23 ベタな体育祭
…ごめん(´`)
9月某日、一年に一度の一大イベントが開催されようとしていた。
それは、そう!体育祭である。
クラスが一丸となって盛り上がる学校で最大級のイベント。どんなにやる気のなかった生徒も、当日になれば必ず全力を尽くしてくる。
そんな生徒がここにいた。
「おっしゃー!!やるからには全競技とってやる!!」
そう、桜井優美である。前日まで「空手の練習時間減るじゃん」とかブーブーいってたくせに、当日になるとこうである。今ならまわりの女子はおろか、男子よりもやる気あるかもしれない。
「…やれやれ」
それを呆れて見守る蓮である。
さて、今日桜井優美はどのような結果を残せるだろうか?
・・・・・・・
「…あ、赤組ぶっちぎりの一位でゴールです」
200メートル走、放送部もドン引きするほどの速さでゴールしたのはもちろん桜井優美である。あまりに差が開きすぎで同時スタートした生徒がとても淋しく見えてしまう。
「おーい蓮!!余裕だったぞー!!」
しかも自重しないで観客席の蓮に自慢する始末。蓮はあははと笑って、心のなかでまわりのみんなに謝るのだった。
・・・・・・
その後、100メートルも1位をとり、1500メートル走(男子も混じって)でも女子1位、総合2位という記録を叩きだした。しかも1500で負けたのは陸上部のエースで、残り数メートルの差だったというのが恐ろしい話である。
このまま出場競技で独走するかと思われたが、ある競技で思わぬ落とし穴にはまるのだった。
・・・・・・・
「次は、障害物競走です。」
「…よっしゃ!このまま全種目制覇してやる!」
そう意気込んでいると、優美の隣からクスクスと笑い声が聞こえた。
「ふふ、全くホントに男みたいね桜井さん」
優美はイラッとした。このムカつく声は…
「…あなたもでるのね、朝倉さん」
やはり朝倉絵里であった。絵里は優美の様子をみながらニヤニヤ笑った。
「桜井さんと同じ競技はこれだけみたいね、残念だけどこれは私が頂くから」
「…あっそう、絶対負けないから」
競技を前にしてすでに飛び散りまくりの火花。周りの女子はただ怯えるだけである。
「それでは位置に着いて、よーいドン!!」
ピストルの音とともに優美と絵里が飛び出した。周りの女子など寄せ付けず、平均台、網くぐりを余裕でこなしていく。それからタイヤを転がして所定の位置に収めて進んでいく、二人の差はほぼなし、全くの互角である。
そしてついに訪れたのは着替えゾーン、ここには紙があり、紙に書いてある衣装を着ないと先にすすめない。
二人は同時にそこにつき、そして神をめくった。
「「!?!?」」
二人は突然立ち止まった。そしてお互い呟く。
「……メ、メイド!?」
「……キ、キグルミ!?」
優美、絵里共に戸惑っていたが、二人の目が合った瞬間
「「……あぁもうしらん!!絶対負けない!!!」」
絶対に敗けられない戦いがそこにはあった。
優美はメイド服、絵里はクマの着ぐるみを急いで着だした。お互い構造が複雑でかなり時間がかかっている。
この間、観客席はかなりの盛り上がりを見せていた。無理もない。学年のアイドル二人が普段見られないような姿を見せているのだ。
「うわー女王のメイドだー!!」
「会長がくまさんにー!!」
男子の気持ち悪い声援が飛ぶなか、蓮は言葉を失い、ただただ見惚れていたのだった。
「「よし!もらった!」」
二人の着替えは同時に終わり、残る障害物もあと一つ。 ぐるぐるバットである。
二人は同時にバットをもち、それを額にあて、それから勢い良く回りだした。
「「……9、10!!」」
二人が同時にスタート!!しかし
「うわっ!?」
「えっ!?」
優美が慣れないメイド服のスカートを踏み、絵里は慣れない着ぐるみのせいでつまづく。そして二人はお互いの方向に倒れこんで
ゴチンッ!!
見事に頭をぶつけてしまった!
「…ちょっと桜井さん!!今のわざとでしょ!?」
「なにいってんのよ!!あんたこそわざとじゃないの!?」
こうなった二人を止めることはできない。
そうして二人は後ろの女子全員に抜かれ、仲良くびりになってしまったのだった。
「…大体わかってたけど、ひどいオチだな。」
そうはいいつつ、優美のメイド姿が見れて幸せを感じる蓮だった。
次回は修学旅行!!
物語は終盤へ……、
愛子「…喉枯れた」