きな)蓮にとっては、彼女が人気者になるのはうれしいが、やはりモテるとなると少し許しがたい気持ちになってしまう。
「あーあ、優美気付いてくれないかなぁ……」
「大丈夫!!いつか伝わるよ、お前一途だもんな!!」
そんな蓮をいつも励ましてくれるのは、部活友達の丸山匠 だった。
・・・・・・・
互いに考えてることが違う二人にものすごい衝撃を与える事件が、次の日にあった入学式後の部活中に起こった。
「おーい!!新入部員きたぞー!!」
入学式後にも関わらず、気合いを入れて胴着まできた新入部員が現れた。
毎年二年生の代表者が新一年を指導するのだが、蓮はその担当であったので、すぐに彼のところにむかった。
「こんにちは!俺、新入部員係の大野蓮、そっちの名前は??」
その一年は何故が名前を言わず、代わりにこういった。
「……あの、桜井優美先輩いますか??」
「えっ??」
蓮は突然の申し出に少し戸惑った。
え?なんで優美に用事があるんだ??
新入部員がそんなことをいってたのを知らず、優美は蓮の近くにやって来た。
「蓮〜!!組み手の相手しろー……お!?早くも新入部員じゃん!!
私、桜井優美、以後よろしく!!」
その優美のハキハキした挨拶を聞いた瞬間、少年は突然目の色を変え、背筋をピンと延ばし、真剣な眼差しで優美を見つめた。
突然のことに戸惑う二年生。
するとその新入部員はとんでもないことを言い出した。
「桜井先輩!!
僕と勝負してください!
そして勝ったら……
付き合って下さい!!!!」
「「「「……えっ!?」」」」
その声は、特別教室で練習している空手部全員を黙らせるには十分過ぎるボリュームだった。