27 ふざけないで!
「…で、話って?」
朝倉絵里は買ってきてジュースを片手にそう尋ねた。二人は皆の乗ったアトラクションが最後に急降下するのがよく見える場所にいた。水しぶきが激しく、たまに飛んでくるがそんなことは関係ない。優美はそれどころではなかった。
「私がいいたいのは…最近のあなたの行動のことよ」
優美は絵里の目をキッと睨み付けた。絵里もそれに答えるかのように軽く目を細める。
「なんか最近、えらく蓮に絡んでくるでしょ??」
「…確かに最近はそうかもしれないけど、それが何か悪い?」
絵里が答えた。そして手に持ったジュースのストローを口に持ってきて一口。
その行動に優美の機嫌はさらにそこなわれた。
「…大体、あんたはうちのクラスじゃないでしょ!
…確かに実行委員で話す用事はあるかも知れないけど、それにしても話し掛けすぎじゃない??」
「…」
絵里は優美がいうことをストローを加えたまま黙って聞いていた。相変わらず目を細め、彼女を睨み付けるように。
「修学旅行の行動は基本的にクラス単位なんでしょ?普通他のクラスの班と行動しないでしょ?
だいたい、蓮は私と…」
「…ふざけないで!!」
ぐしゃ!
突然絵里が大声をあげた。紙コップをひねりつぶしながら。
それから優美の顔に近付き、蛇のように睨み付ける。
「さっきから話を聞いてれば何なの!?私が誰といようと勝手じゃない!!」
優美は思わずあとずさった。後ろに行けばアトラクションの水しぶきをかぶってしまうが、そんなことを考えられないほど優美はびっくりしていた。
「…ちょ、何なの急に」
「あんたが悪いのよ!私を怒らせた!!」
ザバーン
二人の頭にもろに水が掛かった。それでも絵里は話をやめようとしない。
「…ずっと感じてたけど、あなたの態度がホントに気に食わないのよ!
蓮は私達と?ふざけないで!彼はあなたの所有物でもなんでもない!!恋人同士でもないじゃない!!それなのにあなたに口出しされる必要なんてないわ!!」
優美は急に怖くなった。彼女のいってることは正論だ。そうよ、蓮の隣にだれがいようが私には関係ないじゃない…
でも…
優美は混乱したのか、思わずしゃがみこんでしまう。
絵里はそんな優美から少し距離を置いた。それから深呼吸、自分を落ち着かせるように。
そしてゆっくりと口を開いた。
「…この際だから、あなたにははっきりいっておくわ。」
…えっ?
いやな予感がした。
「桜井さん、私は…」
…まって!それ以上言わないで…
「…私、大野蓮君のことが好きなの。」
ザバーン、
さっきよりもずっと多くの水しぶきが、二人の頭上に降り注いだ。